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#30 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第17話「守番のマッド・ドクター」

 アメリカのイリノイしゅうのシカゴシティ、この大都市だいとしにあるマクシム連合れんごうのシカゴ支部しぶかってはしっている4にんぐみ集団しゅうだん支部しぶたかいビルを視界しかいはじめたところでとおくから地響じひびきがこえてきた。

  どおぉぉぉ…ん…

 その集団しゅうだんなか一緒いっしょはしっていた少年しょうねん一人ひとり藍川あいかわ竜賀りゅうががそのおとのした方向ほうこうをチラッとだけかえった。しかしすぐにかお目的もくてきけた。

メリアン「ねぇ?…竜賀りゅうがくん本当ほんとうきみのおとうさん大丈夫だいじょうぶなの?」

竜賀りゅうが「……しつこいな〜……心配しんぱいするだけ無駄ムダですよ…絶対ぜったいちますから」

源太げんた竜賀りゅうががそういうってことは本当ほんとうつとおもうから大丈夫だいじょうぶですよ」

竜賀りゅうが「それよりもこっちは自分じぶんたちのやるべきことをやりましょう!そうでなけりゃとうさんが『いまいままでなにやってたんだ』っておこってきますよ」

マーカス「……よっぽど信頼しんらいしてるんだな」

竜賀りゅうが「“信頼しんらいしてる”っていうより“うたがってない”ってのがただしい表現ひょうげんかもしれない」

 そんなやりりをしながらも順調じゅんちょう目的もくてきまで辿たどいていた。

源太げんた「ここか……ブルガントだんのアジトへの秘密ひみつ通路つうろぐちってのは」

 まえにあったのは見窄みすぼらしい診療所しんりょうじょぐちであった。

竜賀りゅうがたしかにこういうところであれば、怪我ケガった適能者デュナミストんできてもそんなに違和感いわかんはないかもしれないけど……」

メリアン「なにってんのよ…これこそ違和感いわかんバリバリじゃない…ブルガントだんなのよ?そんな連中れんちゅうがいちいちこんなひとにつく場所ばしょ出入でいりしてたらかなら通報つうほうがあるはずよ……それがいってことは」

竜賀りゅうが「ここにいる人間にんげんがアジトの番人ばんにんってことか」

メリアン「そういうことね…」

 メリアンは天使の刃レイズ・エッジをいつでも発動はつどうできるように礼符カードを2まい左手ひだりてかくっていた。

竜賀りゅうがなにしてんの?」

源太げんた手練てだれの適能者デュナミストになってくるとこうやって伽鍵礼符キーカード霊媒印コモンベスタから手間てまはぶために、あらかじ礼符カードしといていつでも発動はつどうできるようにしておくんだよ…常識じょうしきだぞ」

竜賀りゅうが「そっか…んじゃおれも」

 源太げんたから説明せつめいけた竜賀りゅうが伽鍵礼符キーカード右手みぎてからそでれてえないようにした。メリアンはそんな竜賀りゅうが様子ようすわったものをよう表情ひょうじょうていたが、なおしてドアにけた。

 ドアをなかはいっていくと電気でんききっぱなしの無人むじん受付うけつけはいった。メリアンが先頭せんとうって、ほか三人さんにんはいってるように指示しじしてきた。

源太げんた「………だれないの??」

竜賀りゅうが「もしくはどっかにかくれてるか…戦場せんじょうかってるとか?」

マーカス「…メリアン、竜賀りゅうが源太げんた君達きみたちそこらにかくれてなさい…」

メリアン「え?」

源太げんたなにかんがえてんの?」

マーカス「いから…おれのことをしんじなさい」

 三人さんにんはマーカスのったとお病院びょういんかくれられそうな物陰ものかげにそれぞれかくれて、なにかあったらすぐめるようにマーカスの様子ようす見守みまもっていた。

マーカス「ん、うん!!……へーーイ!!だれないか!?ここは病院びょういんだろ!?」

 マーカスが受付うけつけまえおおきなこえびかけた。しばらくシーンとした様子ようすなにきなかったが、マーカスがキョロキョロしているとおくから足音あしおとこえてきた。

   スタ…スタ…スタ…スタ…スタ…スタ…

 ゆっくりと、しかし徐々じょじょおおきくなってきている足音あしおと何者なにものかが近付ちかづいてていることをらせていた。竜賀りゅうが源太げんたいきひそめてひたいからあせをかいていた。

竜賀りゅうが大丈夫だいじょうぶか…?)

