#32 LOOP BLAKE 第２章 腐れ縁 第19話「ソルマン・ノルスタイン」

　薄うすい暗くらがりの地下牢ちかろうの中なかで檻おりの外側そとがわで四人よにんの男おとこ達たちが一人ひとりの男おとこに目めを向むけていた。その中なかで藍川あいかわ竜賀りゅうががその男おとこに向むかって言いい放はなった。

源太げんた「また俺達おれたちにコテンパンにされに来きたのか？グレイブ・トンプソン？」

グレイブ「ほざけクソガキ共ども！！今度こんどは前回ぜんかいみたいに油断ゆだんしたりしねぇ…返かえり討うちにして殺ころしてやる」

竜賀りゅうが「お前まえはコイツと違ちがって整形せいけいしてないんだな？」

グレイブ「ああ……俺おれはここの牢屋ろうやにいる連中れんちゅうの監視係かんしがかりになったんだよ！だから整形せいけいする意味いみが無なかったんだよ！」

竜賀りゅうが「ま、それはそれは！“降格こうかく”おめでとうございます！大変たいへんおめでたいお話はなしが聞きけました！」

グレイブ「シャラップ！！…テメェらにあの時とき邪魔じゃまされて失態しったいの責任せきにんで俺おれはボスから制裁せいさいを喰くらった！！」

源太げんた「この都市まちに攻撃こうげきを仕掛しかけといてやり返かえされたら被害者顔ひがいしゃヅラか？随分ずいぶん都合つごうの良いいこった…」

竜賀りゅうが「俺おれの祖父そふが言いっていた言葉ことばを一ひとつ教おしえてやる…“他人ひとを撃うって良いいのは、他人ひとに撃うたれる覚悟かくごのある奴ヤツだけだ”ってな…やり返かえさない相手あいてだからって攻撃こうげきしても良いいって考かんがえなら、とんだお門違かどちがいだってことを思おもい知しらせてやろうか？」

　竜賀りゅうがは再ふたたび刀かたなを取とり出だし、鞘さやから剣けんを抜ぬいた。

グレイブ「あの時ときから俺おれの身体からだにはテメェに負まけた記憶きおくが傷キズが残のこっちまってんだよ」

　グレイブは親指おやゆびで自分じぶんの背中せなかを示しめした。

グレイブ「その記憶きおくが甦よみがえる度たびにこの傷キズが疼うずきやがる…！！」

竜賀りゅうが「あっそ？…俺おれはあの夜よるは随分ずいぶん美味おいしい御飯ゴハンも食くえて、エリックさんからマーカスさんとの熱あつい思おもい出で話ばなしも聞きけて最高さいこうの夜よるだったけどな？」

グレイブ「！！…殺ころすッ！！！」

　グレイブは鎖鎌くさりがまをブーメランの様ように高速こうそく回転かいてんさせ、竜賀りゅうが達たち目掛めがけて投なげつけて来きた。しかし竜賀りゅうがは一気いっきにそれを躱かわして間合まあいを詰つめてきた。

グレイブ「後うしろにいる奴ヤツらのこと忘わすれているぜ小僧こぞうッ！！」

　グレイブの投なげた鎖鎌くさりがまが竜賀りゅうがとマーカス、ジェイコブに向むかって飛とんでいった。しかし手前てまえ1メートルくらいのところで回転かいてんしながらピタッと止とまった。鎖くさりの行方ゆくえを目めで追おうと鎖くさりの真まん中なかを竜賀りゅうがの右手みぎてが掴つかんでいた。

