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宇宙はロマンからリアルビジネスへ 〜堀江貴文が語る宇宙開発の今後〜

ホリエモンロケットという通称が有名な「インターステラテクノロジズ(IST)」。同社は2020年の12月に新本社・新工場を竣工した。

同社が目指すのは「世界で一番安くて便利なロケット」。なぜ今、堀江貴文氏や稲川貴文氏らはロケット開発に邁進するのか? これは少年の頃の夢やロマンを追っているわけでもなく、まして趣味や道楽で行なっているものでもない。そこにビジネスチャンスを見たから、行なっているのだ。

そのインターステラテクノロジズの新社屋竣工の際に、両氏と合わせて、宇宙飛行士の野口さんがトークセッションを行なった。そのときの模様を書き起こすことで、今後の宇宙ビジネスの重要性が見えてくる。

以下はトークセッションを、“ほぼ”書き起こしていったもの。一部、筆者が飛ばしている箇所もあるが、内容の詳細に影響はないと思われる。

2020年〜2021年は宇宙開発におけるエポック
「ロケットをバンバン打ち上げられるようになれば、宇宙利用の認識が変わっていく」

稲川貴大
「2020年を振り返る」ということで、今年1年間は非常に宇宙開発では、色んな出来事がありました。特に民間による宇宙開発は、かなりいろんな動きがあった1年になっています。そういうところを少し振り返っていきたいなと思います。

一番大きな話としては、やはりスペースXのクルードラゴンで日本人宇宙飛行士の野口さんが、宇宙空間へ行き、国際宇宙ステーションに入ったということ。これまでアメリカのスペースシャトルやロシアのソユーズなど、国の宇宙船によって宇宙へ宇宙飛行士の皆さんは行っていたわけです。けれどもこれからは民間のロケット、民間の宇宙船で行くようになったということで、非常に大きな時代の変化を感じるところであります。

そういった中で、堀江さんから見てこの2020年、今年のこの民間での宇宙開発なんかをどういうところを見えてるか?

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堀江貴文
山崎さん行かないすか? クルードラゴンのライセンスを取らないですか?

山崎直子
乗りたいですね。いやもうシャトルとはまた、ぜんぜん違いますよね

堀江貴文
山崎さんスペースシャトルでしたよね…行ったのは?

山崎直子
シャトルでですね

堀江貴文
ソユーズの訓練もしてたんですか?

山崎直子
ソユーズの資格も持っています

堀江貴文
じゃあそろそろクルードラゴンの資格も…。やっぱりそれぞれ宇宙船ごとにその訓練があって、そこのライセンスが取れるみたいな形になっているんですか?

山崎直子
そうです。一般的な共通訓練はやるんですけれども、あとはそれぞれの宇宙船ごとに訓練…カリキュラムと認定試験があります。

堀江貴文
たぶんクルードラゴンて、今は宇宙飛行士が乗ってますけど、これからは観光客とかも乗せるんですよね?

山崎直子
そうですね。クルードラゴンは7人に乗れるんですよね。で、だいたいNASAが、そのうちの4席を契約しているので、残りの3席は逆にいえば、スペースXだったり、まぁ次のボーイングはスターライナーですけれども、自由に使えるので。

で、実際にトムクルーズさんも来年は宇宙ステーションへ行って、映画を撮影するということを発表しています。

堀江貴文
ああそうかトムクルーズを行くんだ。すごいね。

稲川貴大
いつ行くか楽しみですけどね。でも早々に行きそうですね。

山崎直子
そうですね。来年の後半という言い方をしていますね…今のところ。

堀江貴文
だって7人つったら、スペースシャトルの乗組員の人数といっしょですもんね。

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山崎直子
そうなんですよ。今までは、スペースシャトルにしてもソユーズにしても、国の宇宙船なので、なかなか自由に使えなかったですけど、今度は所有は民間になるので、残りの座席が自由度が増すということは、大きいと思います。

堀江貴文
もうどっちかっていうと、クルードラゴンのキャバよりも、おそらくISSの方のキャパが足りないとかそういう話なんでしょうか?

山崎直子
はい、そういう話ですね、きっとね。

稲川貴大
そうですよね。帰還も含めて、帰ってくるところも含めて、ISSの滞在の人数って、そんなに多いわけじゃないんですよね。

山崎直子
そうですね。短期滞在の人も合わせて、マックスだいたい13人が、運用上の制限です。これは二酸化炭素を吸収して酸素に変えたり、水のリサイクルだったり、そうしたライフサイクルの、そうしたライフラインの維持のための制限があるんですけれども。

堀江貴文
なんか一気に来ましたね…なんか。前はISSに人を送り込むのが、すごく大変で、ソユーズを年間4本くらいしか打ち上げられないから、ISSに人を送るのが大変だっていうことを、逆にそれが逆転したというか…。

稲川貴大
そうですよね。国際宇宙ステーション(ISS)てずっと、民営化というか、その民間の人に使ってもらいたいとか、宇宙ホテル的に使いたいっていう計画は、何度か何回も上がって…なかなかやっぱりロケット…宇宙船の部分がボトルネックになって、なかなか進んでなかった、っていうところが、これを契機に一気に変わるかもしれない。

山崎直子
そうなんですよ。そこですごいのが、NASAもきちんとシステムをつくって、民間の方が滞在するときには1泊数百万円くらい(宿泊料は1人1泊385万円)ですよとか、そのISSの維持のためにとかいう形で、きちんとシステムを作って受け入れる体制ができたので、これから本当に活動すると思います。

堀江貴文
ISSは、2024年に運用を停止するっていう話がありますけど、あれどうなんでしょうね?