 そして受付うけつけのドアがひらかれたのは、白髪しらがじった白衣はくい初老しょろう男性だんせい医師いしだった。丸眼鏡マルメガネをかけた医師いしはゆったりした足取あしどりでマーカスのまえった。

マーカス「なんだよ!ちゃんとるじゃねぇかホスキンズ先生せんせい!」

ホスキンズ「なんじゃ…マーカスか…こんな時間じかんなんようじゃ?診察しんさつ時間じかんはとっくにぎとるぞ?」

マーカス「なに診察しんさつ時間じかんだ!それどころじゃねぇだろ!」

 マーカスは怒鳴どなようにホスキンズにかってった。ホスキンズはまゆひそ怪訝けげんそうにマーカスにいかけた。

ホスキンズ「一体いったいどうしたとうんじゃ?そんなに血相けっそうをかえて…」

マーカス「いまそとなにこってるのかかってんのか!?ブルガントだん連中れんちゅうがマクシム連合れんごうのシカゴ支部しぶろうとしてんだぞ!?さっさとここからげよう!!この都市まちはもうわりなんだよ!!」

ホスキンズ「なに!!?それは本当ほんとうか!?」

マーカス「ああ!!こんなこと冗談ジョークいにワケねぇだろ!!はやくここから一緒いっしょげよう!!」

ホスキンズ「……いや…ワシはここをはなれるわけにはいかんのじゃ」

マーカス「なにってんだ!!こんなところにいたらたたかいにまれえてぬかもしれないんだぞ?」

ホスキンズ「ワシはここをはなれんよ…ここがワシの居場所いばしょなんじゃ」

マーカス「……なんでだよ?自分じぶん医者いしゃとしてずっとここではたらつづけてきたからか?それとも…」

 マーカスはここで不自然ふしぜん言葉ことばってけた。

マーカス「ブルガントだんにここの門番もんばんをやれって命令めいれいされてるからか?」

ホスキンズ「……今夜こんやはこの診療所しんりょうじょ死亡しぼう診断書しんだんしょくことになりそうだな」

 ホスキンズとばれた医者いしゃ老体ろうたいとはしんじられないうごきとはやさでマーカスのクビつかかろうとした。しかし、マーカスはそれを先読さきよみしていたのか咄嗟とっさ右手みぎてでホスキンズのうえはらうしろ退がった。

 マーカスはバランスをくずしながらもうしろ退がりながら間合まあいをった。しかし受付うけつけだいかるのこなしでえ、マーカスをたお完全かんぜんにマウントをった。

ホスキンズ「ほっほっほっほっほ……心配しんぱいするでないぞ?いままえさんはここでぬことになるが、あとすこしすればおまえさんの親友しんゆうんだほうがマシだとおもうほどの苦痛くつうあじわってぬだろう」

マーカス「!?……やっぱりテメェもずっとグルだったのか!!」

ホスキンズ「地獄じごくってっていろ…!!」

 ホスキンズはマーカスのかおかって右手みぎて近付ちかづけようとした。

   ガシッ!!

 しかし、その手首てくびよこからガッチリつかんでうえきあげさせられた。ホスキンズが自分じぶん右手みぎてにぎっている正体しょうたいけると、そこには藍川あいかわ竜賀りゅうががいた。

竜賀りゅうが年寄としよりのマウントってそんなにご満悦まんえつになれるなんざこころ薄汚うすよごれている証拠しょうこだぜオッサン」

   ドゴン!!!

 竜賀りゅうが右手みぎて渾身こんしんのアッパーカットでホスキンズのあごなぐった。ホスキンズは部屋へやじゅうにぶおとひびかせながらかべまでぶっばされた。竜賀りゅうがはマーカスをゆっくりがらせた。