　竜賀りゅうがは右手みぎてで鎖くさりをグイッと引ひっ張ぱり、グレイブ目掛めがけて投なげ返かえした。

竜賀りゅうが「オラ！！お返かえしだ！！」

　再ふたたび高速こうそく回転かいてんしながら戻もどってくる構かまを、今度こんどはグレイブがもう一ひとつの鎌かまで受うけ止とめた。

　　ガシャン！！

グレイブ「ッ！！？」

竜賀りゅうが「自分じぶんの武器ぶきに気きを取とられてる暇ヒマなんかあんのか？」

　竜賀りゅうがは地面じめんに落おちていた鎖くさりの塊かたまりを掴つかみ上あげ、ゴチャゴチャに縺もつれた状態じょうたいでグレイブの顔かおに向むかって投なげかけた。

グレイブ「グオブ！！？？」

　鎖くさりがガチャガチャと絡からまって、身動みうごき取とれなくなっているグレイブが何なんとか身体からだと武器ぶきを自由じゆうを確保かくほする為ために必死ひっしに悶もだえていた。竜賀りゅうがはその隙すきを見逃みのがさなかった。

竜賀りゅうが「どりゃあああ！！！」

　　　ドゴッ！！

　グレイブの腹はらに目掛めがけて強烈きょうれつな蹴けりをぶち込こんだ。視界しかいを自身じしんの武器ぶきである鎖くさりに奪うばわれていたグレイブは不意ふいを突つかれバランスを崩くずし地面じめんに倒たおれてしまった。

　そこで倒たおれて悶もだえているグレイブに向むけて竜賀りゅうがは刀かたなの切先きっさきを向むけた。

源太げんた「おい！竜りゅう！何なに考かんがえてんだよ！？」

竜賀りゅうが「……コイツが動うごけなくなる方法ほうほうだよ」

　　　ブス！

　竜賀りゅうがは刀かたなの切先きっさき数すう㎝だけグレイブの太腿ふとももに突つき刺さした。

グレイブ「ああああああああああああああああああああああああああああああああ！！？？」

　竜賀りゅうがが刺さした刀かたなをすぐ引ひき抜ぬくと、グレイブの太腿ふとももから血ちが溢あふれ出でてきた。

グレイブ「痛いてえええええええええええええ！！」

　やっと鎖鎌くさりがまを解といて自由じゆうの身みになったグレイブは止とめどなく溢あふれてくる血ちにパニックになっていた。しかしその様子ようすを冷さめた目めで見みていた竜賀りゅうがは見下みくだす様ようにグレイブに言いい放はなった。

竜賀りゅうが「……はぁ…もういい…もしここの檻おりの鍵カギを持もってんならソレ置おいて、さっさとあの隠かくし通路つうろから逃にげろ…」

グレイブ「はぁ…！はぁ…！…何なんだと…！？」

竜賀りゅうが「聞きこえなかったのか？これ以上いじょうここでお前まえなんかと戦たたかっても何なんの価値かちもねぇって言いってんだよ」

グレイブ「ッ！？…」

竜賀りゅうが「次つぎの戦やるってんなら今度こんどこそ俺おれはお前まえの命いのちを奪うばうからな…？」

　グレイブは悔くやしい思おもいで竜賀りゅうがを睨にらみ付つけたが、竜賀りゅうがと目めが合あってしまうと言葉ことばを詰つまらせてしまった。

グレイブ「………〜〜〜クソッ！！」

　グレイブは自分じぶんの服ふくの布ぬのを引ひきちぎり、傷キズの付ついた足あしをその布ぬので縛しばって、立たち上あがった。そして足あしを引ひきずる様ように隠かくし通路つうろに向むかって歩あるき出だした。

