見出し画像

書評: 「わかりあえない」を越える

「わかりあえない」を越えるという本を読みました。周りの変化なくして自分だけがこの本に書いてあることを実践すると自分だけ損をする可能性があると感じます。また訳出に少し難しさがあります(例:ゲットーのギャングと対話する → スラム街の〜とするか、Ghetto(ゲトー)と英語を残してほしい)。
一方、本書で提案されているコミュニケーションのスタイルは時代が変われば主流になる可能性が十分ある画期的な本であるというポテンシャルも感じます。以下の著者の主張にピンと来る人には一読の価値あり。

”「判断・決めつけ、恐れ、義務、責務、懲罰・報酬、恥の意識を強いる」などこれまでの教育で植え付けられたコミュニケーションのスタイルを克服しなければならない。 ”

【一言サマリ】

NVC(Non-Violent Communication)という新しいコミュニケーション手法、自分と相手の”ニーズ”に焦点を当てることで異なる正義を持つ対立した両者間でのコミュニケーションを行えるようにする実践方法を提案している本

【要点】

・NVCとは、相手に変化をうながし両者のニーズを満たす均衡点を見出すコミュニケーションで、観察、感情、ニーズ、リクエストの4要素+1で構成される
観察は、判断ははさまず相手の行動を客観的事実として言葉にする
感情は、観察に基づいた事実に対して「私」がどのように感じているか感情を記す
ニーズは、観察に基づいた事実に対して「私」が必要/大切としている価値観を記す
リクエストは、感情とニーズを踏まえ相手に対して肯定的な言葉で提案する
・リクエストを受けてもらえたら、感謝を伝える

【具体的プロセス】

<平和のことばとは?:Speaking Piece>

・What's alive in us? (私たちの反応・縁起)
・What can we do to make our life more wonderful?(より良く生きるために)

<NVCプロセス>

U理論と同じことを基本言っていて、それを対話に落とし込んだもの?

前提
(自分)
非難や批判を交えずに、「自分がどうであるか」を明確に表現する。
(相手)
非難や批判を聞くことなく、「相手がどうであるか」を共感的に受け取る。
観察、感情、ニーズ、リクエストの4STEP

STEP 1 観察の伝達/受取り(共感) - 事実
(自分)『私がOOOを見た/聞いたとき、・・・』
私が観察したこと(評価を交えずに、見たこと、聞いたこと、覚えていること、想像したこと)など、私の幸福に貢献している、あるいは貢献していないことを伝える

(相手)『あなたがOOOを見た/聞いたとき、・・・』
(共感する際には言葉にしないこともあります)
相手が観察したこと(評価を交えずに、見たこと、聞いたこと、覚えていること、想像したこと)など、相手の幸福に貢献している、あるいは貢献していないことを受け取る

STEP2 感情を伝える/受け取る - 反応(縁起) 因-縁-果
(自分) 『私はOOOと感じています』
私が観察したものに関連して、私がどのように感じるか(思考ではなく、感情や感覚)を伝える。

(相手)『あなたはOOOと感じています』
相手が観察したものに関連して、相手がどのように感じているか(思考ではなく感情や感覚)を伝える。

STEP3 ニーズ(大切にしていること・価値観・私の正義)
(自分)『なぜなら(その感情が生じた理由は)、私はOOOを必要としているから/大切だと認識しているからです』
私の感情を引き起こす、私が必要としているもの(大切にしているもの)や価値感(好みや特定の行動ではなく)を伝える

(相手)『なぜなら(その感情が生じた理由は)、あなたはOOOを必要としているから/大切だと認識しているからです』
③相手の感情を引き起こす、相手が必要としているもの(大切にしているもの)や価値感(好みや特定の行動ではなく)を受け取る

STEP4 リクエスト(=対話の試行)
(自分)『OOOをしていただけますか?』
私が相手にしてほしい具体的な行動を伝える。

(相手)『OOOをしてほしいのですか?』
(共感するときは言葉にしないこともある)
相手が私にしてほしい具体的な行動を受け取る。

OUTPUT(結果)
(自分)自分の人生を豊かにするものを、強要せずに、明確にリクエスト(要求)する
(相手)相手の人生を豊かにするものを、強要を聞かず共感的に受け取る

