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無料塾が人をつくる|第1章-1|皐月秀起

【第1章:子どもの貧困~無料塾が必要な理由~】

7人にひとりが貧困状態に

子どもの貧困の解消は待ったなしの状態です。2015年の子どもの貧困率(17歳以下で等価可処分所得の中央値の半分<2015年は122万円>を下回る人の割合)は13.9%となりました。過去最悪だった2012年調査から2.4ポイント下がり、12年ぶりに好転したとはいえ、7人に1人は貧困状態にあります。主に先進国の集合体である経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均が13.3%(2013年)であり、それを日本は上回っています。

この調査のポイントとして、子どもがいる現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満の世帯)の内、大人が1人の世帯の貧困率が50.8%(2015年)である点です。子ども全体だと7人に1人ですが、大人が1人の世帯、いわゆる父子家庭・母子家庭の子どもに限ると約半分が貧困状態にあります。

もう一つ押さえておきたいポイントとして、この貧困率の基準が「可処分所得122万円」であるという点です。年間122万円ですから、月換算で約10万円です。食費や住居費を考えると、かなりギリギリのラインが設定されての「7人に1人」だということを理解しておく必要があります。例えば月15万円でも生活はかなりきついですし、生活コストの高い首都圏なら20万円でも決して楽ではありません。実際は、5人に1人以上が貧困状態に近いといえるでしょう。

貧困の連鎖

経済的な理由で就学が困難な世帯に給食費や学用品を支給する「就学援助対象者」は、文部科学省の調査によると4年連続で減少していますが、それでもまだ2008年のリーマンショック前よりも多く、就学援助率自体は15%前後のラインで高止まりしています。親の収入が少ないことによって、子どもが十分な教育が受けられず、進学・就職で不利になり、収入の高い職や安定的な職に就けない状態が続き、貧困から抜け出せない。困窮する子どもたちを放置せずに、貧困の連鎖を断ち切ることが社会的な課題になっています。

二つの貧困
貧困は、国や地域・機関によってさまざまな定義がありますが、大きく分けて二つの概念があります。

一つは、「絶対的貧困」です。絶対的貧困とは、生活水準が絶対的な意味で低い層、または個人をいい、現在一般的に知られている絶対的貧困の定義は世界銀行によるもので、1日の生活費が1.9米ドル(約200円)で生活している人を絶対的貧困層と定義しています。世界の貧困率(2013年)は1990年の35.3%から2013年は10.7%に、貧困層の数も18億6400万人から7億6800人に、それぞれ大幅に改善しており、世界銀行は2030年にまでに貧困率を3%まで減らすことを目標にしています。

もう一つの概念が、「相対的貧困」です。相対的貧困とは、生活水準が他と比べて低い層、または個人をいいます。先進諸国には、前述のような絶対的貧困層は存在しない前提で貧困問題が議論されるため、一般的には「相対的貧困率」が使われます。「子どもの貧困率が7人に1人」という数字も、相対的貧困率です。

この相対的貧困率も、他の先進国に比べて日本が高いという、ちょっと信じられないデータがあります。OECDの2015年の調査によると、日本の子どもの貧困率16.3%(2012年調査)に対して、OECD加盟国の平均は13.3%と、日本の子どもの貧困は世界的に見ても高いことが分かります。ちなみに、アメリカは19.9%と日本よりも高いですが、フランスは11.6%、イギリスは11.2%、ドイツは9.5%とかなり低くなっています。日本はGDP(国内総生産)が世界第3位の経済大国のはずですが...。

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