竜賀りゅうが大丈夫だいじょうぶですか?マーカスさん?」

マーカス「あ、ああ…大丈夫だいじょうぶだ…心配しんぱいしなくてい…それよりエリックのヤツが」

竜賀りゅうが「ええ…まだきてますよ、きっと」

 メリアンと源太げんた二人ふたりもとりマーカスががるのを手伝てつだった。

竜賀りゅうが「それよりも…あのホスキンズってひと適能者デュナミストだったんですか?」

マーカス「いや、ちがう…本当ほんとうかれ無適能者アンチステージさ」

竜賀りゅうが本当ほんとうの?」

源太げんた「つまり、偽者ニセモノってことか…」

ニセホスキンズ「ほっほっほっほっほ……いたいのう、いたいのう…年寄としよりはいたわるもんじゃぞい小童こわっぱ?」

メリアン「下手ヘタ三文芝居さんもんしばいはやめて、さっさとアンタも素顔ほんしょうあらわしたらどうなのよ?詐欺師ペテンしめ」

ニセホスキンズ「クックックック……やれやれ…ブルガントだん秘密ひみつにここまで辿たどけたことをたたえて…おれ本当ほんとうかおせてやるよ糞尼クソアマ

 ニセホスキンズは右手みぎてかおおおうと、かおがグニャグニャとうごめきはじめた。四人よにんはグロテスクな光景こうけい言葉ことば完全かんぜんうしない、いきをするのもわすれていた。

 そして、かお変化へんかするのがむとニセホスキンズは右手みぎてをゆっくりかおからはなした。すると金髪きんぱつ白人はくじん青年せいねんかおになっていた。ブルーのひとみととのった顔立かおだちを邪悪じゃあく形相ぎょうそうがかなり台無だいなしにしていた。

メリアン「アンタは…たしかシャーマン・サラザールね…狂った医者マッド・ドクターサラザール」

シャーマン「クックックック…光栄こうえいだね…きみよう小娘こむすめにもられているなんてね」

竜賀りゅうがだれですか?」

メリアン「アメリカで違法いほう薬物やくぶつ使つかった人体じんたい実験じっけん薬物やくぶつ横領おうりょう指名手配しめいてはいけていたおとこよ」

源太げんたおれんでたとこでもチラッと名前なまえみみはいるくらいだったから相当そうとう悪党あくとうだぜ…スラムがいにいる孤児ガキ誘拐ゆうかいしてヤクをぶちんで嬉々ききとしてた野郎ヤロウだよ」

シャーマン「クックックックック…人聞ひとぎきのわりかただな?人類じんるい科学かがく発展はってんためには必要ひつよう犠牲ぎせいってヤツだろ?まともな教育きょういくけられずに馬鹿バカのままんでいくかもしれなかったむなしい生命いのち意味いみあたえてやってたんだ…感謝かんしゃしてもらいたいくらいだな」

竜賀りゅうが「……とうさんもってたけど…科学かがく発展はってんってのがそんなに大事だいじなもんなのかね?どいつもこいつも自分じぶんがやってることが絶対ぜったい正義せいぎだとおもんでてすくえねぇヤツばっかだな」

メリアン「まったくだわ…」

シャーマン「この世界せかいで90パーセント以上いじょういる凡人ぼんじんってのはすうパーセント天才てんさいたち努力どりょくによってゆたかにらせているってことをそろそろるべきだぜ」

源太げんた「だったらっといてやるが、その天才てんさいさま偉大いだい実験じっけん数々かずかず失敗しっぱい犠牲ぎせいになったりしてんのも、それらの実験じっけん協力きょうりょくしてんのにスポットライトをびることなくんでいってんのはアンタのう90パーセント以上いじょうめる凡人ぼんじんたちだぜ?」

シャーマン「ほう?…うじゃねぇか小僧こぞう?」

源太げんた自分じぶん実験じっけん自慢じまんをするのは勝手かってだが、その裏側うらがわ何百なんびゃく何千なんぜんって人達ひとたちにじほど努力どりょく評価ひょうかしようとしねぇヤツ銅像どうぞうなんざだれつくりたかねぇんだよ」

シャーマン「……やれやれ、ってもからねぇ馬鹿バカばかり…これじゃあいくっても平行線へいこうせんだな」

竜賀りゅうが最初ハナっからこんなクソみたいなことするヤツらのかんがえなんざなにきたくねぇわ」

シャーマン「ここをとおさねぇのがおれ役目やくめだ……だからころされても文句もんくうなよ?」

源太げんた上等じょうとうだ…!!」

 竜賀りゅうが源太げんたたたかおうとかまえようとしたが、それをよこめられた。

メリアン「貴方アナタたちMr.ミスタージャッジをれてさききなさい」

 メリアンはむち戦闘せんとう体勢たいせいはいっていた。

メリアン「ここで私達わたしたち全員ぜんいんでこのおとこたおすよりも、わたし一人ひとりでコイツをたおしているあいだ貴方アナタたち三人さんにんMr.ミスターブラックをつけにほう時間じかん圧倒的あっとうてきみじか救出きゅうしゅつすることができるわ」

