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無料塾が人をつくる|第1章-2|皐月秀起

絶対的貧困と相対的貧困、どちらがきつい?

講師ボランティアの研修会などで学生たちに投げかけてみると、うーんと考えた末、「相対的貧困の方がきつそう」とだいたいの学生が答えます。もちろん答えがあるわけではなく、「どちらもきつい」が正解でしょう。私たちは絶対的貧困の指標である1日200円での生活がどれほど苦しいのかを具体的にイメージするのが難しいので、実際のところ二つの貧困の比較はできません。

ただ、相対的貧困がきついことは、絶対的貧困よりもイメージしやすそうです。言い方が難しいですが、私を含めたご近所さんがみんな同じ貧困レベルで、他から裕福な地域の情報が入ってこない閉鎖された場所なら、これが普通とある意味開き直れるかもしれません。しかし、相対的貧困はちょっと違います。「周りのみんなにとっては当たり前の生活が自分だけ享受できない」と考えるとどうでしょう?こちらのほうが精神的なダメージはきついですし、絶望感すらあると思います。最初は子どもも「なんで僕(うち)だけ?」と親に言います。だけどしばらくすると言わなくなります。代わりに言う言葉が「どうせ僕(うち)なんて…」になります。

例えば、小学校のクラスを思い出してみます。修学旅行に行ける子、行けない子がいます。確かにケースとしてはありますが、そんなに多くはないかもしれません。でも、「塾に行ける子と行けない子」はどうでしょう?塾の費用は何年かに1回の修学旅行より、金額負担が大きいです。自分だけが行けないという精神的負担だけでなく、進路・将来にもかかってきます。

親の所得と子どもの学力

それでは、なぜ塾に行けない子どもがいるか?詳しくはいろいろな事情があると思いますが、まずは親の収入が少ないことが理由としては挙げられます。

実際、親の所得と子どもの学力には相関があることが分かっています。

例えば、東京大学に通う学生の親の年収は950万円以上が6割を超えています。

さらに学力テストの結果を見ても、親の年収と子どもの点数は比例していることが分かります。

これは、親の学歴別に子ども本人の大学進学期待を調査したデータで、両親ともに大卒の家庭と非大卒の家庭の子どもの大学への進学期待を比べると、中学1年時点で大きな差が出ています。親が大学を卒業していると、それを知っている子どももそれが当たり前になり、普段の授業やテストも大学に進学するつもりで受けますし、大学進学が当たり前になります。親の年収だけでなく、生まれ育つ環境にも左右されるということです。

単純に低所得世帯への経済的支援を手厚くしさえすれば学力が上がるというわけではなく、子どもへのモチベーションアップなども必要で、包括的なサポートが求められます。

#小説 #読書 #子ども #教育 #ボランティア

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