山崎直子
あれまさにはホットな話で……ロシアなどは延長をしたいと計画立ててますし、おそらく2028年ぐらいまで延長の検討をこれから始めていくんだと思います。

堀江貴文
ああそうなんですか。いやーだから、宇宙ホテルを作ろうみたいな会社もあるじゃないですか? 例えば例えばビゲロウみたいな。全然ホテルが出来てこないですよね。

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山崎直子
そうですね。ビゲロウはこのコロナ禍で大変で、従業員の方を解雇せざるを得なかったりですけれども、その分、元ISSの責任者をやっていた方が作った、アクシアム・スペースと言う、数年前に起業したベンチャー企業ですけれども、そこがNASAと契約をして、宇宙旅行の代理店になったり、独自にモジュールをつくって、逆にISSにくっつけて旅行客を受け入れますよという計画を、ちょうどそれも今年発表されました。

【マイナビ】国際宇宙ステーションに民間企業の商業モジュール構築へ - 2024年打ち上げ
https://news.mynavi.jp/article/20200131-964228/
米国航空宇宙局(NASA)は2020年1月28日、国際宇宙ステーション(ISS)に民間企業の商業モジュールを構築する計画に、米企業「アクシアム・スペース(Axiom Space)」を選んだと発表した。

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堀江貴文いやぁ盛り上がってきましたね。クルードラゴンは、年間10発とか20発とか、別に普通に打ち上げられますよね?需要があれば。

でもまあソユーズを使ってスペースアドベンチャーズが、あの宇宙旅行者を、今延べで7人くらいかな? 運びましたけど、結構予約が入っていたみたいですからね。あの値段でも……1人20億円ぐらいですかね? 僕の知り合いも予約してましたけど、腎臓結石が理由で乗れなかった…

まぁそれぐらいだったら買いたいという人たちは、たぶんクルードラゴンだともっと安くなってるよね、たぶんね。最終的には数億円くらいまで下がるとは思うので…そうすると結構な人数の人が予約すると思うんですけどね。

稲川貴大
今年この2020年というと、ヴァージンも宇宙飛行をやろうと言って、試験飛行をやろうとしていたり、民間での宇宙開発は…まあバージンギャラクティックは、なかなか進みが予定通りじゃないと思うんですけれども…

堀江貴文
でもあれですよね山崎さんは、ヴァージンと絡まれていましたよね、そっちの方の…

山崎直子
2年前からスペースポート・ジャパンという一般社団法人の代表をやっていて、ヴァージン・ギャラクティックはまだちょっと直接はないですけど、ヴァージン・オービットの方と提携をしたという。そのあたりも協力しています。

ヴァージン・ギャラクティックは、上場をしたっていうのが大きかったですよねやっぱり。有人宇宙企業の会社で上場したのは初めてでしたね。

堀江貴文
最近流行りのスパック(SPAC)ですね。

稲川貴大
これもなかなか知られてないと思うんですよね、ヴァージングループが上場して資金調達してる。

堀江貴文
日本でいうところの裏口上場ですけど。上場用の会社をつくって、そこと合併して上場するっていう方法で資金調達してましたけどね。

稲川貴大
こういうものすごい資金調達してるんですよねヴァージン。上場しているのもあってニューヨーク証券取引所に上場していて、何百億っていう金額を使っていますけど。その金額だいたいその上場のところから資金調達をして開発をしているということで…まぁ今年、有人飛行やるって言ってまぁ来年伸びそうだというところではあるんですけど。

堀江貴文
ランチャーワンはいけそうなんですか? あれなんか(2020年の)年末に打ち上げ試験やるって…

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山崎直子
あの年末に打ち上げ予定だったんですけども、従業員の方がコロナに感染してしまったようで

堀江貴文
えぇ!? それ関係あるのぉ?

山崎直子
延期しますということで、おそらく2021年になります。やっぱり色々影響ありますよね。

堀江貴文
ヴァージンは延期が多いですよね。それ以外にもアストラが、このあいだ打ち上げ実験してましたよね?2段目が失敗したのかな?

稲川貴大
我々の「ゼロ」という機体と、かなり近い…大きさがもう一回りくらい小さいくらいですけど…近い大きさの機体を作ってる、アストラっていう会社ですよね。そこはアメリカのアラスカから南側に打ち上げていまして…まぁ3回目の打ち上げですけど、まだうまくいってないところで…

堀江貴文
でもかなりいいところまで…

稲川貴大
いいとこまでいってるんで、来年中にはたぶん、軌道投入、4回目か5回目くらいまで行けばたぶん…軌道投入も…たぶん、っていうっていうようなところも今年大きなトピックスです。まあアストラだけじゃなくていろんな会社が、資金調達…この小型ロケットの会社、世界中で結構進捗があるっていうところですね。

米国のロケット・ベンチャー企業「アストラ(Astra)」は2020年12月15日、自社開発した超小型ロケット「ロケット3.2」の打ち上げ試験を実施した。ロケットは高度100kmを超え、宇宙空間に到達。トラブルにより軌道速度には達しなかったが、試験としては大きな成功を収めた。
ロケットの1機あたりの打ち上げ価格は250万ドル程度を目指す
https://news.mynavi.jp/article/20201221-1603602/#ID3

超小型ロケットの分野でトップ・ランナーである、米国ロケット・ラボ(Rocket Lab)の「エレクトロン(Electron)」ロケットは約750万ドル

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ロケットラボやアストラはアメリカの会社ですが、けっこうヨーロッパ…欧州の会社でも小型ロケットの会社っていうのが出てき始めてるって言うところも、今年の大きなトピックかなと思っていますけどね。

というところで、我々がまあ日本においては、やってるんだという立ち位置がまた改めてよくわかるかなというふうに思って…まあ次のトピックスへ行きますか。

ちょっと先行して話しましたけれども「増える人工衛星、足りないロケット」ということで、宇宙の使われ方が国から民間に移っていっている。
国から民間になって、国際宇宙ステーションも宇宙ホテルとか、旅行で増えるって言う話してますけれども、それ以外でも人工衛星とかロケットが足りないっていう話も、今年から来年にかけてには非常に大きな話かなぁと思っています。で宇宙の使われ方みたいな話を…

宇宙の使われ方、人工衛星の使われ方を、堀江さん山崎さんに聞いていきたいんですけれども、人工衛星の使われ方ですね…色んな所で話ししていると思いますけれども

堀江貴文
今使われているロケットあの人工衛星って、確実に収益が見込めるようなタイプの、例えばその、このあいだロケットラボから打ち上げた、あれ日本のシンスペクティブという会社が作った人工衛星は、地球観測衛星で…いろんなものを…あれたぶん先物取引とかそういったものに使ってるんですよね?

