#27 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第14話 「そこにあるのは戦い」
目の前に巨大なメイスを振るうこの男。黒いスーツ姿で広い肩幅、そして白い髭を生やしたこの男。ウイリー・べドナーと呼ばれるこの男は自らの手で部下であったはずの女性隊員をその手で殺めた。
そして再びその手で他の四人の部下の命も奪い取ろうとした瞬間、藍川竜賀と猿渡源太は身体が動いた。
竜賀「く…アンタ…自分が何しようとしてるか分かってんのか!?」
源太「アンタが今殺そうとしてるのは……アンタの仲間じゃねぇのか!!?」
ウイリー「さっきまではね……しかし、ダミアン・シーベルト君…君が部下に話してはいけない内容をベラベラと喋ったおかげでもう殺すべき対象となったんだよ」
源太「何!?」
ウイリー「組織を円滑に動かす為には部下は何も知らない馬車馬の様に働いてくれる方がトップは都合が良いんだよ…それなのに」
竜賀「自分達にとって不都合な事実を知った部下には消えてもらうってことかよ?」
ウイリー「その通りだ…」
ウイリーはメイスを力づくで押し竜賀と源太を後方に突き飛ばした。竜賀は上手く受身を取り体勢を立て直し、源太が受身が取り切れず倒れ込んだ。
源太「ぐえ!」
ウイリー「つくづく部下ってのは面倒臭ぇもんだ……知らなくても良い情報を興味本意で調べて…組織に楯突くようになっちまって結局無駄な体力を使って処分しなけりゃいけなくなっちまう」
ウイリーはメイスを自身の部下に向けた。レスリー・コーナーはその中でようやく冷静さを取り戻せたのか、パニックになりながらもウイリーに言葉を投げかけた。
レスリー「何時からですか…?」
ウイリー「何がだい?Mr.コーナー?」
レスリー「一体いつからインディアナ支部の違法な人体実験をしていることを少将は知っていたんですか?」
ウイリー「8年前からだよ…」
レスリー「……え……」
ウイリー「聞こえなかったのかい?8年前からだと言ってるじゃないか…Mr.コーナー?Mr.ケネスター、Mr.デイビス、Miss.シャンサ……君達が思っているほど世の中ってのは甘くないんだよ?」
レスリー「な……そんな」
ウイリー「アメリカ合衆国最大の伽霊能力研究機関である“マクシム連合”だぞ?それを世界的にもここまで影響力を持つ為にはただ漫然と人助けだけしてれば済むとでも思っていたのかね?その社会的地位に昇りつめる為にその裏でどれだけの“人に話せない努力”をしてきたか」
シャンサ「……そんなことって……」
ウイリー「君達が簡単に想像できることくらいは当たり前にやってきたさ……でも考えてみたまえ?…適能者の能力を解析する為の人体実験が今は違法でも、それが遠い未来にはかけがえのない人類の科学の進歩や発展に繋がるのであれば、これほど素晴らしいと思えるやりがいのある仕事などないのだよ!!」
ウイリーは語気を荒げて四人に訴えかける様に言った。
ウイリー「人類がここまで豊かに暮らせる様になったのは、科学の進歩があったからこそだ。その過程でどれほどの犠牲者が生まれたと思う?新たな発見をする度に様々な障害も生まれた……しかし歴史を紐解いてみるとそれらの障害は、人類の進化を快く思わない頭の悪い連中が悉く邪魔してきたからだ」
ウイリーはレスリー達を指差しながら饒舌に語っていた。
ウイリー「君達はそんな連中とは違う!人類の夢をさらに前に押し進める理解ある選ばれた人間なのだ!だから君達の手には!」
そしてウイリーは一間置いて言い切った。
ウイリー「その伽霊能力があるのだ…!!」
光男「やれやれ…コイツの自然ってモンに対する謙虚さの欠如っぷりには……目眩がするぜ…!!」
