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ロケットの次…ではなく“前”に「ホリエモン衛星」で早期収益化を目指す

12月に竣工お披露目を行なった、堀江貴文さん率いるインターステラテクノロジズ。前回は堀江貴文さんのほか、社長の稲川貴大さん、元宇宙飛行士の山崎直子さんのトークセッションを通じて「宇宙産業は、斜陽していく自動車産業に代わる、日本が新たに目指すべきフロンティア」といった話がなされていた。

そのお披露目会の最後に発表されたのが、インターステラテクノロジズの100%子会社として設立する「Our stars株式会社」。

同社は超小型の人工衛星の研究開発、製造、運用はもちろん、人工衛星を活用したソリューションの提案、さらに衛星から得られるデータの提供サービスを開始する。

発表会では、その具体的な狙いを、堀江貴文さんが説明している。


堀江貴文
今ですね世界の動向としましては、先ほどのトークセッションでもありましたけれども、ロケットの打ち上げ回数というのが著しく制限されていて、人工衛星を打ち上げたい会社がいっぱいある一方で、こういった会社が思ったように衛星を打ち上げられない状況です。

その中で一社気を吐いているのが、スペースXのスターリンクですね。グローバルな地球低軌道衛星、300km台、500km台、1000km台の3つの軌道に、1万機以上の人工衛星…ブロードバンド通信衛星を打ち上げて、全球をカバーするという計画で、すでに900基以上を打ち上げています。

既に北米においてはサービスのベータ版を開始して、月額99ドルでブロードバンド接続が、どこからでも出来ます。彼らが何で実現できるかって言うと、やはり「ファルコン9」というすばらしいロケットを、高頻度に打ち上げられて、1回あたり40〜50機ぐらいの人工衛星を、一気に打ち上げられるからです。

同じようなプロジェクトが、まだ打ち上がっていませんが、ジェフ・ベゾスが率いるブルー・オリジンプロジェクトカイパー、あとロケットラボのフォトンっていうようなことを計画しています。

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ということで我々もまだその軌道投入機が打ち上がってませんけれども、もうすぐ打ち上がるということで、ロケットと人工衛星の垂直統合型のサービスを展開しようと考えております。

今既に使われている宇宙のアプリケーションっていうのは、3つが挙げられるのかなと思っています。スターリンクがやってるような、ブロードバンド通信。これがあればインマルサットとかイリジウムみたいな、ちょっと通信のスピードからいうと2ndジェネレーションぐらい…2Gぐらい、3Gまでは至らないぐらいのスピードでしか通信ができなかったものが、一気に4Gクラスのブロードバンド通信ができるようになりつつあります。

さらにリモートセンシングに関しても、気象衛星だったりとか、情報収集衛星……まぁ偵察衛星ですね、これらは国家機関によって打ち上げられて、運用されておりました。けれども先ほどの Google Earth の話ではないですが、先日、ロケットラボのロケットで打ち上げられたシンスペクティブの「StriX-α」みたいなものとか、こういったものが実用化されて、株式の先物取引や、そういったものにも応用されてるという現実があります。この辺も今すごくホットな分野ですね。

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さらに今、国際宇宙ステーションでやられている、物理だったり生物系の実験……生命科学系の実験、そういったものが無重力で…微小重力環境下で行えるようなプラットフォームとしては、ISSしかなかったと。こう言ったものがですね、確実な需要としてございます。

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新会社におきましては、この3つの、先ほどちょっとお話をした、3つに関わる部分なんですけれども、そちらの方を柱にしてやって行こうと思ってます。

<Our Starsの3つの柱>
1 超超小型衛星フォーメーションフライトによる衛星通信サービス
2 超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービス
3 宇宙実験用衛星・回収カプセル

1つはですね、超超小型衛星フォーメーションフライトによる、衛星通信サービス。これは世界初で、まだ実証実験すら行われてない。非常にチャレンジングな衛星通信サービスです。

2つめが、ちょうど超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービス。これはまた後ほど詳しく説明させて頂きますけれども、つい2〜3年前に、JAXAがSLATSという電気推進によって超低軌道、電気推進…つまりイオンエンジンなんですけど、イオンエンジンを使った超低軌道衛星というものの実証実験に成功しましたけれども、まあそういった技術を使った超低高度リモセン衛星というものを考えてます。

