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水ダウの神回から読み解く「創造」のプロセス

はじめに

noteでは自分の好きな本や音楽、その他エンタメコンテンツを読み手にとって少しでも有益になるように紹介していこうと思っていますので、気軽に読んでイイねやフォローしていただけるととっても嬉しいです(^^)

さて今回は、
・最近読んでとても面白いと思った本の紹介
・本の内容と紐づけられる「水曜日のダウンタウンの神回」の解説

をしてみようと思います。

最近読んでとても面白いと思った本の紹介

創造性について研究している太刀川英輔さんが執筆した「進化思考-生き残るコンセプトをつくる変異と適応」という本です。

・新規性のある研究テーマを見つけてください
・これまでにない斬新な発想で新商品を提案してほしい

といったように、学校や職場で「創造性」を発揮するよう求められ茫然自失してしまう場面が皆さんにもありますよね?

本書はそんな掴みどころのない「創造性」を生み出すための具体的なプロセスを「生物の進化」をヒントにわかりやすく解説してくれている良書です。

勉強や仕事・プライベートに至るまで、何かしらのアイディアを生み出す際にとても参考になる内容だと思いますので、是非一度手に取って読んでみてください!

本の内容(要約)

本書はとてもボリュームがあり読みごたえがありますが、キーメッセージを要約すると以下のようにまとめられます。

①「創造」という言葉を私たちはあまり深く考えず口にしているが、「創造するためには何を意識すべきか」については皆よくわかっていない。
②現代の学校教育は「用意されている答え」に辿り着く解法を教えているに過ぎず、創造性を育む教育からは程遠い。創造性教育をアップデートするためにも「創造」を形作る思考プロセスを明らかにしたい。
③自然界の生物は美しい創造性の宝庫であり、生物の進化の過程に「創造」のヒントが隠されているのではないか。生物は「変異」と環境への「適応」を繰り返して進化している。この思考を「創造」に応用できないか。
④すなわち、なぜ生物は「変異」しどのように「適応」するかを探求することによって、「創造」するための思考プロセスの解に近づくのではないか。

例えばバクテリアが食物(栄養)を探す様子を観察してみると、

ランダムに動いて手当たり次第に食物を探す(変異)
⇒食物に遭遇するとランダムに動くのを止めて食物の中を真っ直ぐに動く(適応)
⇒食物の外に出ると再びランダムに動き始める(変異)

というように「変異」「適応」を繰り返していることがわかります。バクテリアはこの単純な作業を繰り返すだけですが、とても効率的に未知の食物に辿り着き、その栄養を享受しています。

水ダウの神回から読み解く創造のプロセス

上記のバクテリアの例からわかる通り、「ランダムに動く不規則性(変異)」「外界の状況を分析することで正解に近づく合理性(適応)」を組み合わせることで「未知のもの」に辿り着けることを自然は示してくれています。そして、この思考プロセスこそ私たちが何かを「創造」する際に大いに参考になる考え方なのではないかと筆者は主張しています。

私もこの筆者の主張に感銘を受け、賛成している立場です。そう思える一つの具体例として、「水曜日のダウンタウン」が2019年に放送した「新元号当てるまで脱出できない生活」という企画があります。(Youtubeでも見れるようですが、動画が消される可能性もあるので有料放送Paraviのリンクを貼っておきます)

ギャラクシー賞を受賞するほど話題を呼んだ企画で、私も放送を見てとても面白かったことを覚えています。ざっくりとした内容は以下の通りです。

・新元号「令和」が発表される前日にお笑いコンビ「ななまがり」を密室に閉じ込め、世間から隔離する(もちろんスマホは没収)。
・2人は新元号を予想し、5分に一度回答する。
・予想した新元号が正解にどの程度近いかを示すランプがツールとして与えられ、2人はランプの光り具合を見ながら正解を予想していく。
・2人は最終的にランプの法則を解明し、回答数921個・総時間約100時間という激闘の末に「令和」に辿り着く。

最初はでたらめに元号を予想していった2人ですが、星の数ほど存在する「漢字2文字」の組み合わせの中から「令和」をピンポイントで出せるわけがなく、ただただ時間だけが過ぎていきます。そこでヒントツールとしてランプを手に入れ、法則を探りながらなんとか答えに辿り着いたわけですが、この一連の流れの中に上述した「変異と適応を繰り返すプロセス」が見事に表れていると私は考えています。

以下、この企画において2人が実践していた「変異と適応を繰り返すプロセス」を記載していきます。

1.時代背景や常識への「適応」
まず2人は少しでも答えに近づくために常識的な観点をもとに新元号を予想しました。すなわち、
・前回の元号は「平成」だったから頭文字は「H」意外だろう
・「昭和」で「和」という文字を使ったから今回は使わないだろう
・不吉な意味を表す「死」や「苦」などは使わないだろう
といったような観点です。