ウイリーが光男のこの言葉にハッとして目を向けるとその場にいた全員が光男の方を振り向いた。
ウイリー「………ほう?……君は一体何だね?…見たところ東洋人の様だが?観光にでも来たのかね?」
光男「いや……ただの迷子の無適能者だよ」
ウイリー「無適能者?……ハッ!!…能力も持たない無能な人間が偉そうに私に説教するとでも言うのか!?」
光男「…伽霊能力ってのは……今現在…この世界ではその存在自体が人類の歴史そのものに絶大な影響を与えるシロモノの筈だ……それなのにアンタ達はまるでそれを玩具の様に弄んでいる……」
光男は徐々に距離を詰めていきながら話を続けた。
光男「アンタ達って奴はどいつもこいつも……偶然なんのこっちゃ理解しないまま能力を手に入れただけじゃないか?…自分の意志で!自力で!手に入れた能力じゃないから……そこに対する責任感もまるでゼロだ……自分達の能力が周りに一体どんな影響を与えてしまうのか認識もしないまま、ただ能力の探究を続けている」
ウイリー「何を馬鹿なことを……我々の能力は人類の進化に絶大な影響を与え!様々な不可能を可能にしてきたのだよ!」
まるで皆がその場に凍りついたかの様にジッとウイリーと光男の言葉に耳を傾けていた。光男は刀を左手に持ち、ウイリーにゆっくり歩み寄りながら話を続けた。
光男「“できるか”どうかに執われて、“すべきか”どうかについては一切考えなかったのか?」
ウイリー「……フン!…なんて反進歩的な姿勢なんだ…さすが神に見捨てられた無適能者なだけはある!こりゃ見事だよ!!目の前に発見の糸口があるかもしれないのに!!そこに向かって何の行動も起こさずいるなんてことができるのか??」
光男「発見の何がそんなに偉いんだ?アンタ達がやってきたのは発見の対象を悪戯に弄ぶだけのいわば……自然界への冒涜だよ…」
光男は呆れた様に溜息を吐きながらウイリーを見下した口調で言い捨てた。光男の言葉に怒りで身体をワナワナ震わせたウイリーはゆっくりと伽鍵礼符を取り出した。
ウイリー「………墓場に持っていく遺言はそれで全部か…?生まれ損ないの無適能者め…!!」
光男「俺の剣道の師匠が言っていた言葉をこれから長い牢屋人生を送るであろうアンタに言い残しておいてやるよ……人生は“どこで生まれたか”ではなく“どう育ったか”でしかない……」
ウイリー「それは君の人生の惨めさに対する負け惜しみかな?」
光男「本当に哀れな人だね……俺が伽霊能力を持っていないことが“不幸”だと決め付けている……力の有無は“不便”ではあっても“不幸”とイコールでは結べる訳じゃないんだよ……それに…アンタ自身はどうなんだ?」
ウイリー「何?」
光男「それ程の力を手に入れられた…しかし、結果どうだ?世界はアンタを認めたのか?…アンタの心は本当に幸せで満たされていると言えるのか?」
ウイリー「…幸せかどうかだと…?当たり前だろう!!…このシカゴの都市をこの伽霊能力で支配し富と、地位、そして権力を掴んでいる!!これを幸せと呼ばずして何を幸せと呼ぶ!!」
光男「上っ面だけなら豊かに見えるかもな?しかし、今のアンタのことなんか…ここにいる誰一人認めやしないんだよ」
ウイリー「!?」
光男「組織が違法な人体実験をしていることを世間に公表せず隠すどころか…その実験の存在を世間に伝えようとする人を殺そうとしたり……組織の幹部として都市を統治しなければならない立場の人間が、その裏で非合法な組織と繋がって金儲けをするなんて」
マクシム連合の面々がその言葉にハッとさせられた様に顔を見合わせた。
光男「ここにいる全員が今アンタの本当の正体を知った証人だ」
ウイリー「だったら……」
ウイリーがまたメイスを持ち上げ肩の高さまで上げた。
ウイリー「ここにいる全員秘密を墓に持って行かせるまでだ」
ブオンッ!!!