【補足】

STEP2補足:私たちが持つ基本的な「感情」

<ニーズが満たされている時> 喜・楽
感謝(ありがたい)/ 自信 / イキイキとしている / 楽天的(挑戦したい)
/ 周りにシェアできる&貢献したい気持ち

希望(前向きである)/ 充足感/嬉しい / 触発される
好奇心をそそられる / 得意になる / 感心する / 感動する
心地良い / 人を信じられる

(その他、個人的に違う、重複と感じるもの)
びっくりする / ほっとする / ホロリとする
エネルギッシュ / 活性化した / ハッスル / 喜びに満ちた

<ニーズが満たされていない時> 哀・怒
悲観する・悲しい / 無力感 ・打ちのめされる
気が気でない / 気乗りしない
恐れ(ビクビクする) / イライラ(怒り)

寂しい / 失望 / じれったい / 戸惑う
罰が悪い / 腹を立てる / 張り合いがなくなる

(その他、個人的に違う、重複と感じるもの)
困る / 困惑 / 行き詰まる / 懸念/欲求不満

STEP3補足:私たちが持つ基本的なニーズ 
<自分らしくありたい>
自律性がある / 自分の夢・価値観に気づき、それに沿って生きる
知的好奇心を満たす/正直・誠実でありたい / 創造的でありたい
心の安心安全が担保されていてほしい
遊びたい / 楽しくありたい / 笑いたい / 美しさに触れたい

生存に関するニーズ (空気や水 / 衣食住 / 生命の危機(疫病))

<相互依存>
人生を豊かにするために他者に貢献したい
承認されたい
受容・コミュニティー所属
配慮されたい
共感してほしい
自分や他人の人生に貢献すべく力を注ぐ
調和を保ちたい

<相互依存(承認欲求)>
愛されたい / 励ましてほしい / 尊敬されたい
支援してほしい / 信頼されたい / 理解されたい
/ 温かさがほしい

(その他)
自分の夢や、目標、価値観を選ぶ? / 自分の夢や目標、価値観を現実するための計画を選ぶ? / 親密さを持ちたい / スピリチュアルな交流 / 自らの限界から学ぶ力を与えてくれる正直さ / 意味 / 自尊心

【抜粋(ふせん貼ったところ)】

・NVCの実践には、たいへんな正直さと開かれた心が求められる(前提条件)

・NVCの実践には、21世紀初頭に主流の「判断・決めつけ、恐れ、義務、責務、懲罰・報酬、恥の意識を強いる」などこれまでの教育で植え付けられたコミュニケーションのスタイルを克服しなければならない。 

・NVCでは、相手が私に対して取る行動は、相手がその人自身のニーズを満たす上で、相手が考えうる最善の方法をとっているだけであると見ることができれば、自分にとって真の敵などいないことが理解できる

・NVCでは、人は誰もが、相手も含めて、「自身のニーズを満たそうとしているだけである」と理解できれば、それよりも効果的で害の少ない方法があるのだと相手が理解するように支援または提案することができる。 

・NVCでは、全ての行動は、「他者と自分自身の幸福に自らの意志で貢献する」というたった一つの目的のために行われていると考える

・私たちは「自分の内面で何が息づいているか」(「観察」「感情」「ニーズ」)や「何が人生をより素晴らしいするか」(リクエスト)を考えるのでなく、報酬と罰という観点から考えるように教育されてきた

・NVC を構成する要素は四つで、「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」である

観察とは、相手に対する診断・評価を交えず、自分が認知した相手の行動を、そこから自身に生じる「ニーズ」と「感情」を表現できるようにするため、明確かつ具体的な客観的な事実として言葉に落とし込むこと 

・観察の例 「✕:校長は自分だけが地図を備えた人間だと思っていておしゃべりが過ぎる。」「◯:職員会議でどんな議題の時でも校長が自分の経験や子どもに結びつけて話をする」 

ニーズとは、私自身の感情を引き起こしている要因で、私が必要としているもの(大切なもの)や(日頃大切にしている根本的な)価値感を言葉にすること

感情とは、相手が取った行動によって自身が感じている(自分の内面に生じている)感情を理解することであり、相手の行動はその感情を引き出している「原因」ではなく「刺激」であることも理解する