稲川貴大
そうですね、最近、日本経済新聞の一面ででてましたけれども、工事した後に地盤沈下しますと…あれが分かったのもレーダー衛星のSAR衛星なり光学衛星で、その地盤の部分がどう…時系列でずっと宇宙から撮ってて変化したので、地盤沈下がありますっていうところを、リサーチ会社じゃなくて新聞社が独自取材で、衛星技術も使って、SAR衛星……まあシンスペクティブとはまた違うものですけれども、使われているということで……これまで国とか自治体だけが使ってた物っていうのが、新聞社、日本経済新聞社という一つの民間企業が、独自ソースとして使ったという…宇宙の使われ方をされているんですよね。

【日経新聞】シンスペクティブ、人工衛星の打ち上げ成功
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ160J70W0A211C2000000

【日経新聞】日本経済新聞は衛星から電波で地表の動きを観測する「干渉SAR」と呼ばれる技術を使ってこの周辺の地表の動きを過去に遡って分析した。衛星解析企業であるイタリアのTREアルタミラと日本のスペースシフトからデータを取得し、地表がどのように変動したかを調べた。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/chofu-depression/

【スペースシフト】
様々な衛星データを活用して、AIを用いた解析結果を提供
https://spcsft.com/wp/

堀江貴文
まあその割には人工衛星を打ち上げるためのロケットは、足りないということですね。

山崎直子
これからロケットが増えていくんですけど、増えていくなかで圧倒的に多いのが小型ロケットと…そしてそれに対して、まだまだロケットが足りないという現状を、私も感じているんですけれども。

最近12月18日に発表された、内閣府からの委託でNTTデータが宇宙の施策に関する意識調査をされたんですね。それが面白かったんですけど。15歳以上の男女に調査を行なった結果、宇宙開発に関する認知度は上がっていて、賛成する方も多いんですけど、例えば人工衛星に関してはGPSの認知度が8割くらい。リモートセンシングや災害時のモニターであったり、バックアップ回線…通信に使われるような使われ方は、4割ぐらいしか認知度がなかったということで、もっともっと、このあたりの認知度が変わっていくと面白いのかなぁと。

あともう一つおもしろかったのが、宇宙開発を政府が主導すべきか? 民間か主導すべきですか? という設問に対して、全体的に6割が「政府」という形だったんですけれども、男性の方はおおむね「政府」と答える方が多かったらしいんです5割から7割くらい…。それに対して女性は「民間」というふうに応えた方が多かった。その結果を見ると、非常に面白いなぁと。

稲川貴大
そういう男女差みたいなところは、どういうところで生まれるものなんですかね?

山崎直子
そうですね、一般的に年齢が上がるにつれて「政府」主導だという、やはり今までの概念を踏襲している意見が多かったと思います。でまぁ、さっき最近の…そのニュースだとか…民間企業の活発になっている様子を見て、若い世代だったり…。

でまぁ女性というのが面白いなあと思ったんですが、生活にやっぱりつながっているという感覚があるのかなぁと…。

稲川貴大
なるほどそうそうですよねやっぱり、こう古くから宇宙開発している人は、これまで国がしっかりやってきたっていう歴史みたいなものを、とっても大事にしているので 、国がやるものだっていう認識があって、まぁだんだんそういう意識は、我々を含めてニュースペースと言われている人たちが出てきているので、だいぶ意識が変わりつつあるという、そういう意識の部分っていうところですね。

堀江貴文
まぁそんな感じでその人工衛星っていうのは、もっともっとその使われる場っていうのは、アプリケーションはもっと多いんですけど、とにかくロケットが足りないんで、人工衛星を打ち上げられませんよっていうことが、たぶんすごいボトルネックになっていて…

いろいろなアイディアは昔からあるんですけど、そういう昔からあるアイディアを実際に打ち上げてみて実証実験をやって、でそれを実用化していくっていう、PDSAサイクルを回せないような状況なんですよね。

一発打ち上げるのに、やっぱ何十億という話になっちゃうと、年間まぁ100回も機会はないわけですよね。打ち上げる機会が。スペースXが、あれだけやっていると言っても、まあまあ100回にも届いていないような状況なんで、その辺が変わってくると…たぶん、試したいなぁと思っている何かはいっぱいあるはずです、コンセプトとしても…。

でそれをまあこのあとまた、色々な発表で我々も話をしていきますけど、その超小型人工衛星を使ったいろいろなその多分アプリケーションっていっぱいあって、それがまあこれまではたぶん実現されてなくて、それを我々のような会社がロケットをバンバン打ち上げられるようになって、変えていくと、たぶん一般の人たちが思っている宇宙の使われ方というのとは違って、もっと身近になってくるのかなって。「あ!? これもそうなんだ!?」っていうような…

例えばですけど、グーグアースってサービスを開始したのが2002年くらいだと思うんですけど、あんときグーグアースって、みんな「すごいなこれ」って思ったけど、でもいまは当たり前じゃないですか。グーグルアースが使えない世界なんて、いまは想像出来ないと思うんですよね。

