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無料塾が人をつくる|第1章-3|皐月秀起

学歴別に見た賃金

学歴による賃金の差もはっきり現れています。若い内に大きな差はありませんが、男女いずれも大学卒・大学院の賃金カーブの傾きが大きくなっており、高校卒、高専・短大卒との差がどんどん開いていきます。特に、女性に比べて男性のほうがその傾向が大きく出ています。

生涯賃金ですが、中学卒の男性と大学卒の男性を比較すると、生涯賃金で約7800万円もの差があり、高校卒と比較しても約5900万円の差があるというデータがあります。一方、女性の場合は。中学卒比で約8600万円、高校卒比で7100万円と、男性よりもさらに差が開きます。

この生涯賃金の推計データは、60歳で定年退職した場合の推計であるため、61歳以降の賃金や退職金は加味されていません。これらを加味すると、大学卒の生涯賃金は3億円台になる一方、中学卒とは1億円近い差が生まれることになります。

「社会に出たら学歴なんて関係ない」という意見が根強くありますが、学歴によって得られる賃金には明確に差があるということが分かります。

国は子どもの教育を軽んじている?

もちろん、国も手をこまねいているわけではありません。2014年に「子どもの貧困対策法」が施行され、解決に本腰を入れ始めました。先述の経済的な理由で就学が困難な世帯に給食費や学用品を支給する「就学援助制度」もそのひとつです。2018年からは日本学生支援機構の奨学金に給付型が導入されました。2019年4月からは幼児教育無償化が一部で先行実施されるなど、国や自治体が子どもの支援に動き始めました。

この背景には、「教育への公的支出が日本は非常に少ない」という現実があります。

OECDが2017年に、加盟国の国内総生産(GDP)に占める小学校から大学までに相当する教育機関への公的支出(国・政府などが支出)の割合を公表しました(2014年データ)。日本は3.2%で、比較可能な34か国中なんと最下位です。OECD加盟国の平均は4.4%で、デンマークの6.3%を筆頭に、ノルウェー6.1%、アイスランド5.7%、ベルギーとフィンランドが各5.6%と続き、福祉の手厚い北欧勢が上位に並びます。

公的支出割合の中で、高等教育(大学など)を見ると日本は34%で、OECD平均の70%を大きく下回っています。さらには幼児教育の公的支出の割合も、OECD平均82%をこれまた大きく下回る46%にとどまっています。

無料塾の存在意義

公的支出が少ないということは、裏を返せば私費負担、家計の負担が多いということです。子どもの教育は、各家庭に委ねられているので、その家庭の経済状況による格差がどうしても起きてしまいます。経済状況に問題があれば、塾に子どもを生かせることができず、本人が思うような学歴を手に入れることができず、よって収入も限られてしまう。学歴の低い大人の子どもは、同じように学歴が低くなりがち。この貧困の連鎖を断ち切ることができれば、本人の願いが叶うだけでなく、その子どもへもプラスに働きます。税金を納めるようになれば立派な社会貢献にもなります。

将来を担う子どもたちを貧困の連鎖から脱出させるために、何ができるのか?真剣に向き合うべき時がきています。そこで私たちは、無料塾の運営に乗り出すことにしました。経済的に困難なご家庭の子どもたちを中心に、無料で学習サポートを行うことにより、自分の希望する進路に少しでも近づけ、さらには各家庭の教育費の負担率を引き下げたいと思っています。

これで第1章を終わります。お読み頂き、ありがとうございました! 次回からは、コラムを挟んで第2章「生い立ち~着想の源泉を探る~」に移ります。

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