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無料塾が人をつくる|はじめに-1|皐月秀起

はじめに~子どもたちが勉強する機会は、みんなに等しく与えられるべき~

はじめまして。NPO法人リーダーズカフェの皐月秀起です。私は、リーダーズカフェに集う大学生たちと、「経済的に厳しいご家庭の子どもたちのために学習支援を無料で行う個別指導型学習塾「宝塚つばめ学習会」を運営しています。

この無料塾を着想したのは、ひとつの新聞記事を目にしたとき。2016年7月29日付の日本経済新聞の夕刊「教育格差を埋める試み 公設無料塾」という記事です。 「格差」というと、「教育格差」だけでなく「所得格差」や「情報格差」などがあり、それらを総じた「格差社会」という言葉も多く耳にします。

私は「格差」自体は肯定的にとらえ、あっていいものと考えています。いくら頑張っても結果は同じ、報酬も同じ、評価も同じでは、やる気が出ませんし、活気のある社会にはなりません。競争もあっていいと思います。競争に勝つために、ノルマがきつすぎたり、プレッシャーを与えすぎたり、ルールや法を破ってでも・・・という行為はいけませんが、競争があるからこそイノベーションが起こり、そのおかげで我々の生活が便利に豊かになっています。

あってはいけないのは「機会の差」です。「機会の差」が教育格差につながり、所得格差につながるのはフェアではありません。塾に通うことができる家庭の子どもたちはいい学校に進学し、いい会社に就職する。育った家庭にお金がない子どもたち、あるいは大勢の中で勉強するスタイルに少し抵抗がある子どもたちは、いい学校に進学できず、いい会社にも入れない。これはあんまりです。何も進学や就職が人生のすべてではありませんが、子どもたちみんなに「勉強する機会は等しく与えられるべき」です。先ほどの新聞記事にあるように、すでに無料塾が全国にたくさんあり、活動されていることに強く感銘を受け、これはぜひ私も携わりたいと意を強くしました。

私は、兵庫県西宮市にある関西学院(以下、関学)で、「Mastery for Service(奉仕のための練達)」というスクールモットーのもとで10年間学びました。

社会人になってからは、20代のときに地元の少年サッカークラブの監督を2年間務めた他に、最近では長女の通う中学校のPTA会長を務めるなど、子どもたちと接する機会を持つことがありました。

そして何より、関学大の学生。私の管理・運営する賃貸マンション「アザレア43」に関学生が住み、6年前から「日経新聞を読む会」という勉強会を学生有志と始め、私が昔住んでいたインドネシア(ジャカルタ)に学生と一緒に研修旅行へ行くなど、大学生が身近にいます。そして、その発展版として「リーダーズカフェ~関学生のための学べるコミュニティ~」を2016年3月につくりました。

今の大学生は、時にはエネルギッシュさや泥臭さに欠けると言われますが、それ以上にやさしい気持ちを持ち、何より「人の役に立ちたい」というボランティア精神が大変旺盛です。これは私たちの世代が学生のときにはあまりなかったものです。

「彼らと一緒に、この『アンフェアな機会の差を解消したい』」と思い、「宝塚つばめ学習会」スタートさせて2年が経ちました。現在、小学4年生から中学3年生の生徒さん約30人に対し、大学生20人、社会人5人が講師ボランティア(「つばメンバー」と呼んでいます)となり、毎週1回の学習指導を行っています。

最近になって、去年まではなかった変化が現れてきました。

立ち上げ時は、「経済的に困難な家庭の子どもたちのために」学習支援をするのが私たちの役割と思っていました。それは今も変わりませんが、ただそれだけではなくなり私たちの学習支援の役割が多様化してきたのです。

一方、「大学で『Social Capitalと街の活動』のレポートを書きたいので、お話を聞かせてもらいたい」や「子どもの学力と経済を調べており、インタビューさせてもらいたい」など、大学生からレポートや研究のためのお手伝いの依頼が多くなってきました。最近では、「貧困の連鎖と高校中退者の関係性を研究しており、無料塾の運営や講師の方の話をお聞きしたい」という依頼が、大学生ではなく高校生からあり、とても驚きました。

さらには、ついにというか、いよいよというか、「子どもの学習支援の在り方について」を卒業論文の研究テーマにしたいという大学生が現れ、これを機会にじっくりと過去を振り返り、経緯も整理しながら、彼ら彼女らのリクエストにお応えしたいなと思い、本書を書き始めることにしました。

#無料塾 #読書 #小説 #子ども #教育 #ボランティア

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