自分の頭に向かって振り下ろされた巨大メイスを光男は刀袋を斜めに咄嗟に構えて、地面に受け流した。
ドガン!!!
凄まじい怪力で叩きつけたメイスを軽くいなされ体勢を崩してしまったウイリーの顎に光男は刀袋の端を押しつけ顔を無理矢理グイッと上げさせた。
ウイリー「ぐ!?………」
光男「何を驚いてんだ?もしかして…アンタここに来て戦いをするってなってんのに……殺される覚悟も無く武器握ってんじゃねぇだろうな?」
ウイリーを刀で押し飛ばすと、光男は刀袋から漆塗りの藍色の刀を引き抜いた。
光男「戦場で一度武器を手にして相手に向ければ……それは戦闘開始の合図になる……そこには権力も…財力も持ち込めないんだ……」
光男は左手で鞘を握り腰のベルトに差し込んだ。そして右手で柄を握り締め刀を鞘から抜いた。
光男「戦いの場に持ち込めるのはあくまで“己”だけだぜ」
ウイリー「分かった様なこと抜かすじゃねぇか…餓鬼が…!!!」
光男「レスリーさん!!…ルーカスさん!!」
ルーカス「!!?」
レスリー「ッ!!?」
ルーカスとレスリーは名前を呼ばれて我に返った。
光男「ここにいる全員を連れて、早くブルガント団の元に行って下さい!!……ウイリーは俺の獲物だ…!!!……そこにいるマーカス・ジャッジさんは民間人なんで安全な所に避難させて下さい!!」
レスリー「無茶だ!!奴はマクシム連合シカゴ支部のトップにいる適能者なんだぞ!?霊段階10の中適能級の適能者だぞ!!」
光男「コイツが一体誰かなんてどうでもいい…自分の仲間を傷付けても…平気な顔しているこんな奴を俺は絶対許さねぇ…!!」
レスリー「でも…!!」
デイビス「リーダー!!今はとにかくブルガント団の襲撃を止めなければ!!」
部下の一人に止められ、周りの皆の顔を見て意を決した様に叫んだ。
レスリー「全員聞け!!これより!!我々マクシム連合はブルガント団を一斉摘発しシカゴの都市の人々を必ず守り抜く!!税金未納者も関係無く全員だ!!己の目を信じ!!敵と判断したなら即撃ってヨシ!!責任は全て!!このレスリー・コーナーが取るッ!!!」
隊員達「ハッ!!!!」
メリアン「リーダー!私達は!」
ルーカス「何も言うな…俺達も一緒だ!!所属する部署は違えど…共に同じ志を持った仲間の逆境を見過ごすことはできない!!インディアナ支部はこれよりシカゴ支部のレスリー・コーナーを全面的にバックアップし、犯罪集団『ブルガント団』を叩く!!」
メリアン「ハッ!!!」
源太「俺達も手を貸すぜ!!」
竜賀「ああ…でもその前にマーカスさんを安全な所に逃がすのを先にな?」
源太「………そうだね…」
マーカス「俺はとにかく今はエリックを探したい…」
竜賀「分かった…そんじゃ俺達が傍に付いてるから一緒に探しに行こう?」
光男「…決まりだな…」
ウイリー「俺がそれをさせると思うか?お前らは知り過ぎた……全員殺すと言ったはずだ」
光男「それをさせねぇって言ってんだろ……マーカスさん裏口からこの人達を逃がしてくれませんか?」
マーカス「あ、ああ……さぁ!!全員こっちへ来なさい!!こっちから裏口に出て外へ周れる!!」
ウイリー「させるか!!」
ウイリーは一番近くにいた部下に飛びかかろうとしたが目の前に青色の刃が現れ、足を止めた。
ウイリー「……退いてくれ……アイツらが行っちまう…殺さなきゃいけねぇんだよ…一人残らず…」
光男「その前にアンタには……このシカゴの都市に住んでいた全ての人々に…説明しなければいけないことが山ほどある筈だ…!!」