グレイブ「はぁ…はぁ…鍵カギなら…ジェイコブの奴ヤツが持もってらぁ…」

竜賀りゅうが「あっそ…じゃあしばらくジェイコブは借かりていくな？」

グレイブ「…好すきにしろ」

竜賀りゅうが「源太げんた！聞きいたか？鍵カギはジェイコブが持もってるらしい…ソイツに命令めいれいしてこの檻おりの鍵カギ全部ぜんぶ外はずしていってもらおうか！」

源太げんた「ああ！！」

　源太げんたはジェイコブの身体からだを無理矢理むりやり起おこし、ジェイコブに聞きいた。

源太げんた「この檻おりの鍵カギはどこにある？答こたえろ！」

ジェイコブ「…俺おれの胸むねポケットにあるカードキーだそれをそこのパネルにかざせば自動的じどうてきに鍵カギは開ひらく…」

　近ちかくに立たっていたマーカスがジェイコブの胸むねポケットに手てを入いれるとICカードの様ような物ものが出でてきた。

マーカス「コイツはここの檻おりのどれを開あけられるんだ？」

ジェイコブ「全部ぜんぶさ…ソイツはグランドマスターキーだここの檻おりの全すべての鍵カギの開閉かいへいはソイツ一ひとつでこと足たりる」

竜賀りゅうが「そんな大事だいじなモンを何なんでアンタが持もっている？アンタみたいな下したっ端ぱの団員だんいんがそんなモン持もってて許ゆるされるもんじゃないだろ？」

　グレイブは隠かくし通路つうろの入口いりぐちまで辿たどり着つくと壁かべに隠かくされていたボタンを押おした。すると石造いしづくり長階段ながかいだんがエスカレーターの様ように足場あしばが上昇じょうしょうし始はじめた。

　ジェイコブはエレベーターに乗のって上うえに昇のぼっていくのを、横目よこめで確認かくにんした後あと、竜賀りゅうがに向むかって言いった。

ジェイコブ「ここの牢屋ろうやの巡回じゅんかい係がかりをかって出でたのさ……グレイブは拷問ごうもん係がかりをやりたがっていたがな」

竜賀りゅうが「自分じぶんから言いってやらせてもらえる程ほどブルガント団だんの組織そしき図ずってのはガバガバなのか？」

ジェイコブ「……フン…まぁ人手ひとで不足ぶそくってのはいつも付つき纏まとってる問題もんだいではあるわな」

マーカス「だからお前まえもそうやってことあるごとに顔かおを整形せいけいしているって訳ワケか？その状態じょうたいじゃお前まえの名前なまえも本当ほんとうかどうか怪あやしいもんだな？」

ジェイコブ「そうだな…俺おれは自分じぶんの本当ほんとうの名前なまえなんざ知しらねぇ…」

源太げんた「え？」

ジェイコブ「俺おれの名前なまえは組織そしきに付つけられたモンだ…いつか俺達おれたちブルガント団だんがこの国くにを完全かんぜんに掌握しょうあくした時ときに誰だれもが俺達おれたちを恐おそれる様ようにする為ために…グレイブだって…本当ほんとうは俺おれの兄貴アニキなんかじゃねぇんだよな…」

竜賀りゅうが「そんな…」

ジェイコブ「ただ…親おやに捨すてられたって境遇きょうぐうがたまたま被かぶってたから兄弟きょうだいの様ように仲なかが良よくなったってだけだ……顔かおも整形せいけいしてもらう時ときに双子ふたごみたいになる様ようにサラザールに頼たのんでこうしてもらってんだよ…」

源太げんた「……」

ジェイコブ「笑わらえるだろ？ずっと嘘ウソの兄弟きょうだいごっこやってる大人おとなだってな」

源太げんた「笑わらわねぇよ」

ジェイコブ「？」

源太げんた「俺おれも同おんなじさ…俺おれは自分じぶんの本当ほんとうの名前なまえを知しらないスラム街がい上あがりの元もと実験動物じっけんどうぶつさ」

ジェイコブ「…だったら何なんでお前まえは…」

源太げんた「そんな俺おれでもまともに付つき合あってくれる…そんな素敵すてきな出会であいがちゃんとあったからだよ」

　源太げんたは隣となりにいた竜賀りゅうがの肩かたをポンと軽かるく叩たたいた。

竜賀りゅうが「まぁでも…人生じんせいの最初さいしょの出会であいなんてほとんど運うんみたいなとこあるけど、それだけが人生じんせいの全すべてじゃない」

ジェイコブ「…」

竜賀りゅうが「人生じんせいの答こたえは一瞬いっしゅんの出来事できごとで決きまるものじゃない、自分じぶんの人生じんせいの一秒一秒いちびょういちびょうの積つみ重かさねの中なかから答こたえを導みちびき出ださなければならない」