元号は上記のような観点や時代背景を鑑みて決定されるものだと考えるのは自然なことですので、思考プロセスとしては間違っていません。まさに時代背景や常識に「適応」することで効率的に答えに近づこうとする姿勢です。

2.ランダムに回答し続ける「変異」
1で記載したような観点をベースに2人は予想を提示していくわけですが、観点は絞れても答えが絞れるわけではありませんので、しばらくはでたらめに提示することになります。ちなみにこの段階での予想としては「業真」や「来安」等がありました。

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これは、「詰まるところ何が当たりかはわからないのでとにかく数を打ち続ける」というアプローチですので、バクテリアがランダムに動くのと同じく「変異」を起こしていると考えられます。

3.環境への「適応」
しかし、ただただ闇雲に予想し続けても埒が明かないと悟った2人は、ボーナスポイントを貯めてヒントツールであるランプを手に入れます。ランプは「ある法則」に従って光り方が変わるため、2人はその様子を見ながら「どんな回答の時にどんな光り方をするランプなのか」と検証していくことになります。

この「ランプの法則を解明しようとする」というアプローチは、与えられたツール(=環境)の仕組みに合理的に「適応」しようとする姿勢だと考えることができます。

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ランプの光り方の法則についてここで具に明記することは控えますが、「回答に令か和のどちらかの文字が含まれていた場合にめっちゃ光る」という重要な法則が一つ設定されています。すなわち、この法則に気づけるかどうかが答えに辿り着けるかの分かれ目になっているわけです。

4.ビッグバンを起こした「変異」
しかし、そもそも「令か和のどちらかの文字を含む回答を提示する」ということができなければランプが光ることはなく、法則を解明することはできません。そのため2人はまたしばらく、1で上述したような観点(頭文字は「H」以外、「和」は入らない等)に従って回答を打ち続けていきます。

当然、そのような適応的で限定的なアプローチだけでは法則にヒットする回答を出すことはできず、しばらくは停滞する時間が続きます。

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しかし、ここが間違いなくこの企画の一番面白いシーンだと思うのですが、停滞する時間を打破するビックバンが起こります。ちっとも光らないランプに半ば嫌気がさしていた頃合いに、適当に「聡和」という回答を出したところ「和」という文字がクリーンヒットし、ランプが激しく光ったのです!

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過去に元号として使われた文字は採用されないだろうという常識的な観点から序盤に外していた「和」という文字を、図らずも回答に含めたことでとんでもないヒントを得ることに成功したわけです。このシーンは、常識的な観点を考慮する「適応的な考え」に縛られず、一見すると的外れに見える「変異的な考え」を用いることで道が大きく開ける可能性があることを示唆してくれています。

答えに辿り着く感動

このビッグバンを契機として2人は一つずつ法則を解明していき、見事「令和」という正解に辿り着くことができました。

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この「法則の解明⇒正解の導出」という一連のシーンがとても面白いことは言わずもがなですが、このシーンを何度見ても不思議と涙が出てくるのは私だけでしょうか?

今回の企画は「令和」という確固とした答えを2人が如何にして導き出すかを追っているため、その点において単純に「用意された答えに辿り着くという問題解決のプロセス」を描いていると捉えることができます。

しかしながら、2人が「令和」という言葉を「創造」したと考えることもできないでしょうか? その証拠に、2人は「令和」を思いついたときに「うわ、なんかこれっぽい!!」という言葉を残しています。

ここでいう「これっぽい」という言葉は、「用意されている答えっぽい」という意味ではなく、「新元号としてふさわしく思える」という意味で発しているように聞こえるのです。すなわち、921個にわたる解答を通してどんな言葉が新元号として適切かを考え抜いた結果、「令和」というふさわしい2文字を自らの力で「創造」した、それがたまたま政府が用意した言葉と一致していただけだと思えるのです。

2人が苦しみながらも答えを「創造」する=新しいものを世に生み出すという行為をしているからこそ、面白さを超えた感動がそこにあるのではないかと私は考えています。

そして、答えに辿り着くアプローチの仕方が上述した通り「自然界の生物の進化の過程」に則っているため、見ていて「素晴らしい!」「そのやり方で然るべき!」というような畏敬の念が沸き起こってくるのではないかと思うのです。

おわりに

読んでいただきありがとうございます!

今回は、
・最近読んでとても面白いと思った本「進化思考」の紹介
・本の内容と紐づけられる「水曜日のダウンタウンの神回」の解説
をさせていただきました。

どちらも非常に面白い作品ですので、ステイホームの時間を利用して是非楽しんでみてはいかがでしょうか!

また、今後も自分が好きな本や楽曲、エンタメコンテンツを有益な形で紹介していければと思いますので、「いいね」やフォローいただけますととても嬉しいです!

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