リクエストとは、相手が私からリクエストされている行動を取ることが、今相手が取っている行動よりも相手のニーズをより効果的に満たすことができる他の行動があると理解してもらえるように、「行動を促す肯定形の言葉」で相手に提案すること

・リクエストと強要は違う。相手がこちら側のリクエストに対して異議を唱えたとしても理解してもらえると相手が確信できていることが大切。 こちら側は相手の異議に対しても共感できなければならない

・相手が行動を取ってくれるためには、「誰かのために与えることで得られる喜び」という人間の本質的な喜びにつながるようにリクエスト(提案している行動)がなっている必要がある

・リクエストにあたっては、「パワー・ウィズ」と「パワー・オーバー」の違いの理解が大切。「パワー・オーバー」とは相手を報酬や懲罰を用いて服従させ何かさせること。「パワー・ウィズ」はリクエストに対して相手がみんなの人生を豊かにできるのだという意識を持った上で、自ら進んで行動を起こすこと。(そのためにはこちら側も自分自身のニーズと同じぐらい相手のニーズにも関心を持っていると理解されていることが大切) 

・相手がこちらの望むように行動を変えたならば、それは「その人の動機が今よりも少ない代償で自分のニーズを満たすより良いやり方に気づいたから」であることが、目指す理想の状況である 

・嘆きとは、自分の行動によって満たされなかったニーズに気付き、その行動によって目指そうとしていたニーズに意識的であること。この2つのニーズに 気づきの意識を集中していられたら自尊心を失わずに自分の至らなさから学べるようになる

・4つのフレームワークを言葉に落とすと、観察とは相手がとったあなたが気に入らない行動を判断を含まない言葉に落とし込み、感情とはそれに対してあなたがどう感じているかを言葉にし、ニーズとはあなたの価値観の何が満たされていないかを言葉にすること、リクエストとはニーズを満たす相手の行動を肯定の言葉で伝えること

・感情(相手がなにを感じ)、ニーズ(何を必要としているか、どの価値観がおびやかされているか)は、言葉にされなくても感じ取れる時がある

・こちらが相手を変える目的について頑なにならなければ相手も身構える必要はなくなるし、自分の行動が理解されていると感じたならば、相手は他の可能に対して柔軟になることがはるかに簡単になる。 

・現代社会には決めつけと非難が広がっている。 これは大企業や政府なども含めて、専制的な体制(社会構造)を維持したければ、人々には物事には正しいものと間違っているものがあり、善と悪があり、利己的なものと利他的なものがあると信じ込ませ、その違いを知っているのはヒエラルキーの頂点にいる人たちだと教育すればよい

・ 現在の教育目標は3つだと著者は見ている。1つは将来雇用されたら指示通りの仕事をするように人々に権威への服従を教えること、2つ目は外から得られる報酬のために努力するような人間を作ること、三つ目はカースト制度をいじしつつ、あたかもそれが民主主義であるかのように見せること。

・あらゆる批判、決めつけ、敵のイメージは満たされないニーズの悲劇的で自滅的な表現方法である。称賛や褒め言葉も評価をしているという点で有害である。

・間違った行い、正しい行いという思考を超えたところに(お互いのニーズを一致させることが可能な)野原が広がっている

・社会の変化を促すときに重要なのは同じようなビジョンを持つ人たちとつながること

・必要なリソース(資源)をどのように獲得するかは社会変化を目指す活動にとって極めて重要な課題

・人生の目的は、思いやりのある相互貢献に根ざしている

・相手がとってくれた行動でどれほど自分の人生が豊かになったかを伝えるには、感謝を伝える。感謝とは、三つの要素、1)感謝したい相手の行動は何でその人のどんな行動が自分の人生を豊かにしてくれたかを明確にする、2)相手の行動についてどのような感情が自分の中に生まれ、どう感じているか、3)相手の行動によってどんなニーズが満たされたかを伝えることである

サポートを検討いただきありがとうございます。サポートいただけるとより質の高い創作活動への意欲が高まります。ご支援はモチベーションに変えてアウトプットの質をさらに高めていきたいと考えています