特にマスコミの人なんかは特にそうでしょうけど、テレビ番組とかでズームして地球の丸い地球からズームをして、どこかの街を映すみたいなことを、普通にやってますけど…あれはグーグルが衛星写真のベンチャー企業を買収したんで、あれが可能になったわけですよね。

だけどたぶん20年前にグーグルアースって、思いつく人っていなかったと思うんですよね。あれをGoogleが見せたから、みんなに見せたから「おぉこれはすごい」って思ったんだと思うんですよね。こんな使われ方ができるんだって思ったんだと思うんですよ。

じゃあ例えば、グーグルアースが、リアルタイムで動くグーグルアースが見られたらすごいですよね。たぶんみんな使うと思うんですよね。でもリアルタイムに動くグーグルアースって今はないですよね。じゃあできないかといったら、物理的にはできるんですよね。

なんでできないかっていえば、そういう衛星が飛んでないから、全球をリアルタイムでイメージングできる会社っていうのはない…そういう人工衛星網がないから、そういう風になってるだけだと思うんですよね。

だから技術的に無理なのじゃなくて、まだアプリケーションが出てないだけのものがあって、潜在的な需要がまだあると。ちょっと思いつくだけでもそれぐらいあるんです。僕らが思いついてないことは、いっぱいあると思います。

さっきのシンスペクティブっていう会社も、何をやりたいかというと、いろんなその
あのグローバルな、例えばタンカーの運行状況とか、そういうその資源に関わるようなデータを収集して先物取引市場で、有利な取引ができるように。まぁそこで差分を取ると。

これから小麦が高くなりそうだなとか、原油が安くなりそうだなとかそういうのって、そういう物流網を監視することで出来るんで。まあそれだったら何十億ってかけても、もう彼らは元が取れると思っているからやってるわけで、まあそういうようなことがこれから増えてくるのかなと思います。

稲川貴大
そうですね、ということで次のトピックへいきたいと思うんですけれども…

日本=大樹町は、世界でも数少ないロケット発射の好立地

稲川貴大
ロケットの会社が「なぜ北海道にあるのか」っていうところが、なかなか理解されないんですけど。なんで北海道でロケットを打ち上げているのかっていうのは、おそらく毎回言わなきゃいけないんだろうなというふうに思っているんですけど…

地理的な側面と北海道で宇宙って使われるんだ、みたいな、まぁ両方の側面があると思うんですけど、堀江さんから、なんで北海道なのかみたいなところ…大樹町のメリットみたいなところをちょっと改めて言って欲しいなと。

堀江貴文
たぶん世界中行ってみるとわかりますけど、こんなにいい場所ないですよねと。あのロケットまあ基本的に東と南に打ち上げるので、それが太平洋で…ある意味自由に打ち上げられるというか…人が住んでないんで…そういう場所って改めて考えると、そういう地理的な条件を満たしている国って実はけっこう少なくて。

まあ皆さんよくご存知の北朝鮮は、毎回、東と南に打ち上げるんで、だいたい日本を通るんですけど。だから毎回、日本に文句を言われながら彼らは仕方なく日本に飛ばしている。あれはちょっと報道の仕方の問題だと僕は思うけど、彼らは別に日本に飛ばしたくて飛ばしているわけじゃなくて、むしろ日本に飛ばしたくないと思って飛ばしている。あれが日本に落ちたら、万が一落ちたら、大変なことに…まあキム王朝がなくなってしまう可能性すらあるわけで、絶対落としたくないはずなんですけど、まあ落とさないような軌道で、もちろん彼ら打ち上げてますけれども、あの東に打ち上げるときも、できるだけ公海を通そうと、津軽海峡の上とかを飛ばしたりとか、実は結構してるんですけど…

中国ですら、中国もあのずーっと宇宙基地が内陸部にあったんですよね。それが今は海南島っていう南の方に宇宙基地をやっと最近作ったわけですけれども、それ以外の国でもまあ、工業力…ロケットを作るのには工業力が必要なんで、我々の工場にもあの工作機械が何台も入ってますけど、あれ輸出できないですからね基本的には。北朝鮮なんかに輸出したら捕まっちゃうくらいのレベルの、精密機械を作れる機械がありますけれども、ああいったものを持っている国で、東と南にバンバン打ち上げられる国っていうのは実はすごく少ないんです。アメリカと日本と……ぐらいな感じで。

ほんとあのロシアとかもロケットを打ち上げてますけど、色々ハンデを背負いながらやってるし…ヨーロッパは打ち上げられないですよね。ヨーロッパ域内からはほぼ…北にノルウェーとかスウェーデンとか、あの辺に北に向かって打ち上げられる地球観測衛星とか、一部の地球観測衛星を打ち上げられるんですけども、東打ちをしようと思うと、フランスの植民地の…南米のフランスの植民地から打ち上げているっていうすごいハンデがあって…

そのハンデがなくて、しかも工業力があって、っていうところは日本でしかないし、この大樹町というのは、なんと東も南も両方とも持ち上げられると。こんな場所ってないんですよ。

あとは…あのロケットラボのね、ニュージーランドのノースアイランドにある打ち上げ基地ぐらいのもんですよ。

あのスペース Xですら、東に打つときはフロリダから打ってますけど、南に打つときはカリフォルニア州から打ってますから。そういう風な意味で言うと、すごくロケットの輸送にもすごく適している。サプライチェーンが国内で完全に完結している場所っていうのは…こんな場所はなかなかないですよね。

だからね…山崎さんもおられたJAXAも、一応打ち上げ基地として検討してたんですもんね?