三つめが、まあ先ほど山崎さんとの話でもありましたけれども、国際宇宙ステーションの運用が一応公式には2024年で終わることになってまして、28年まで延長するかもしれないんですけれども、こういったものがなくなることを想定して、実際に宇宙にこういった、その実験用の無人で実験をできるプラットフォームを打ち上げて、それを地上に再回収すると。そういったプラットフォームの今、フィジビリティスタディを行ってるところです。

1 超超小型衛星フォーメーションフライトによる衛星通信サービス

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まずこの超超小型衛星フォーメーションフライトは、本当にまだ実用化も実証実験もされていないような技術です。超超小型衛星フォーメーションフライト……編隊飛行を基礎技術として、日本発のグローバルキャリアを作るという話です。

簡単に言うと、すごくちっちゃな……大きさで言うと例えばガシャポンの玉ぐらいのものですね。その一つ一つに通信モジュールと、あと電磁石がついていて、お互いがお互いの距離を保ちながら、宇宙空間で巨大なアンテナのような振る舞いをするようなものを作ろうとしてます。

簡単に言うと、電波というのは波なので、電波の波長の半分以下の間隔が、間隔よりも短い間隔で編隊飛行すれば、これ自体がすごい超巨大なアンテナのように、振る舞えるんですね。

例えばですけど、ガシャポンの玉を100×100×100のでっかい箱に入れて、宇宙に持っていってそれを展開すると、例えば100×100×100だと100万個のモジュールになると思うんですけれども、その100万個のモジュールを宇宙空間で展開すると、ものすごい巨大なアンテナが作れるわけです。アンテナの大きさというのは、当然その通信スピードを高くするものになってきます。

こう巨大アンテナを、折りたたみ式のアンテナとかで実現しようとすると、ものすごく大きな打ち上げロケットが必要になるんです。けれども、こういったものであれば小型打ち上げロケットでも、かなりのサイズのアンテナを1回の打ち上げで打ち上げることができる。これでこのフォーメーションフライトの衛星を、コンステレーション(協調させた動作を行ない、一つのシステムとして活用)すると、ものすごいもう4Gとか5G、一気に5Gクラスの通信スピードを実現できます。

これ実は地球に向けると超超巨大なアンテナになるんですけど……これを宇宙空間に向けると超巨大な電波望遠鏡になるんですね。超巨大電波望遠鏡を宇宙空間に作れるので、まさにそのインターステラ(恒星間)じゃないですけれども、圏外惑星の、例えば直接観測ができたりとかします。

もちろん技術的にはものすごく高いハードルがあって、まだ実証実験すら行われてないので、そこからスタートしなければいけないんですけれども、こういったビジネスっていうのを、新しい新会社では考えてます。

あの先ほどのフォーメーションフライトの話なんですけれども、こういった普通のコンステレーションではなくて、フォーメーションフライト(編隊飛行)とコンステレーションを、併用することによって、もちろんその一つ一つのモジュールは小さくて、多数ありますんで、ものすごく堅牢性が高いんですね。モジュールが1個か2個壊れたとしても、周りのモジュールが補完してくれるので、1個や2個壊れても大丈夫というようなことですね。

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2 超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービス

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次にですね超低高度リモセン衛星による地球観測サービスについてです。

「つばめ」という愛称がついてるSLATSという、JAXAさんが打ち上げた実証衛星があるんですけれども、こちらの方でですね、超低高度……150kmから200kmぐらいを、このSLATSという衛星は飛行して、わりと長期間(1年9カ月間)、宇宙に…軌道に留まれることを実証した衛星なんですね。

HAYABUSA2でものすごく有名になったイオンエンジンっていう技術を使っていて……イオンエンジンというのはキセノンとかクリプトンみたいな、分子量の多い希ガスをイオン化することによって、それを推進力に変えるという衛星なんですけども……そのイオン化させるのに電気の力で、電気のエネルギーを使う。つまり太陽電池で発電した電力を使って、推進力を得ることができるということで、長持ちする……しかもその比推力というその性能は、ものすごく化学推進のロケットに比べるともう倍とかそういった効率が出るエンジンなんですけれども、こういったものを使ってですね、これ150 km とかっていう距離に衛星ってないんですけど……そこに衛星を置くことができると何が変わるかって言うと……