ジェイコブ「……」

マーカス「フン…小童こわっぱが一端いっぱしの事こと言いうじゃねぇか？」

竜賀りゅうが「なんちゃって♪…今いまの言葉ことば、実じつは爺じいちゃんの受うけ売うりでした」

マーカス「ップ！…ハッハッハッハッハ！こりゃ良いい！」

ジェイコブ「…フ……俺おれもきっと…答こたえを完璧かんぺきには見みつけられてねぇってことか…」

　ジェイコブはエリックに言いわれた言葉ことばを思おもい出だしながら呟つぶやいた。

ジェイコブ「いいぜ……案内あんないしてやるよ…」

源太げんた「？どこに？？」

ジェイコブ「エリック・ブラックの元もとさ…今いまは大分だいぶ衰弱すいじゃくしているがな」

　そして、ジェイコブは足あしを引ひき摺ずりながら三人さんにんを案内あんないしようとした。

竜賀りゅうが「ちょっと待まって！まずここの牢獄ろうごくに閉とじ込こめられてる人達ひとたちを解放かいほうしたいから予備よびのマスターキーとか持もってない？」

　そういうとジェイコブは別べつのポケットに手てを突つっ込こみゴソゴソと探さがしていた。

ジェイコブ「コイツがスペアマスターキーだ」

竜賀りゅうが「サンキュー！」

マーカス「竜賀りゅうが！捕つかまってる人達ひとたちを解放かいほうするのは良いいが、その人達ひとたちをどこに逃にがす気きだ？」

竜賀りゅうが「さっきの通路つうろは狭せま過すぎるからシカゴ支部しぶの下した側がわから逃にがすつもりだ」

マーカス「何なに！？」

源太げんた「馬鹿バカかお前まえ！！今いまシカゴ支部しぶはブルガント団だんに内部ないぶから襲おそわれて大だい混乱こんらんが起おきてんだぞ！！そんなことしたら一般人いっぱんじんが逃にげる時ときに巻まき添ぞえ喰くらっちまうぞ！」

竜賀りゅうが「だから牢屋ろうやから出でていく時ときに彼等かれらに頼たのんでおくつもりだ…暴あばれ回まわってるブルガント団員だんいん一人ひとり当あたりに対たいして数人すうにんがかりで押おさえ付つけろって言いっておくよ」

マーカス「この戦たたかいに一般人いっぱんじんの適能者デュナミストも容赦ようしゃ無なく巻まき込こもうってのか…？」

竜賀りゅうが「その人達ひとたちの中なかにもし反対はんたいする人ひとがいるんならこう言いってやるよ…『自分じぶんの住すんでる都市まちを裏切うらぎった奴ヤツを余所者よそものに任まかせて何なんにも悔くやしくねえのかよ』ってな」

源太げんた「……お前まえってかなり性格せいかく悪わるいよな？」

竜賀りゅうが「そこは強したたかってことにしとけ」

？？？「一体いったい外そとで何なにがあったんだ？」

　突然とつぜん檻おりの中なかから声こえが聞きこえてきた。中なかに閉とじ込こめられていた男おとこが話はなしてきたのだ。

竜賀りゅうが「……とにかくここは俺おれに任まかせて早はやく源太げんたとマーカスさんはジェイコブを連つれてエリックさんのとこに！」

マーカス「分わかった…！！」

　そして三人さんにんは地下牢ちかろうの先さきへ行いってしまった。竜賀りゅうがは檻おりの中なかから話はなしかけてきた男おとこに向むき合あって、改あらためて話はなし合あった。

竜賀りゅうが「さっきの質問しつもんだったな…『外そとで何なにがあったか？』だよな？今いまブルガント団だんがマクシム連合れんごうのシカゴ支部しぶの地下ちかから連合れんごうの隊員たいいん達たちを一斉いっせいに襲おそってる」