山崎直子

そうなんですよね。初期の頃ね。本当に色んな軌道で人工衛星を打てるということは、それだけたくさんの種類の人工衛星を打てるので、それは大きな魅力だと私も思います。

稲川貴大
山崎さんは、超小型人工衛星のほうにも深く関与されていらっしゃって、中須賀研究室の中にもいましたけども、そういう小型衛星を利用するっていう面で、北海道でどういうふうに使われていくのか? 小型衛星が使われる意味で「北海道」っていう、まあ一とても広くてまぁ農業だったり、一次産業が非常に豊かなところで、どういうふうに使われるかのかみたいなところは、知見があれば教えてもらいたいんですけれども。

山崎直子

小型人工衛星の使われ方は様々だと思います。農水産業…さまざまな分野で応用が効くと思います。北海道だと「お米」のタンパク質を、人工衛星に搭載した近赤外線センサーでモニターすると、ちょうどよい成分の時の…収穫時が見極められたり、肥料の投入の量や時期が調整できたり、すごく収穫量を上げることと、質を上げられることにつながるという実験は、続けられていますし、あときっと他にもあると思うんですよね、探し出すと。

こうした人工衛星も、国が運営するだけの時代ではなくなってきている。例えば福井県は先日、県民衛星の取り組みをしているように、それぞれ自治体ごとに人工衛星を持っていく時代も考えられるんですね。北海道というのは非常に適している所だと思います。

稲川貴大
福井県が県民衛星を作っているんだから、北海道道民衛星を作ってもおかしくないですよね。

福井県では、宇宙産業を新たな政策の柱として、超小型人工衛星の打上げを目指しています。県内企業が中心となり、自治体と共同で人工衛星を打ち上げる全国初の取り組みです。
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/chisangi/fukusat/kenmineisei.html

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構造変化から見る宇宙産業の今後
「インターネットを取り巻く環境にすごく似ている」

稲川貴大
2021年の宇宙産業はどうなっていくか? ということで、これもけっこう話は、出てきはいるんですが、来年に限らず今後の宇宙産業はどうなっていくのかみたいなところを話ししていきたいと思います。

堀江貴文
大きな流れとしては、産業構造の変化っていうのが凄くこれから来るのかなと。これは多分日本とかにとってみても、すごく大事な問題で、やはり自動車産業っていうのが戦後日本を牽引してきた大きな産業だったわけですけれども、世界的な波としてEV化があるわけです。

僕は傍目から自動車産業を見ていると、すごくそのパソコンが出てきたときに似てると思ってるんですよね。パソコン以前の世界は、僕はまだ知っている世代なんで言うと、オフコンといわれる大きな機械を置いて、そこに端末みたいなコンピューターがあって、そことつながってみたいなことをやっていたわけですけど。

まあそのオフコンのメーカーで世界最大のメーカーってIBMって会社だったわけですけど、じゃあ今IBMが何をやってるのかって言ったら、コンピュータ売ってる会社じゃなくて、彼らはソリューションビジネスをしてるわけですよね。そういうその大きな会社向けとかに、システムインテグレーションするような会社に、全く変貌してしまいました。

あのIBMが、じゃあパソコンを売ろうとしなかったのかといえば、やっているわけです。ThinkPadっていうノートパソコンとか、ベストセラーになったパソコンもありますけど…。彼らがすごいなぁと思ったのは「パソコンはこれはビジネスにならない」と思った瞬間に、レノボっていう会社にThinkPadブランドを売りましたよね、中国の会社に20年くらい前ですけど。

で、今のパソコンの規格もIBM PCって言われる規格がベースになっていて、それがそれのまIBM PC互換機っていうコピーパソコンみたいなものが市場を席巻して、IBM自体は、IBM PCを作るのをやめちゃったわけですけど…

まさにそういう産業構造の変化というのが自動車業界に来てると…その自動車業界のなかで一番大きな変化がEV化なわけですよね。EV化の先には当然自動運転があるわけで、いま猛烈な勢いでそのAIが進化して…AIなんて、Deep Learningっていう技術が数年前、まだ10年経ってないぐらいじゃないかな、ニューラルネットワークで、その画像処理とか映像処理っていうのが、凄く精度が上がったというようなことがあって、それをしかもエッジコンピューティングに持ち込んで、クラウドではなくエッジ(ユーザーの手元にある端末)で、高性能なNvidiaとか、そういったところが作っているGPUとか、最近はTPUっていうAI専用のチップセットまで出てきたりとかしてますけれども、そういったGPUやTPU、そういったものを使ってエッジコンピューティングで、クラウドへつながらなくても、すごい高精度な、映像処理ができるようになって、自動運転というのがかなり身近というか、もう、見える未来として、あのレベル4とかレベル5の自動運転というのが見えてきている時代になったところでどうなるかというと…自動車のマーケットが激変します。

まあEVの自動車というのはユニットとして見ると、モーターとバッテリーとそれを制御するコンピューター、ソフトウェア。大きく分けると、この3つのコンポーネントになると思うんですけど、この3つのコンポーネントはおそらく、コンピューター、パソコンの世界と同じくインテルとかマイクロソフトが独占とか寡占に近いような状態になります。おそらくそうなると思います。

例えば、バッテリーに関しては、テスラみたいな会社が覇権を握る。テスラは自動車のメーカーのように見えますけど、僕はテスラはパッテリーの会社だと思っているので、バッテリーになります。

あの会社は、だから「テスラ」って名前がついてる。「ニコラ・テスラさん」って言う。エジソンに負けた天才的な電気技術者がいるわけですけれども、その名前を冠している。

そこで寡占したモーターとかバッテリー、コンピューターのメーカー Nvidia みたいなコンピューターのメーカーとか、そういったところが市場を寡占することになると、日本の自動車のサプライチェーンが崩壊するわけですよね。

そういったところで、エンジンを作ってたメーカーさんっていうのの生き残りの道の一つっていうのは…電気でロケットって飛べないんで、どうしても化学推進、本当は原子力推進でもいいのかもしれないですけど、まあ政治的な理由でなかなか難しいということで…少なくとも地上から宇宙に行くっていうところは、化学推進以外の選択肢ってないので。まぁ化学推進っていうのは、つまり燃焼なので、そこの部分というのが、まあさすがに、その自動車産業を置き替えるくらいの産業規模にはならないかもしれないですけど、さっきのあの北海道の地の利の話を考えると、私は日本のこれからの産業を考える上で、宇宙産業というのは絶対考えなければいけない選択肢のうちの、大きな一つかなと。

私もそれを政府の方々に訴えてはいますけど…。どうですか山崎さん。なんか政府の方々はそこまでの問題意識を持ってないっすよね?

