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燃ゆる女の肖像/セリーヌ・シアマ監督

2021-01-24鑑賞

セリーヌ・シアマ監督の『燃ゆる女の肖像』を見ました。
https://gaga.ne.jp/portrait/

美術史の上では「まなざしの非対称性」、つまり「見るもの」と「見られるもの」との「制度」について言及されるが、制度の作り手である「男性」は果たして本当にその意味を理解しているのだろうか。この映画では有意の登場人物は全て「女性」だ。18世紀後半のフランスの話。

映画は、女性画家マリアンヌ(ノエミ・メルラン)が指導者兼モデルとして、若い女子生徒にデッサンを教える場面から始まる。当時の美術学校は女性に門戸を開いていなかった故、私塾のようなものだろうか。マリアンヌは、生徒が倉庫から見つけ出した彼女の「過去」の作品に一瞬戸惑いを見せる。その絵のタイトルが『燃ゆる女の肖像』であり、そこからこの物語の回想シーンが始まる。

マリアンヌは、ブルターニュの孤島に住む伯爵夫人から、娘エロイーズ(アデル・エネル)の「肖像画」を描く依頼を受ける。「肖像画」というのはつまりミラノの貴族との縁談から結婚に至る準備の品だ。結婚を望まぬエロイーズに、マリアンヌは身分を隠しながら接し、肖像の制作を進める。絵は完成するのだが、エロイーズからその「絵について」思わぬ叱責を受け、マリアンヌもう一度それを描き直すことにする。「今度は私がポーズをとります。」 ここからが映画の本題となる。

「見るもの」と「見られるもの」との関係、その主体「見るもの」であると信じていた画家マリアンヌはまた、ポーズをとるエロイーズからは「見られるもの」でもあることに気づく。平等なまなざしというのは、かくも哀しく美しいものである。だが絵の完成はまた、もとの「制度」に戻ることでもある。絵画の制度同様、それぞれの女性の主体は無きものとなる。

オルフェウスの話。なぜ彼は振り返ったのか。それもこの物語の鍵である。第72回カンヌ国際映画祭の脚本賞作品。

監督:セリーヌ・シアマ
出演:ノエミ・メルラン | アデル・エネル | ルアナ・バイラミ

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