何が違うかって言うと、すごく安いレンズが使えるんですね……安いと言ってもまあ皆さんが使っている……白レンズみたいな感じのレンズを使えるんですね。これがすごく大きな話で、たぶん情報は出てないので、正確な話は分からないですけれども、今使われてる偵察衛星って軌道で言うと300km以上の軌道にあるります。それで分解能をほんと何十センチとかっていう分解能を実現しようとすると、レンズがめちゃくちゃ難しくなるんです。で、レンズの大きさっていうのにも制限と言うか、限界があって、だから超口径のでっかいに望遠鏡って、みんな反射望遠鏡じゃないですか? 反射望遠鏡って鏡ですよね。で、鏡ってやっぱり解像度が下がるんですよ。だからやっぱりレンズを使いたい。あの分解能をあげようとするとレンズを使いたい。でもレンズっていうのは本当にあの1メートルとか、そういうサイズになると、めちゃくちゃ大変、まーほんと職人さんの技術の世界で、何億円何十億円って世界になってくるわけですけど、そういったレンズを使ってます。あの偵察衛星、現行の偵察衛星は。でも、軌道をめちゃくちゃ下げることによって、民生品のレンズがギリギリ使えるぐらいの軌道なんですね。だからそういったカメラに使われてるようなレンズを使うことができる。

もう一個の利点というのが、そのセンサーが面のセンサーが使える……つまりCCDが使える、という利点があります。超でかい口径のレンズを使ってる現行の偵察衛星っていうのは、そういったセンサーがないので、あのラインセンサーって言って、面じゃなくて線でスキャンしてるようなものを使ってるんですねえ。(コピー機のように線でスキャンするため、1枚の写真を撮るのに時間がかかる)

ご存知の通り人工衛星は物凄いスピードで、北極と南極の間をぐるぐるぐるぐる回って飛んでいます。ですから例えば、皇居の撮影をしたいってなると、コマンド送るのは仙台あたりに送るんです。仙台あたりでコマンド送ると、ちょうど皇居あたりで撮影ができるぐらいな感じのセンサーを使ってるわけですけれども。こういったものがCCDが使えるようになったりして、ようは衛星一つあたりのコストも下がるし、大きさもちっちゃくできる。

こういったものであれば、コンステレーションできるだろうなと。多数の数百機といった衛星をこういった超低軌道衛星を飛ばすと、リモートセンシングを、ほぼリアルタイムで……望遠じゃなくて、広角のレンズを使うと、本当にリアルタイムでGoogle Earthみたいなことができるかもしれない。こういったものを、一つのサービスして考えてます。

3 宇宙実験用衛星・回収カプセル

これが先ほど言ったそのまああの、国際宇宙ステーション運用停止後を睨んだ、再回収用の実験プラットフォームですね。こういったものも今、我々の方でフィジビリティースタディをやっておりまして、実際に軌道の検討であったりとか、どれぐらいの期間、宇宙空間に滞在してどうやって再回収するのかっていうのを今フィジビリティスタディをやってるところです。

この3つの事業を衛星の新会社で考えております。

新会社では3つの事業で技術革新を行なう

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稲川貴大
まとめですね。通信、リモートセンシング、宇宙実験っていう3つの大きな分野、それぞれ全てにおいて技術革新を持ってですね新しいプラットフォームを使って作っていこうと思ってます。

ここで重要なのはプラットフォームっていう所だと思っています。宇宙産業って言ったときに、一つ一つのものを作るだけではなくて、プラットフォームおよびサービスを作って売っていくところが非常に重要になってきます。

我々はゼロというロケットを用い、さらにその先のアプリケーションまで提案していくことによってですね、プラットホームを作っていく、という大きなビジョンで進めていこうとしているところになります。

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3つの理由の部分。

衛星会社にたくさんあるわけですけれども、ロケット会社と統合したサービスってなかなかないわけですね。統合できると何がいいのかという部分ですけれども、一つにはリーズナブルな面ですね。ロケットに最適化した衛星が作れるようになると、いろんな無駄が省けます。そういうところによって最終的な低価格っていうところにつながってきます。