ウイリー「死人に口無しっつってな……そんなもん殺しちまえば関係ねぇんだよ…小僧」
____ローグの裏口から抜け出し、ホテルの反対側の道から竜賀達はマクシム連合のシカゴ支部に向かって走って行った。すると道を松明を持ってゾンビの様にゾロゾロ歩いている集団が見えてきた。
ルーカス「アイツらか…!!」
シャンサ「でも一体どこにあんな大人数隠れていたの!?あんなにいたなら私達のレーダーに引っ掛かってる筈よ!!」
ケネスター「ざっと見積もっても100人は余裕で超えてるよな、あれ…」
竜賀「割と簡単に隠せるでしょ?あれくらい…」
シャンサ「どういう意味!?」
竜賀「だってシカゴ支部のトップがブルガント団のトップと繋がってたんでしょ?だったらシカゴ支部の内部に閉じ込めていても、いつでも出られるってことじゃん……しかも支部の中の牢屋なんて、わざわざレーダーで毎日調べる物好き滅多にいないでしょ…」
レスリー「つまり……シカゴ支部の牢屋が奴らの隠れ家だと言うことか…!?」
源太「灯台下暗しってこのことを言うんだね…」
竜賀「あとは牢屋に入っている人間の人数がちゃんと合っている様に調整しながら、都市に送り出して暴れさせれば良いんだろ?」
デイビス「そんなことが……」
レスリー「しかし、ブルガント団は確認が取れてる人数だけでも数千人は超えているんだぞ!!今あそこにいる人数だけじゃ到底足りていないはずだ!もしかしたら援軍が控えているかも」
竜賀「まぁそんなのそこにいる誰かをとっ捕まえて聞き出しゃ良いんだけどね…」
源太「賛成!!」
源太はそう言うと伽鍵礼符を取り出し能力を発動させると、腕を何メートルも伸ばし集団の最後尾にいたブルガント団員を一人鷲掴みにし手前に一気に引き寄せた。
源太「おりゃ!」
団員「むお!?」
グイン!!
源太「ちょ〜〜っと聞きたいことがあるからしばらく付き合ってくれる?♪」
ルーカス「とりあえず!全員一旦物陰に隠れろ…!!」
団員を捕まえた九人はすぐ近くにあった隠れ易そうな建物に身を隠し、団員が身動き取れないように近くにあったロープで拘束した。
団員「な…何なんだテメェら!!一体どっから!?」
ルーカス「とりあえずこっちが聞きたいことが沢山あるから一つずつ答えていって貰おうか?お前名前は?」
団員「オ…俺はドミノ・メネシス…ブルガント団の一員だ!…俺をこんな目に合わせたらどんなことになるか…」
デイビス「ドミノ・メネシス…?おかしいな?俺は前そんな名前の奴をぶっ倒して牢屋にぶち込んだ経験があるんだが?」
ドミノ「シュ…シュトライダー・デイビス!?な…なぜこんな場所に!?」
ドミノはいきなりさっきまで怒りで赤かった顔を突然真っ青にして冷や汗をかき始めた。何やら思い出したくない悪夢が甦った表情だった。
竜賀「あの〜〜…デイビスさんでしたっけ?…以前会ったことあるんですか?」
デイビス「ん?…ああ……シカゴ美術館を5ヶ月前に襲っていたことのある小物適能者だよ…最期に殺してやろうかと思ったが…ウイリー小…いや!ウイリー・べドナーの奴に止められて留めをさせなかった……今思えば…奴はこの野郎を守ってやがったんだろうな」
竜賀「なるほど…メネシス!…今から聞くことに全て正直に答えろ…そうすればお前はブルガント団の情報の提供者として、我々が必ず保護しよう」
ドミノ「餓鬼が何上から目線で俺に指図してやがる!?」
竜賀「あっそう?…だったら俺達に捕まった時点で組織に用済みになったアンタはこの後ウイリー・べドナーあたりに殺されることになると思うけど…それでも良いならご勝手に〜」