？？？「本当ほんとうか！？…畜生ちくしょう！！…こんな時ときに！俺おれは何なにもできねぇ！！」

竜賀りゅうが「…貴方アナタ…名前なまえは？」

ジョン「ジョンだ！…ジョン・シスラーだ！」

竜賀りゅうが「Mr.ミスターシスラー…貴方アナタはこの都市まちの住人じゅうにんなのか？」

ジョン「そうだ！マクシム連合れんごうに登録とうろくしていただけで連合れんごうの隊員たいいんにはならなかった…だが俺おれはこの大好だいすきな都市まちで十数年じゅうすうねん以上いじょうも住すんでいる」

竜賀りゅうが「そっか…今いまからここの鍵カギを全部ぜんぶ開あける…戦たたかえない人ひとはそこの隠かくし通路つうろから出でて、戦たたかいが終おわるまで安全あんぜんな場所ばしょに避難ひなんしておいてくれ」

ジョン「しかし！！」

竜賀りゅうが「ただ！…戦たたかう意志いしのある者ものはこの先さきにあるシカゴ支部しぶの地下ちかからブルガント団だんをぶっ潰つぶす！協力きょうりょくしたい者ものだけ着ついて来こい…これは強制きょうせいじゃない」

ジョン「…俺おれは戦たたかえるぜ…！！」

竜賀りゅうが「オーケー」

　竜賀りゅうがはそう言いうと檻おりに取とり付つけられていた装置そうちにカードーキーをかざし、ロックを解除かいじょした。竜賀りゅうがは更さらにジョンや他ほかの人達ひとたちの手錠てじょうの鍵カギもカードで解錠かいじょうしていった。

竜賀りゅうが「Mr.ミスターシスラー！貴方アナタは檻おりにいる人達ひとたちに今いま言いった状況じょうきょうを説明せつめいしていってくれ！俺おれは皆みんなの鍵カギを解錠かいじょうしていく！それと！」

　竜賀りゅうがは隠かくし通路つうろに入はいろうとした女性じょせいの一人ひとり捕つかまえて引ひき止とめた。

竜賀りゅうが「申もうし訳わけないんだけど貴女アナタはここに残のこって下ください！」

女性じょせい「！？何なんでよ！！私わたしは戦たたかえないわよ！？」

竜賀りゅうが「戦たたかえない人ひとが地上ちじょうに安全あんぜんに避難ひなんする為ためには必かならず避難ひなん誘導ゆうどうが要いります！貴女アナタにはその役目やくめを担になって頂いただきたいんです！」

女性じょせい「！…解わかったわ」

竜賀りゅうが「それとそこの貴方アナタにはそこの通路つうろの曲まがり角かどで人ひとをここに案内あんないして欲ほしいんです」

男性だんせい「何なんで俺おれまで！」

竜賀りゅうが「通路つうろでパニックになるのを防ふせぐ為ためです！ちゃんと順番じゅんばん通どおりに並ならんで案内あんないすれば必かならず全員ぜんいん助たすかります」

男性だんせい「…解わかった」

竜賀りゅうが「人ひとが誰だれも来こなくなったと感かんじたら誘導ゆうどうしていた人達ひとたちに伝つたえてすぐにここから離はなれて下ください！良いいですね？」

皆みんな「OK！！」

竜賀りゅうが「それじゃあ皆みなさんお願ねがいします！Mr.ミスターシスラー！急いそぎましょう！」

ジョン「おお！！」

　竜賀りゅうがはそう言いうと急いそいで檻おりと囚とらわれている人達ひとたちの手錠てじょうの鍵カギを次々つぎつぎと解錠かいじょうしていった。すでにジョンに説明せつめいと受うけた者もの達たちは迅速じんそくに牢屋ろうやから出でていき、そうでない者もの達たちには自分じぶんの口くちから彼等かれらに状況じょうきょうを説明せつめいする。この作業さぎょうがどれくらいかかるか分わかわなかったが、少すくなくとも十数回じゅうすうかいには収おさまらないだろうと確信かくしんしていた。少すくなくとも100回かいは超こえるだろうと思おもって急いそいで動うごいていた。

竜賀りゅうが「これで大分だいぶ片付かたづいただろ…」

　竜賀りゅうがは巨大きょだい迷宮めいきゅうの様ように広ひろい地下牢ちかろうの檻おりを全すべて開あけ人ひとが残のこっていないのを確認かくにんして源太げんた達たちの向むかった出口でぐちへ急いそいだ。