2つ目としてはスピードがあります。人工衛星の会社がたくさんあってロケット打ち上げを待ってるっていう状態が、世界的に起こっているわけですけれども、この部分に関してもですね、一貫して行うことで、早期に衛星コンステレーションを作ることができるという特徴があります。

3つめが、まあ正しい場所をですね。特に超低高度衛星というのを話しましたけれども、かなり変わった軌道…行き先なわけです。そうした時にですね、大型ロケットで運ぶことはあり得ないわけです。そうした時に超小型ロケットと、衛星っていうので、初めて実現できるというところで、特殊の場所、行きたい軌道へ行けるところに、競争力を持てるところになります。

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堀江貴文
Our Stars株式会社という会社名になります。

私が一応社長ということで最初立ち上げます。インターステラテクノロジズの100%子会社ということで、今後ですねこういったものをまずビジビリティスタディ(feasibility study)をして、実際にその試験機を打ち上げると。当然うちのインターステラテクノロジズのゼロというロケットを活用することを考えておりまして、設立は来年早々にも、100%子会社で設立はするんですけれども、その後はエンジェル投資家であったり、通信事業等を行なうような事業会社さんなどに増資をお願いして、実際にロケットを買って、運用するということを考えております。

以上ですね。

NHK の??さん。
衛星サービスの会社ということで、これまでのインターステラテクノロジズの新事業として続けられるという方法もあったのかなと思うんですけれども、新たに会社を設立するという狙いを教えていただけませんか。

狙いは…一番大きいのは、ロケットの打ち上げ会社っていうのは息が長いと言いますか、すごい長期間の開発の時間がかかるわけです。当然ながら(開発中のロケット)「ゼロ」を打ち上げたら、それ以降そのロケットの新規開発をしないかというと、当然するわけですね。もっと大型のものとか有人で飛べるようなものとか。そういったものを長期間投資をしながら やっていくわけで…資金調達の面で、息の長い投資をしてくれる投資家さんしか集まらないですね、ロケットの場合は。そのくせすごく巨額な資金調達が必要になってくる、ということで、もうちょっとその収益化しやすいビジネスというものを切り出して…

収益化しやすいビジネスだとお金が調達しやすい。まあ最悪うちのロケットじゃなくてもOur Starsの衛星を打ち上げることができますし、1回そのじゃあ衛星のコンステレーションも、例えば超低高度リモセン衛星みたいなものを打ち上げたところで、もう何十機とか打ち上げるれば、それはそれでビジネスになるわけですね。で、そこで収益を得られるわけです。

通信キャリアでもそうですけれども、まあユーザーさんをある程度見込めるわけじゃないですか。でビジネスとしても収益化できるので投資家の方々がそれから資金回収しやすいんですね。短期間で資金回収できる、ということで独立をして、そちらを切り出した形で資金調達した方が、お金が集まりやすい。簡単に言うと金が集まりやすいって話です。これが例えばロケットの会社と一緒になってると、ロケットの方が長期投資で息の長い投資だから、いつ回収できるのかわかんない、でもそれでも大丈夫…将来をすごく期待をして株買いますよっていう…もちろんそういった投資家さんに支えられてインターステラテクノロジズは生きてるわけですけれども…そうじゃない投資家さんのお金も集めないと大型のロケット開発は当然できないわけですから。その部分を切り出して、そちらでまた独自に資金調達をして、ロケットを購入するという間接的な形で、インターステラテクノロジーズの資金調達ができるようにするというのが、そういう目的です。

つまり儲かる部分を先に切り出してるって事です。短期的に儲かりそうな分野ってものがあの中で3つありましたけど、再回収カプセル事業というのが多分一番最初に事業化できると思っています。規模は小さいですけどね。ISSでやっていた部分の受託をするっていうことなので、市場規模は小さいんですけれども、固いビジネスとして、衛星の会社の最初の収益の柱になると思うんですけど、その後はリモセン衛星だったりとかブロードバンド衛星だったりとか、もうちょっとかかるんですけれども、何年かで事業化たぶん出来る。そこで資金回収ができる。上場するなりなんなりして、その会社で資金調達して、またロケットの購入という形で投資をするみたいな感じの流れを考えています。

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