源太げんた「でも!!コイツの実力じつりょくがまだ未知数みちすうなのにそんな賭博ギャンブルみたいなこと…」

メリアン「あら?貴方アナタたちはべドナーの相手あいて自分じぶんたち父親ちちおやまかせたのにわたしにはそれができないの?」

源太げんた「…べつにそういうことじゃ…」

竜賀りゅうがかった!ここでゴチャゴチャっててもしょうがないからここはまかせました!」

源太げんた「!?竜賀りゅうが!!」

竜賀りゅうがだい大人おとな子供こどもかってまかせろってってくれてるんだから、それを心配しんぱいしてめさせようとするなんて野暮やぼってモンだってとうさんがってたぜ」

メリアン「そういうことよ!ここはわたしにまっかせなさーい♪」

マーカス「かった!そんじゃくぞ!餓鬼がきども!」

竜賀りゅうが「はい!!」

源太げんた「…はい!」

 そして竜賀りゅうが源太げんたはマーカスをまもようにしながら、受付うけつけ裏側うらがわあしはいってった。

シャーマン「がすか!!」

 シャーマンは伽鍵礼符キーカードし、能力チカラ発動はつどうさようとした。しかしそのあいだにメリアンがってはいった。

メリアン「させるかってんのよ!!」

 シャーマンのから水銀すいぎんよう液体状えきたいじょう金属きんぞくんでたが、メリアンはひかりむちすべての液体えきたい金属きんぞく一瞬いっしゅんにしてばした。

シャーマン「ほほう?……一応いちおう名前なまえいておこうか?おじょうさん?」

メリアン「…マクシム連合れんごうインディアナ支部しぶ…メリアン・ベイカーよ!!」

シャーマン「ブルガントだん専門せんもん医師ドクター…シャーマン・サラザールだ!!」

 そして、二人ふたり適能者デュナミスト壮絶そうぜつたたかいの火蓋ひぶたってとされた。____


 ____裏口うらぐち必死ひっしさがそうとする源太げんたとマーカスはあたりになにかくしスイッチのようなものがいかさがしていたが、手掛てがかりになりそうなものはなにつからなかった。

源太げんた「どこだ…!?」

マーカス「どこにとびらがあればそこのちかくにかくとびらのスイッチかなにかがあるはずなんだが…」

 そんな二人ふたりおく部屋へや手当てあたり次第しだいさぐっていると、竜賀りゅうが一人ひとりだけ部屋へや全体ぜんたいをぼんやりていた。

源太げんた「ん〜〜と…ここじゃない、ここでもない…?ヘイ竜賀りゅうが!おまえもサボってないでどこかにかくとびらがあるかどうかさがすの手伝てつだえよ!」

竜賀りゅうが「……なんかどっかから隙間風すきまかぜてねぇかなってさぐってたんだ」

源太げんたなんでこんなときかぜなんてにしてんだよ!」

マーカス「!そうか!そういうことか!!」

 マーカスも一旦いったんものさがめて、みみましてみた。するとかすかにどこかからヒューっとかぜけていくようなおとがしていた。

マーカス「!!ここか!?」

 マーカスが指差ゆびさしたあたりのゆか竜賀りゅうが源太げんたがしゃがんで調しらべてみた。

竜賀りゅうが「……このゆか隙間風すきまかぜ丁度ちょうど四角形しかっけいになってるよ」

源太げんた「…こんなかんじ?」

 源太げんたかくとびらかたちたしかめるようゆかをなぞった。

竜賀りゅうが「そんなかんじ」

マーカス「つまりそこがかくとびらってことか。問題もんだいはそこをどうやってけるかってことだが…」

 マーカスはあごて、どうしたものかとかんがえていたが竜賀りゅうががって霊具ギーツであるかたなした。

竜賀りゅうが二人ふたりともがってて!もう時間じかんい!」

 竜賀りゅうがいたかたなるって地面じめんった。すると四角形しかくけいかくとびらなか一周ひとまわちいさな四角しかくあなかれた。

竜賀りゅうが「もうこんなとこで無駄ムダ時間じかんられるのが勿体無もったいなぎる!」

 竜賀りゅうがはしゃがみんでちいさなあな突っ込ツッコんであなかべさわっていた。

源太げんた「……なにしてんだ?」

竜賀りゅうが多分たぶんこのへんとかにありそうながすんだけど……!!あった!!」