ジョン「ヘーイ！！」

竜賀りゅうが「あ！ジョン・シスラー！」

ジョン「こっちも全員ぜんいん避難ひなん誘導ゆうどう終おわったよ！」

竜賀りゅうが「サンキュー！こっちも全員ぜんいんの鍵カギは解錠かいじょうし終おわったよ！」

ジョン「オーケー！それじゃあこっちも早はやく脱出だっしゅつしよう！」

竜賀りゅうが・ジョン「「伽霊覚醒ギアルアクセス！！」」

　竜賀りゅうがとジョンは伽鍵礼符キーカードを発動はつどうし全速力ぜんそくりょくで走はしった。

　そしてしばらく走はしっていると檻おりの中なかから源太げんたが出でて来きた。

竜賀りゅうが「源太げんた！！」

源太げんた「竜りゅう！！そっちも終おわったか！？」

竜賀りゅうが「ああ！色々いろいろ皆みんなに力ちからを借かりながらな…それよりそっちは！？」

源太げんた「ああ…」

マーカス「エリック！！エリック！！しっかりしろ！！」

　鍵カギの開あいた檻おりの中なかでエリックは身体中からだじゅう痛いため付つけられたような傷キズがあちこちにあり、すっかり衰弱すいじゃくし切きっていた。マーカスはそんな親友しんゆうに必死ひっしに呼よびかけていた。

マーカス「エリック！俺おれはここにいるんだ！戻もどって来きたんだぞ！なのに！こんなとこで終おわっちまっていいのかよ！目めを覚さましてくれよ！親友ブラザー！！」

エリック「………マ…マー…カス…」

　エリックの口くちから微かすかな声こえが聞きこえてきた。竜賀りゅうがも源太げんたも聞きこえた声こえにびっくりして檻おりの中なかに入はいった。

源太げんた「嘘ウソ…さっきまで全然ぜんぜん呼吸こきゅうもできてなかったのに…」

竜賀りゅうが「…マーカスさんの必死ひっしの呼よび掛かけがエリックさんの意識いしきを取とり戻もどしたんだ…」

マーカス「…良よかった…！！馬鹿バカ野郎ヤロウ…！！俺おれに何なにも言いわねぇまま勝手かってに死しのうとしてんじゃねぇよ…」

エリック「…良よか…った…戻もどって…来きて…くれて…」

マーカス「当あたり前まえだろ！お前まえだけ残のこして行いくなんて…やっぱり俺おれにはできなかった」

　エリックは目めを薄うすく開ひらいて首クビをゆっくり動うごかして、竜賀りゅうがと源太げんたの存在そんざいを認識にんしきした。

エリック「…そっか…小僧こぞう共どもが…俺おれの親友しんゆうを…連つれて…来きてくれたのか…本当ほんとうに…ありがとうな…」

竜賀りゅうが・源太げんた「「どういたしまして」」

竜賀りゅうが「それよりも早はやくホテル『ローグ』に連つれていってゆっくり治療ちりょうしましょう！」

マーカス「あ…ああ」

ノルスタイン「無事ぶじに戻もどれると良いいですね〜♪」

　竜賀りゅうが達たちは突然とつぜん響ひびき渡わたった陽気ようきな声こえのする方向ほうこうに顔かおを向むけるとそこには派手ハデな装飾そうしょくの服ふくを着きた細身ほそみの男おとこが立たっていた。