ドミノ「お…おい!!待てよ!!俺以外の誰から情報聞き出すってんだよ!?」
竜賀「いや…何か気が変わったし……アンタはこっちが思ってるような情報持って無さそうだし、他の有力な情報持ってそうな奴をまた捕まえて聞き出すわ」
ドミノ「まっ!!待ってくれ!!さっきは悪かった!!訂正する!!俺はブルガント団の情報全部話すから!!だから俺をこんなとこに置き去りにしないでくれ!!頼む!!」
竜賀「………うっさいバーカ」
そして竜賀がその場を離れようとするとさらに慌てた表情になり必死に竜賀に訴えかけた。
ドミノ「待ってくれ!!この際檻の中でも良い!!このままだとお前の言う様にのリーダーに殺されちまう!!俺を助けてくれ!!必要な情報は全部話すから!!」
ドミノに背中を向けていた竜賀はニヤッとし、後を振り返りながら口を開いた。
竜賀「よし!それじゃあこのルーカスの質問に全部嘘偽りなく正直に答えていきな…もしも言ってることが噛み合ってなかったりしたら容赦なくここに置き去りにするからな…こっちも大急ぎなんだからな?」
ドミノ「わ…分かった!!」
竜賀「それじゃルーカスさん後はお願いしますね?」
ルーカス「ああ……ドミノ…まず、この都市にブルガント団が進出してきたのは一体いつ頃だ?」
ドミノ「6ヶ月前です!」
ルーカス「そんな前から居たのなら、組織は一体どこに潜伏していたんだ?」
ドミノ「マクシム連合シカゴ支部の地下の留置所と繋がっている牢獄みてぇな屋敷だ!ウイリーの奴が密かに作ってくれていたんだ!」
ルーカス「ブルガント団は一体何人いるんだ?今都市に駆り出されているのは何人なんだ?」
ドミノ「全員で228人だ…今外に出ているのは全部で127人!そしてこの都市のライフラインを地下から見張っているのは30人で都市の外から増援のマクシム連合の奴らが来ない様に監視するのに38人で行ってる!」
ルーカス「残り33人はどうした?」
ドミノ「幹部の中の二人が今外に出て…一人は囮になっているがトップのアレックス・ブルガントは側近のソルマン・ノルスタインと一緒に拠点となるシカゴ支部を一気に占拠するつもりだ」
レスリー「馬鹿な!たった33人でどうやって占拠するって言うんだ!?」
ドミノ「聞いてなかったのか…?…シカゴ支部の地下にアジトが繋がっているって言っただろ?」
レスリー「!?」
メリアン「建物の内部から崩しにかかるつもりなの!?」
デイビスはドミノの胸ぐらに掴みかかり、身体を持ち上げながら必死に聞き出そうとした。
デイビス「どこだ!!?一体どこに他の隠し通路がある!!!お前らはそこを通って外まで出れたんだよな!!だったらそこからお前らのアジトに繋がっているはずだろう!!」
ケネスター「落ち着け!!まだコイツから聞かなきゃいけねぇ情報はあるんだ!ここで殺す気か!」
ケネスターはデイビスの手をドミノから引き離し、必死に落ち着けさせようとした。
源太「気になったんだけどさ……お前らブルガント団がこのシカゴに来たのは6ヶ月前で、本格的に活動を開始したのが5ヶ月前だったはずだろう?」
源太は以前助けたメリッサと言う名前の女の子の言葉を思い出して疑問をぶつけてみた。
源太「たった1ヶ月でどうやってアジト作ったんだ?」
ドミノ「ここにブルガント団が来る2週間前くらいにウイリー・べドナーが留置所に隠し扉を作って地下のアジトをせっせと掘ってくれてたらしい…300人以上は余裕で収容できる地下牢付きの巨大アジトを」
竜賀「そこにエリック・ブラックさんがいそうだな…」
