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「Demiちゃんが行く!」#29 写真家 緒方秀美 私小説 "運命の撮影が始まる"

こんにちは、やっとの思いで引き寄せたBlankey Jet Cityの撮影ですが、初っ端から波乱の幕開けでした。

第29話 ”運命の撮影が始まる"

ブランキーのメンバーにはデミの撮影に対する思いは伝わった、だけど彼らは大手レコード会社に所属するミュージシャン、ビジネスとして話しを進めていかないとなと思っているところに知り合いのアートディレクターがある大手出版社の人と仲良しだからレコード会社にプレゼンしてあげると言ってくれた。それまで一人でアプローチしてたけど、やはりアートディレクターや出版社と組んでプレゼンだよね。プレゼン当日はデミがブランキーを撮り出版社から写真集を出版する事で広告にもなりブランキーのCDの販売促進にも繋がるとのプレゼンだった、ブランキーが全国ツアーに出るのでそれに同行して
ドキュメンタリーで撮っていく、撮影経費に関してはレコード会社 アートディレクターの会社 出版社のプロジェクトとして三社が身を削りながら出しいこうと話で
決まった。凄いやっとデミは自分の感性でブランキーを撮れる嬉しくてたまらなかった。
ブランキーの全国ツアーは北海道 札幌から始まる、あと一週間で始まるのに北海道までのチケットはどうなっているんだろうとアートディレクターのオフィスに出向いて尋ねると急に話しが変わってた、「デミちゃんがあれだけ撮りたいといってたブランキーを撮れるようにしてあげたんだよ、経費くらい自分で出して、写真家はインドで作品撮りたい時は自分で行ってるでしょう」デミは驚いた、インドで作品撮る事とは違うだろう、確かに三社が身を削りながらこのプロジェクトを進めていきましょうという仕事として決まったよね。何で急に言う事が違うの?そこに出版社の人がきて「それじゃあフイルム代くらいはうちの会社が出してあげてもいいけどね」とふてぶてしい態度で見下した様に言ってくる。
これが大人の世界か!!デミは凄く悲くてたまらなった。もういい何も言わない。ベンジーとも本気の約束したし、デミはハラを決めた!!こんな嘘ばっか言ってくる様な大人と仕事なんてするもんか!!フィルムでも出してしまったら後で何と言われるか分からない、三社が身を削りながらやっていきましょう~~なんてかっこつけの嘘っぱちだったのか??
三社が身を削るのをデミがひとりで身を削ってもやってやる~~~!!!デミは出版社のフィルム提供を断った。
こんな調子のいい大人と一緒に仕事してられるかよ、デミは純粋にブランキーを撮りたいんだ。絶対にやり通すとベンジーと約束したんだから。
北海道から始まるツアーは札幌から始まり約一週間北海道をまわるデミはエアーチケットと一週間の宿泊代とフィルムTX100本を買って撮影に備えた。
ツアー当日札幌大きなコンサートホールでのライブが終わるとクルー達は東京に帰り、あとはブランキー号という落書きで覆われてるおんぼろハイエースともう一台数人の音響スタッフの車に乗り換えて夜道を走る、次の街に着いてライブしまた走るを繰り返し、途中ふと気がつくと女の子はデミひとり、移動中に温泉をみつけるとみんなで温泉は入るからデミだけひとりフラフラ歩いて近くの小学校の校庭でブランコで時間つぶしていると、みんながデミはどこ行ったと探されてた事もあった。
怒られながらのツアーだったけど楽しかった!
札幌から北海道の一番北まで行き函館に戻り、そこからフェリーで仙台にいく、デミは普段の仕事でスタッフがデミの撮影に集中する事とは違い、ブランキーのライブ中心の世界に自分を消して入っていく事に最初は戸惑った、三人は無口であまり話しもしない、ライブが終わると交代で運転して次の街に行き、リハーサルしてまたライブの繰り返し、一度ライブ終わりに飲みに行った帰りのタクシーで達也さんと一緒になった時に「がんばりや、ここまでくるのに3年かかったやろ、俺はデミがどんな写真を撮るのか楽しみにしてる、ベンジーを撮るんや~~ベンジーや」と酔っ払って言ってくれた。達也さんは普段んは何も言わないけどデミがどんな思いで撮影に挑んでいるかちゃんと分かってくれてた。デミは撮影経費を稼ぎに東京に戻り仕事をし、ツアーで撮った写真を現像プリント、そしてコピー写真集を作った。その間ブランキーはずっとツアーで日本中まわってる、次は名古屋でのライブに行くとデミが作ったコピー写真集をしっかり見てくれてた。
「いいじゃん」一言二言しか話さない無口な人達だけどデミのは応援してくれている。これを撮れっとばかりに動いて自然に演出してくれている事もデミには分かった。毎回作るコピー写真集のグレードは徐々に上がっていくのが嬉しかった。
デミは東京で仕事をし、それでブランキーのツアーに行き写真を撮って現像プリント、コピー写真集作り、これだけのローティションで生活してる他に何もなくてこの一点に集中する生活が楽しくてたまらなかった。もっと撮りたいもっと、ブランキーだけではなくブランキーが不良少年に与える影響、ファンの子達も不良少年が多くバイクでライブに駆けつけてくるファンの様子も撮った、バイクや車好きな世界観、音を聞いて感じるソリッドな風景、まるで架空な都市にいるミュージシャンが音楽を通して不良少年達を目覚めさせていくような、そんな影響力を感じ、その事を一冊の写真集にしようと思ってた。

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