竜賀りゅうが「これまた変へんなのがやって来きおった」

源太げんた「どこの誰だれやねん…」

　あまりに突拍子とっぴょうしな格好かっこうで可笑おかしな喋しゃべり方かたをするその男おとこを見みて竜賀りゅうがも源太げんたも口調くちょうが可笑おかしくなっていた。

ノルスタイン「Ohーーソーリー♫…わた〜〜くしの名前なまえはソルマン♪…ソルマン・ノルスタインとーーも〜〜しまーーす♫」

　竜賀りゅうがはダラダラと面倒臭めんどくさそうに檻おりから外そとに出でて来きてソルマンの前まえに立たった。

竜賀りゅうが「……竜賀りゅうが…藍川あいかわ竜賀りゅうがだ」

ノルスタイン「おおーーそれはアナ〜〜タのお名前なまえでしょうか？？♩」

竜賀りゅうが「そうだ…アンタもブルガント団だんの一員いちいんって認識にんしきで良いいんだな？」

ノルスタイン「Oh〜〜⤵︎当あたらーーずしも遠とお〜〜からず♪…とだけ言いっておきましょ〜〜かねー♫」

竜賀りゅうが「？」

ノルスタイン「わた〜〜くしはブルーーガント団だんの幹部かんぶなので〜〜す♪そこらへんの団員だんいんと同おなーーじにしな〜〜いでいただきた〜〜いですねーー♩」

竜賀りゅうが「！」

源太げんた「！！」

ノルスタイン「これで〜〜も隠密おんみつや暗殺あんさつが超ちょうーー得意とくいですんで〜〜♩組織そしきから大変たいへんチョーーホウされていま〜〜す♫」

源太げんた「暗殺あんさつが得意とくいってんならこんなとこに堂々どうどうと来こないで背後はいごから攻撃こうげきすれば良よかったんじゃねぇ？」

ノルスタイン「Noーー♪たまにはマッショーーメンから挑いど〜〜むのも面白おもしろそーーうじゃな〜〜いですかーー♫」

　一人ひとりだけ愉快ゆかいそうな声こえを出だしながら話はなしかけてくるノルスタインを竜賀りゅうがは警戒けいかいしながら話はなしかけた。

竜賀りゅうが「ノルスタイン…エリック・ブラックをあのホテル『ローグ』から連つれ出だした犯人はんにんってのは…アンタだったってことで良いいんだよな？」

　ノルスタインは目めを細ほそめて竜賀りゅうがをじっと見みつめたがすぐ気きを取とり直なおして聞きき返かえした。

ノルスタイン「な〜〜ぜそう思おもーーうので〜〜すか？♫」

竜賀りゅうが「ブルガント団だんはかなりの真正面まっしょうめんからの戦闘せんとうを好このむ連中れんちゅうばっかりだと思おもうんだけどさ……それだと国盗くにとりなんか絶対ぜったい成功せいこうするはずがない…正攻法せいこうほうが通用つうようするのは圧倒的あっとうてきな“数かず”を持もっている側がわだからな」

ノルスタイン「ホウ？♪」

竜賀りゅうが「少数しょうすうの組織そしきが国盗くにとりを成功せいこうさせるには、組織そしきの部下ぶかをかなり統率とうそつ・管理かんりできる者もの、そして作戦さくせんの裏うらで根回ねまわしができる隠密おんみつ機動きどうの者ものがいる……そんな手練てだれはそうそういない」

ノルスタイン「………」

竜賀りゅうが「するとアンタが後者こうしゃである可能性かのうせいが高たかい…違ちがうか？」

　ノルスタインは嬉うれしそうに手てを叩たたき拍手はくしゅした。

ノルスタイン「ブラボーー♪」

竜賀りゅうが「…」

ノルスタイン「ここまでわたーーくしを評価ひょうかしていただ〜〜けるなーーんてとてもカンゲ〜〜キでーース♪確たしかにあな〜〜たがおっしゃるよーーにわた〜〜くしがブルガント団だん隠密おんみつ機動きどうーー隊たいのリーダーをたんと〜〜させていただいておりまーーす♫」

竜賀りゅうが「そして…シカゴの都市とし中じゅうの適能者デュナミスト達たちを…こんな牢獄ろうごくに幽閉ゆうへいしていったのも…アンタだな？」

ノルスタイン「YEEEES♪その通とお〜〜りでーーす♫」

竜賀りゅうが「…」

ノルスタイン「あ、そうそう…そこにいるご老人ろうじんの誘拐ゆうかいと尋問じんもんもわた〜〜くしが行おこないまーーしたよ♪」

マーカス「何なに！？」

ノルスタイン「エリック・ブラ〜〜ック氏しは…貴方アナターー方がた三人さんにんのゆ〜〜くえに関かんして口くちを割わらーーなかったんで〜〜すよ♪誰だれも決けっーーしてこんなフ〜〜ウに御老体ごろうたいを痛いたーーめつけたいなんて思おも〜〜いませんでしたよ♫」

