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クーポン乞食は電気羊の夢を見るか? - 日本人が謙虚で慎ましいという幻想 -

M&A関連で美容室の業界を調べている。

Google検索して目に止まったのが上記のnoteで、内容を要約すると、

・業界は過当競争で顧客の奪い合い
・奪い合うために広告出稿額が嵩み、収益を圧迫する

という状態らしい。

日本に24万も登録業者がおり、美容師資格を持つ人が増え続ける中で、人口は減少している中、各店舗は顧客を奪い合うことになり、その結果としてリクルートだけは確実に儲かる。

同じことは堀江さんも指摘していて、

そう。そしてみんな、リクルートに重税を取られてるわけ。リクルートが狙ってる市場って、バカばっかりの市場なんですよ。ホットペッパーなんてそう。「お前ら、ホットペッパーに儲けさせるために、一生懸命働いてるんじゃないの?」っていうぐらい、ホットペッパー、ホットペッパーって言うんですよ、あいつらは。

と、いかにもな直球を投げている。

集客を他社メディアのみに依存し、クーポンという名の安売りを行い、値段だけが評価基準のクーポン乞食を集め、彼・彼女たちはその評価基準を持つが故に再来店をしないので、顧客資産は増えず、再び他社メディアへの出稿を行う。

という状態が、リクルートが創り出した情報弱者を相手としたクーポンメディアモデルの真骨頂であり、メディアを支配することが最高の権力を手にすることと同義であるこのポストモダンの時代において、リクルートがその最高権威に位置していることを意味する(同様の意味で、GoogleやFacebook, Amazonもより高位に存在する)。

合理的ではない価格で財を販売し購入するという行為が資産を毀損させることを人は理解することができない。その行為が人の努力やその積み重ねである歴史を、更には地球環境をのものを破壊する行為であるということに想いを至らすことができない。

罠はすぐ近くにある。

自分自身が飲食店のオーナーをやっていて、様々なメディアから勧誘を受ける。広告を出すことで集客が増えますよ、クーポンを出せば効果は更に高まることでしょう、こういった勧誘は分かりやすい。地元を盛り上げるために複数店舗でイベントを企画しましょう、その際に、イベントを知って来てくれた方にはビール1杯をサービスしましょう、罠はこのような形でやってくる。

イベントそのものに価値があれば、ビール1杯サービスする必要はない。ビール1杯サービスした結果として、そのビール1杯サービスに魅力を感じて来た顧客がその後も定着する確率は極めて低いだろう。なぜなら、その顧客は価格に対してのみ魅力を感じているからだ。

結果として何が起こるか。そのビール1杯分の原価や、それを準備することにかかった販売管理費を回収することはできない。結果として、それは利益の圧迫に繋がり、強いてはスタッフの給与所得に悪影響を与えるだろう。もちろんビール1杯分は微々たるものだが、考え方・態度そのものが問題であり、その積み重ねはボディーブローのように効いてくる。

物事には裏表がある。この物語の反対側ではビール1杯でイベントに参加した顧客がいる。彼・彼女たちはその瞬間には得をしたと思うだろう。しかし、その裏側では上記のようなメカニズムが回っていて、結果として身の回りのサービス業や製造業従業者がどんどん貧しくなっていく、失くなっていく。結局は自分自身の問題なのだ。

レビューサイトを見て正規分布の平均値や中央値からなるコメントやレコメンドを参照し、コスパを求めてクーポンを手に携え、次から次へと店を変え、その瞬間の利得に生き、他人と地球、そして自分自身を滅ぼしていく。

それが人間の業であると言われれば、それはそうだと思う。

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