山崎直子
あぁでも堀江さんが、こうして言い続けてくださっているおかげで、たぶん問題意識はね持たれていると思います。ただそこからねどうしようっていうのが、おそらく2021年だと思うんですよね。具体的にどうしていきましょう、っていう。

堀江貴文
僕もなんか、菅首相とかに訴えたいなーと思ってたら、なんかね、8人でステーキ会食しちゃって、大人数の会食はNGになっちゃって。

稲川貴大
まあ日本のその産業のためにやっているんだ、っていう、そういう意欲でやってるんだっていうところも、政府の方にはまだ通じてないっていうところで。これはあの知ってもらわなきゃいけないところですよね。

山崎直子
あの宇宙に関わってる皆さんはそういう問題意識を持っているんですが、日本全体として、その意識を共有しているかといえば、日本はまだまだだと思います。

堀江貴文
宇宙っていうと、なんか夢とか、夢の世界だとか、趣味の世界だとか、道楽でしょうとかそんな感じすぐ見られちゃうんですけど、私的に言うと私は前そのIT産業の世界でやってきたわけですけど、ちょうどその1996年に前の会社をつくったんですけど、要は24年前ですよね。24年前のそのインターネットを取り巻く環境にすごく似ているなと。

当時はインターネットやってますって言ったら、「ふーん」って感じで、メールアドレスとか名刺に書いてても「へぇ〜」みたいな…「@(アットマーク)」がわからなかったような時代から、そういう産業にいて、そのあとネットバブルが来て、まぁネットバブルで株で儲かると思って興味を持った人が大半だったと思うんですけど。

まあその結果として、ネットバブル後にインターネットが普及して、今インターネットを使ってない人はいないと思うんですけど、あのまさにそういう風なぐらいの産業構造の変化があるし、ビジネスチャンスでもあるっていうことが、まだ認識されてないなというか、広く共有されてないなっていうふうに思うのがちょっと残念だし…

我々としては、インターネット以上に、国としての関与があった方がいい分野なんですよね。それでもやっぱインターネットの場合も光ファイバーとか、モバイル通信網みたいなものにはものすごく投資をした結果、インターネットが普及した部分もあるから、それはやっぱりある程度、そのインフラの整備だったりとか、お金をある程度投下するとか、僕すごくコスパが良いと思ってて、宇宙産業への投資っていうのは。

あの、何百億(の投資)とかっていう世界で、何兆円の産業っていうのが育成できるって言うことは、なかなかないので。しかも数少ない日本がアドバンテージが取れるマーケットであると。勝てる産業。

まぁ結局、ある産業で勝つというのは、そこに対して、そのリソースを集中投下できるかにかかっているわけです。日本の自動車産業がこれだけその世界を席巻したのは何故かって、やっぱり航空機の製造が禁止されたことがすごく大きいと思います。これは戦後、これは日本にとっては不幸な出来事だったけれども、ある意味ラッキーだったと。

今の日本の自動車産業を支えて、それを作り上げてきた技術者達っていうのは、もともと航空機の技術者だった人たちがすごく多いし、会社も戦前は飛行機をいっぱい作ってた会社が自動車メーカーに転身したケースがすごく多い。

ということを考えると、それは航空機の製造が禁止されて航空機産業というのが崩壊したおかげで、自動車産業が、世界を席巻できた。

今の日本で、じゃあITで世界で戦えるかっていったら、戦えないわけですよ。圧倒的に人材も資金もアメリカに負けている、アメリカ中国に明らかに負けてるし。これ勝とうと思っても本当に、竹槍でバズーカ砲に対抗しますみたいな世界です。

たぶん僕が思っている日本が勝てる産業ってたぶん、ロケットか、あるいはヒューマノイドロボットくらいだと思いますね。ロボットはどっちかっていうと宗教上の理由らしいんですけど、日本はやっぱ鉄腕アトムとかそういうロボットがすごく身近で、親しみがある存在なんだけど、例えばキリスト教圏の人からするとなんか神への冒涜だ、みたいな話になっちゃうから、やっぱロボットの、特にヒューマノイド型のロボットの、論文というのは日本人の論文が半分くらいを占めているらしいんですけど、まあ恐らくそれぐらいしか、確実に勝てる分野っていうのはないんで、そこに対して集中投資をするというのは、良いことだと思いますけど……どうですか山崎さん。

その辺の政府の方々、もっとこうもっとこういう風なところに言うと、うまく宇宙産業がに対する抗日本政府の投資が増えそうだなみたいなのはありますか?