 竜賀りゅうがなにかをさがしあてたらしくゴソゴソとうごかしていると突然とつぜんかくとびらがつゆっくりひらはじめた。竜賀りゅうがいそいであなからいてはなれた。

源太げんたかくとびらはじめたぞ!?」

マーカス「一体いったいどうやったんだ!?」

竜賀りゅうが「どうって…かくとびら内側うちがわ開閉かいへいスイッチをしただけだよ」

 とびら自動じどうでゆっくりひらいていくのを竜賀りゅうがはケロッとした表情ひょうじょうながめながらこたえているのを源太げんたとマーカスはポカンとした表情ひょうじょうていた。

源太げんた「そんなのがあったのか…?」

竜賀りゅうが「うん…だってとびらそとにある開閉かいへいスイッチをさがすのに時間じかんかけるよりも、とびら位置いちかってるんだからとびら内側うちがわのスイッチのほうがすぐつかるとおもってさ」

マーカス「しかし…とびら位置いち正確せいかくおおきさがかっているんだったら、わざわざ律儀りちぎ開閉かいへいスイッチにばしてすよりも、最初さいしょからとびらおおきさにあなけたほうくなかったか??」

竜賀りゅうが「…………………こまかいことはいんだよ!さっ!さっさとこうぜ!!」

マーカス「……かれはマメな性格せいかくなのかい?」

源太げんた「いや……ちょくちょく天然てんねんなとこがあるってだけです」

 完全かんぜん開放かいほうったかく通路つうろ姿すがたあらわし、通路つうろおくやみ三人さんにんいざなよう不気味ぶきみさがただよっていた。

 竜賀りゅうが足早あしばや通路つうろなかはいってくのを、源太げんたとマーカスはいてった。

源太げんた完全かんぜんかくしです」

マーカス「…どうやらそのようだな」

  ドガアアン!!!

 かく通路つうろ階段かいだんりていっている途中とちゅう出入口でいりぐちほうからおおきな破壊はかいおんこえてきた。

竜賀りゅうがはじまったか…いそごう!!」


 メリアンのひかりむちんで水銀すいぎんやいばことごととしていた。シャーマンもなく連続れんぞくつづけていた。そしてるったむち先端せんたんがあわやシャーマンの身体からだたりそうにもなっていた。シャーマンもそれをらわないようけていた。

シャーマン「クックックックック!なるほど…ひかりむちによる防御ぼうぎょ攻撃こうげき同時どうじにやってのける“攻守こうしゅ一体いったい”のわざこそがきみ戦法せんぽうワケか…随分ずいぶん便利べんりたたかかただね?」

メリアン「わざわざ分析ぶんせき結果けっか説明せつめいしてくれてどうも」

シャーマン「しかし…防戦ぼうせん一方いっぽうになってしまうと攻撃こうげきおろそかになってしまいてずっぽうになってしまう…」

 メリアンはその言葉ことばにピクッとまゆうごかした。シャーマンはそのうごきを見逃みのがさなかった。

シャーマン「どうやら本当ほんとうにそのようだな?きみおれ情報じょうほうつかんでいるなら当然とうぜんおれ霊段階ステージっているはずだろう?」

メリアン「だったら…どうだってうの?」

シャーマン「通常つうじょう霊段階ステージした適能者デュナミスト格上かくうえ適能者デュナミストたたかときには短期たんき決戦けっせんたたかうのが定石じょうせきだ。でなけりゃたたかいが長引ながびほど格下かくした適能者デュナミスト不利ふりになっていくからだ」

 シャーマンはうごかすとあたりにあったものかびがり、シャーマンの周囲しゅういをゆっくりまわはじめた。

シャーマン「きみはさっきからそんなひかむちしか使つかってない。短期たんき決戦けっせん勝負ケリをつけようとしているわり馬鹿バカひとおぼえのようおなわざしか使つかってこない。つ・ま・り…」

 シャーマンのまわりを浮遊ふゆうしていたものつぎからつぎへとメリアン目掛めがけてんできた。

シャーマン「そのわざきみ最大さいだいふだだってことだな……」

 メリアンは鬱陶うっとうしそうにんできたものはらけるとむち一振ひとふりしシャーマンにけてはなった。

メリアン「どんな状況じょうきょうでもてる見込みこみがあるからふだってうのよ…!!」

   バチィィィッ!!