マーカス「…!?」
竜賀の言葉にハッとしたマーカスは自分の幼馴染の居場所を竜賀と源太が聞き出してくれたんだと気が付いた。
竜賀「そんで?…そのアジトをブルガント団が来る2週間も前から準備してくれているって…一体ブルガント団のトップとウイリー・べドナーってどんな関係性だったんだ?」
ドミノ「幼馴染だと……大分古い付き合いらしいけど…その関係があってウイリーはアレックス・ブルガントに対する協力を惜しまなかったんじゃねぇか?詳しくは本人達から聞くしかないが…」
竜賀「腐れ縁ってことか…」
ルーカス「それで?お前らはこのシカゴのマクシム連合を支配してどうするのが目的なんだ?」
ドミノ「このシカゴを拠点にアメリカに莫大な経済混乱を引き起こすことだ…」
ルーカス「経済混乱だと…?」
ドミノ「アレックス・ブルガントは模造品を造ることができる適能者で…昔ガーラムって国で偽造通貨を大量に発行したんだ…そしてハイパーインフレを起こしてガーラムを滅ぼしたんだよ」
ルーカス「何だと!!?」
源太「えっ?えっ?…えっ!?何??」
竜賀「何なんですか?そのハイパー…インフレって…?」
ルーカス「数年前…南アメリカにあるガーラムって国の政府が、大量に発行した『ペガ』って自国通貨が出回ったことによって物価が異状までに上がって需要と供給のバランスが崩れてしまった大事件が起きたんだ」
源太「意味が分かんない!何でお金を大量に造ったら、国が滅ぶことになったの?」
メリアン「お金って言うのは適切な量だけ造らなかったら、お金そのものの価値が下がってしまうのよ……」
竜賀「世界に一つしかないレアもののスニーカーと、大量生産されてる誰でも持ってるスニーカーだと、レアもののスニーカーの方が価値が大きいってやつだよ……どれだけ品質の良いスニーカーでも誰もがそのスニーカーを持ってたら、2足目以降は要らないだろう?それが通貨で起きたってことですよね?」
ルーカス「ああ……それによってペガの価値が暴落してしまって、ペガ紙幣がただの紙切れになってしまってたんだ…それによってガーラム政府が国民から信用を失ってしまい国が崩壊したんだ」
メリアン「ガーラム政府は事態を把握しきれないまま、通貨が大量に発行されていたことに気付いてなかったんだけど……まさかそれをやっていたのがブルガント団だったなんて…」
ルーカス「なぜブルガント団はガーラムでそんな真似を…」
ドミノ「実験さ……」
ルーカス「実験だと?」
ドミノ「この偽物の金をばら撒いたら国がどうなるかの社会実験を行っていたのさ……実験結果は見ての通りガーラムはハイパーインフレを起こして国民は物資が不足し失業者が町に溢れ返って、国ではあちこちでテロが起きていた」
レスリー「テメェら今度はそれをこの都市で起こそうって考えてんのか…」
レスリーの声はワナワナと震えていた。顔は怒りで真っ赤になって、今にもドミノに襲い掛かって殺そうと言う表情をしていた。
レスリー「何故だ…」
ドミノ「?」
レスリー「何故この都市なんだ?俺の愛するシカゴの都市でハイパーインフレを起こそうとしてんだ…?ブルガント団は?」
ドミノ「……この都市に復讐する為だとさ…」
竜賀「復讐?…何の為の復讐なんだ?」
ドミノ「差別だよ……無適能者による迫害…そして……適能者の誇りを懸けた、これは“聖戦”だ…」
To Be Continued
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?