山崎直子
日本もそうですけど世界的にいろんなアジアの国々、アフリカの国々は人工衛星を保有している国は増えていて、しかもそういった国々の人工衛星の伸び率というのが、年7%10%くらいまだまだ伸び続けている中で、こうした地理的に有利な日本が、輸送の、特にアジアのハブになるって、やっぱり大切なことだと思うんですよね。

そこを持っておくと、輸送と人工衛星で、パッケージでできるというのがすごく大切で。まさに宇宙もこれからソリューションですよね。ただ打ち上げるだけではなくて、打ち上げる人工衛星とそれぞれをつながっていくかという。これからそのソリューションをもっと提供できるようになると、日本の強みを発揮できると思いますし、そのあたりに期待したいと思いますけどね。

スペースポートの世界情勢


稲川貴大
結びつけるという面でいうと、その地面のところ、スペースポートの話があるかなと思ってます。

次のトピックにもなるんですけれども。スペースポートですね。まあ北海道でも北海道=スペースポートということで、まぁ我々打ち上げているロケットの発射場をどんどん整備していこうというところですけれども、ここは山崎さんにぜひお話ししていただきたいんですけども、現在世界中でスペースポートがどういう動きがあるのか、どういうふうに考えているかを、ちょっと教えてもらえますか。

山崎直子
そもそもあのスペースポートっていうのは、アメリカのFAAの定義によると、ローンチサイト、実際の打ち上げる場所と、リエントリーサイト、戻ってくる場所とかつ水平打ち上げ、垂直打ち上げ、すべてを含んでスペースポートと呼んでいるんですね。

日本ではまだきちんとした定義がないんですけれども、そうしたなかで私たちスペースポートジャパンも、あの大樹町、北海道さんとも一緒にやっていますし、これから日本に複数こうした民間のスペースポートが、作ることが大切だと思っています

世界的にも5年前からスペースポートサミットというのが開かれていて、だいたいスペースボード関係だと20カ所ぐらいですね。アメリカが多くて14か所ですけれども、その他海外、日本もですけど、イギリス、イタリア、ポルトガル、ブラジルやエクアドルなどが今の所は来ています。

それ以外にも、もちろん uae のドバイ、スウェーデンだとかオーストラリアとか、スペースポートポートをたくさんのところで構想がたくさんあがっているということで、これは人工衛星も色々な用途が分化しているのと同時に、スペースポートもそれぞれ役割があって、とにかく早く打ち上げたい場所であったり、安く打ち上げたい場所であったり、いろいろな周辺にメンテナンスをするためのサービスがある場所だったり、地域によって特色が出てきている。

日本もまあ複数の場所でスペースポートっていう話ができていて、まぁその地域ごとの特色があって、大樹町さんもすばらしい特色があるので、そういった特色を活かしたスペースポートができていくと良いとおもいます。

堀江貴文
その中でやっぱりその北海道大樹町っていうのは、すごく場所的に良いと。たぶん世界のスペースポートの中でも、場所的にすごくいい場所であると。今日もなんか北海道でね、こういうのをやるって言った場合に、「雪大丈夫ですか?」とかって聞かれるんですけど、雪が降らないですね、この辺は。晴天率、あの日本でも有数の晴天率です。なぜなら大雪山系で全部行き止まっちゃうからですね。だから札幌とかニセコとか、あの旭川とか、あっち方面はもう本当に日本海側は雪が降るわけですけど、全部山で、あの雪全部とまっちゃうので。

本当に乾燥してますからね。あのそこからもう本当に、あの湿った空気は全部そこでストップされちゃって、大体晴れてますね…冬は特に。本当にあの年間を通してすごく降水量が少ない、すごくいい場所ですね。しかも東南海上が開いているので、ロケットの打ち上げ、にはもちろんすごく最適であると。

更に言うと、まああの物流の面でも、あの高速道路等がちゃんと整備されていて、土地もすごくたくさんあって。なのでその宇宙産業がここにサプライチェーンを作ろうと思うとできるんですよね。だからあのここからロケットがバンバン打ち上がるようになると、それを搭載するためのペイロード、人工衛星等を作る会社等も、この辺に移住をしてくるんじゃないかなと思いますね。意外と東京からも近いですし。

稲川貴大
そうですよね。あの飛行機で1時間半、そこからクルマで30分でこれちゃいますからね。

Q&A 衛星を運ぶロケットの需要は「いくらでもある」

よろしくお願います。あの堀江さんさっきあのえっとインターネット産業の96年の頃と似ているとおっしゃっていましたけれども、その宇宙を、超小型衛星とかを利用する側の企業とかにとっては、どれぐらいの価格になったらこうなんというかもっとこう自分たちで気軽に使っていけるようになるんでしょうか。

堀江貴文
その打ち上げの値段ということですかね?

たぶんね今打ち上げの値段というよりは、どちらかというと打ち上げ機会が欲しいと思っているところがすごい多いと思います。逆に言うと、その今の相場の価格でも打ち上げたいと思っている会社さんは、山のようにいて、値段がボトルネックになっているというよりは、多分打ち上げ機会ですね、だからもうとにかく打ち上げたいんだけど、何時になるのっていう。

稲川貴大
人工衛星はできましたと、で、たくさん打ち上げたいという準備はできているけれども、ロケットの打ち上げを待っている状態なので、サービスインできないという会社がたくさん出てきているというところですよね。

堀江貴文
ちょっとこの後のね、あのセッションでも新しい衛星の会社の話なんかをするんですけど、例えば jaxa とかそういうNASAとかでもそうなんですけど、人工衛星の開発チームがいて、面白いコンセプトを持たれている先生とか沢山いらっしゃるんですけど、それを実現できないんですよね。打ち上げ機会が限られすぎていて。

例えば jaxa だったらね、あんまり他の国のロケットで衛星を打ち上げないじゃない? H2とかイプシロンで打ち上げろ、みたいな話になるわけじゃないですか。だけどイプシロンって、年に1本くらいしか打ち上がんないんですよねっていう。

稲川貴大
今2年1回ぐらいですからね、イプシロン。

堀江貴文
ってなっちゃうと、何か良いコンセプトあるんだけど、まぁコンペで負けちゃって、ちょっともう先生退官しちゃいました、みたいなのが「いっぱい」あるんですよ、たぶん。

それは、うちが打ち上げている、サボオビタルのMOMOっていう、もうすでにあの1回成功している、あのロケットありますけど、ああいうサブオビタルのところでもそうなんですよ。