 ふたた強烈きょうれつ火花ひばなこして、メリアンの天使の刃レイズ・エッジがシャーマンに直撃ちょくげきした

 はずだった…

 ひかりのむちがシャーマンの周囲しゅういおお半透明はんとうめい球体きゅうたいによってふせがれてしまっていた。メリアンはまるくしていた。

メリアン「随分ずいぶん便利べんりそうなたて能力のうりょくってるじゃない?」

シャーマン「だからさっきの言葉ことばかえさせてもらうぜ…どんな状況じょうきょうでもけない見込みこみがあるから格上かくうえってうんだよ!」

 シャーマンは手裏剣しゅりけんよう水銀すいぎんのカッターを高速こうそく回転かいてんさせながら、何発なんぱつもメリアンにけてはなってきた。メリアンもこれはかわしきれないとおも物陰ものかげ素速すばやかくれた。

シャーマン「そんなもんで攻撃こうげきかわったとおもうなよ…!!」

 するとメリアンのかくれていた物陰ものかげかべから銀色ぎんいろほそはりけてきた。

 それをかろうじてけたメリアンはその水銀すいぎんはりむちった。

メリアン「まさかかべすら貫通かんつうしてるなんてね…」

シャーマン「あ、そうそう…その“医療純銀メススパーダ”には人体じんたい有害ゆうがい猛毒もうどくふくませているから、ちょっとでもかすればあのきだ」

メリアン「あっ…そっ!!」

  ビュオン!!!

 完全かんぜん物陰ものかげからの奇襲きしゅう、タイミングてきにはうごいてけられない一撃いちげきであったはず。しかし、シャーマンは顔色かおいろひとえず攻撃こうげき球体きゅうたいのバリアーをってふせいだ。

シャーマン「だ・か・ら!そんな不意打ふいう程度ていどじゃこのバリアはやぶられねぇっての!何遍なんべんわせるなよ格下かくしたちゃん!」

メリアン「一撃いちげきふせげたからって二撃目にげきめへの警戒けいかいおこたってるようヤツだからてそうっておもったのよ」

シャーマン「!!?」

  バチィィッ!!

 バリアを解除かいじょしてつぎ攻撃こうげきうつろうとした瞬間しゅんかん、シャーマンの死角しかくから天使の刃レイズ・エッジ顔面がんめんかってんで直撃ちょくげきした。

シャーマン「!!??ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

メリアン「これですこしはいたでしょうが!!」

 メリアンは、かおさえるシャーマンのもだえる姿すがたてガッツポーズをしていた。

メリアン「天使の刃レイズ・エッジ一撃いちげき必殺ひっさつりのわざじゃないのよ!自在じざい波状はじょう攻撃こうげきから連続れんぞく攻撃こうげき最大さいだいりなのよ!」

シャーマン「あああああああ…なんてな♪」

 シャーマンはかおさえていたはなすとかおにはキズひといていなかった。

メリアン「!?………それがアンタの伽霊能力ギアルスキルなのね?」

シャーマン「ああ……キズ回復かいふくさせる能力チカラ、そしてかおを整形する能力チカラさ」

メリアン「なんですって!!?」

シャーマン「クックックックック……この能力チカラ随分ずいぶん組織そしきとしては便利べんりだったのさ…負傷ふしょうした団員だんいん治療ちりょう…それに一度いちどかおれてしまった団員だんいんかお別人べつじん整形せいけいすることでマクシム連合れんごうないでの脱走だっそう隠蔽いんぺい工作こうさく可能かのうにしたのさ」

メリアン「…シャーマァァン!!!!」

シャーマン「ここまではなした以上いじょうきみかしておくワケにはいかなくなったな…大人おとなしくんでもらうかね!!!」


To Be Continued

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