竜賀りゅうが「だったら…別べつにここまでする程ほどじゃねぇだろ…」

ノルスタイン「我わ〜〜が組織そしきの適能者デュナミスト数人すうにんがーー叩たた〜〜きのめさせらーーれたことをボ〜〜スが怒いかっておーーられました〜〜♪その気きーーになれば〜〜こーーんな都市まちを破壊はかいで〜〜きるブルガントが決けっーーして派手ハデに国盗くにとりのパフォーマンスを行おこなわな〜〜い理由りゆうがあーーりま〜〜す♫」

源太げんた「どういうことだ？その理由りゆうってのは！？」

ノルスタイン「そ〜〜もそもブルガーーント団だんが何故なぜ〜〜そこま自分じぶんたーーちの存在そんざいを〜〜世間せけんに公おおやけにーーせず、いかにも影かげで糸いとを引ひ〜〜いている謎なぞーーの巨大きょだい組織そしきの様ようにえーーん出しゅつして〜〜いるのか？♫」

竜賀りゅうが「それもたった数すう百ひゃく人にん規模きぼの組織そしきでか？それをわざわざ部下ぶかの顔かおをいちいち整形せいけいさせ…交代こうたいさせながら都市まちで暴あばれさせ…住人じゅうにんを誘拐ゆうかいしていく」

ノルスタイン「フフン♪」

竜賀りゅうが「そこまで慎重しんちょうに動うごけるのは大だい組織そしきのリーダーとしては立派りっぱだけど……よくよく考かんがえたら慎重しんちょう過すぎる」

ノルスタイン「フッフフフフフ♩やはり貴方アナタもそ〜〜感かんじられまーーすか？♫」

竜賀りゅうが「こんなシカゴみたいな大都市だいとしをここまで冷静れいせいに、慎重しんちょうに、焦あせらず、慌あわてず侵略しんりゃくさせる様ようにしているお前まえらのボスの…真しんの敵てきってのがいるはずだ！それは誰だれだ！」

ノルスタイン「フッフッフッフッフ♬…ひじょ〜〜にざーーんねーーんで〜〜す♩アナ〜〜タの様ように勘かんの鋭するどーーい方かたを味方みかたにで〜〜きずに、敵てきとして消けーーすことになろうとは♫」

　ノルスタインは竜賀りゅうがに左手ひだりてを向むけた。

　次つぎの瞬間しゅんかんノルスタインの左手ひだりてから空気くうきを歪ゆがめる程ほどの衝撃波しょうげきはを竜賀りゅうがは見みた。

竜賀りゅうが「皆みんな下さがれッ！！」

　竜賀りゅうがは咄嗟とっさに刀かたなを抜ぬいたが、衝撃波しょうげきははそれを超こえる速はやさで襲おそいかかってきた。

　　　ドンッ！！！

　辺あたり一面いちめんが衝撃波しょうげきはの影響えいきょうで砂埃すなぼこりが一気いっきに舞まった。

ノルスタイン「…さっきのしつも〜〜んに答こたえていませーーんでしたね〜〜♫」

　砂埃すなぼこりが晴はれる竜賀りゅうがは地面じめんにうつ伏ぶせに倒たおれていた。その背後はいごでは三人さんにんも地面じめんに倒たおれていた。竜賀りゅうがは痛いたみに堪たえながらもゆっくり立たち上あがった。

ノルスタイン「Mr.ミスターブルガントの最大さいだいの宿敵しゅくてき……最もっとも忌いむべき存在そんざい…それはこの国くに、アメリカ合衆国がっしゅうこくそのもので〜〜す♫」

To Be Continued