例えばばよく僕がお話をするのはオーロラの観測なんていう話をするんですけど、オーロラって、高度6〜70キロぐらいの範囲(電離層)で発生しているんですけど、
高度6~70キロを直接観測できる手段ってロケットしかないんですよ。高層観測気球でも35kg しか上昇できないんで、それよりも上の空間というのはロケットでしか到達できない空間なんですけど、サブオビタルのロケットってやっぱり傍流というか、人工衛星打ち上げの方が優先されてくるんで、人工衛星打ち上げ用ロケットでは、人工衛星を打ち上げるってことが主目的なので、オーロラが観測なんかもちろんできないわけで。ってなると、サブオビタルのロケットが必要ですよね。だけど、ないですよね。あのJAXAでも年にせいぜい2本ぐらいしかサブオビタルのロケットを打ち上げてないんですよ。

そのロケットを開発する会社も(サブオビタルは)ある意味中途半端だから、サブオビタルは、どこかの過程で開発…試験機で開発をするけど、恒常的に打ち上げることはしない、短い話になっちゃったりする。だからうちもサブオビタルの需要ってあるんですよ。世界中から問い合わせが来るんだけど、頼むからずっと打ち上げてくれと。辞めないでくれ。サブオビタル辞めないでくれっていうぐらいの(需要が)やっぱあるんですよね。

だから、やっぱ打ち上げ手段というものが、もうちょっとそのカジュアルに、大量生産できるような体勢になってないとまずいよねっていう話ですね。


日経BP高市さん
日経BPの高市と申します。今の堀江さんのお話の中で、そのうちあげる機会が足りないというのは、技術的に開発が遅れているからという意味ですか。どういう意味でおっしゃっているか、教えてください。

堀江貴文
そもそも技術的な問題はやっぱり大きいですよね。これまでロケットの開発された機種って、たぶん三四十機種くらいしかないから、多分これまでの人類の歴史の中で、ですよ。3〜40機種ぐらいしか多分なくて、しかもその3〜40機種は、おそらく数種類のロケットエンジンの開発の系譜の中から出てきたもの。

例えばソユーズで言ったらV2ロケットの派生型であることは明らかで、いまだにですよ1940年代に開発されたロケットエンジンの、その技術をずっと流用して、改良改良を重ねて、今も現役で、その世界初のロケットエンジンの技術が継承されて使われているっていうような状況なんですよ。

それぐらい難しいものであると。それぐらい難しいものを本気で産業化しようと思ってやってる人たちが、これまでいなくて。それに世界で初めて成功したのが、スペースXだった。でもスペースXも、あれは月着陸船のエンジンが元になっている技術としてあったので、あんなに早期に開発することができたし、ロケットラボみたいな会社は、ターボポンプを使わずに、モーターを使うことによって、まあそれも多分リチウムイオンバッテリーとか、そういったものの技術革新があったから彼らは多分、短期間でできたんだと思いますけれども、そうやってやっとその工業製品としてロケットを作るっていう人たちが、やっと最近出てきたっていうところが、僕は多分そこ一番大きいと思うんですよ。

結局、国が主導していた時代というのは、国家予算を使って作らなきゃいけないわけですから、国家予算を使うってことは、あの蓮舫さんが言ってましたけど、世界一じゃないとダメなんですよ。1番じゃなきゃいけないんですか? そうなんです、一番じゃないか国家予算はつかないんですって、僕は思いましたよ

なんかスパコンの開発とかをすごい攻撃したりとか、彼女はしてましたけど。あのある意味、国家予算というのは世界一のものにしか使えない。特に日本みたいな科学技術立国なんて言ってる国は、世界一のものにしか使えないわけです。

だけど民間企業は別に世界一じゃなくていいんで。我々なんか、世界最低性能のロケットなんていう風に、まあある意味ねあの自虐ネタみたいになってますけど、それでいいんです。輸送手段としては、安けりゃいいわけです。

なのでそういうことを考えてやってる人たちが、これまでいなくてやっとスペース x が出た。ロケットラボが出た。みたいな状態に、今あるということです。


日経BP高市さん
その打ち上げ頻度を上げるために、何が必要だと今お考えになってますか?

堀江貴文
ああもうその、ある意味そういったベンチャースピリッツに加えて、工業製品であるっていう割り切りですよね。まあもちろん僕たちは最初から工業製品だと思ってますけど。

日経BP高市さん
そこなんです。工業製品にするためになにが必要かってところ?

堀江貴文
マインドですよ。

日経BP高市さん
いや技術的には?

堀江貴文
技術的には別に何もないです。技術的には。そのまあもちろんそのスペース Xみたいに、先人の研究をそのまま引き継げたらそれは最高ですけども。じゃあめちゃくちゃ技術的に難しいかというと、そんなことはなくて、我々がやっていることっていうのはコストダウンじゃないですか? で、コストダウンのところであの本当に技術的な話をすると、高ければ簡単です。高価な部品を使っていいんであれば、簡単です。MOMOの5号機が失敗した原因は、ノズルの破損なんですけど、あれは jaxa とかが宇宙研でやってたミューロケットとか、ああいうのに使われているのと同じ、グラファイトのノズルを使ってたんですけど、ミュー6号機かな? が失敗した原因が、実はノズルの破損なんですよ。同じなんです。うちと同じ失敗を多分二十数年前、30年前ぐらいかな、やってるんです jaxa も。でJAXAは、その結果グラファイトを使うのをやめたんですね。グラファイトよりも強いし、コンポジットっていうその炭素繊維で作ったグラファイトみたいな、すごい高いものがあるんですけど、これを使うと、うちのロケットの値段倍になるんですね。

みたいなことを今やっているので、ちょっとウチ的にはそこで、そこの部分で時間がかかっているんですけれども。コストを安くするっていうことを考えなければ、技術的にはすごく簡単ですね。

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