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「研修体系づくり」の落とし穴ーメリット、デメリットをよく考える


「研修体系を作ってほしい」という要望

 人事支援をしていると、社員の「研修体系を作って」ほしい、との要望をよく受け、お手伝いをすることがあります。一見良いように思えます。研修体系の構築は、組織の成長と従業員のスキル向上に不可欠な要素のように思えます。

 研修体系の構築は確かに組織の成長と従業員のスキル向上に寄与するでしょう。研修を通じて、従業員が必要なスキルや知識を身に付け、キャリアパスを形成することは重要です。一方、費用と時間の投資、一部の従業員が参加できない場合の不平等感、効果の測定が難しい点もあります。また、研修が業務と乖離(例えば、あまりにもアカデミックすぎるなど)していると、従業員のモチベーションに影響を与える可能性もあります。

 研修体系は組織の伝統や文化を伝える重要な手段でもあります。従業員に組織の価値観やビジョンを理解させることもできるでしょう。ただし、古い方法や考え方に固執しすぎると、時代遅れの情報を伝えかねません。

 方法論の話もあります。オンライン学習やゲーミフィケーションを取り入れることで、従業員の学習意欲を高めることができます。ただ、新しい方法に頼りすぎると、全ての従業員がアクセスできるわけではないため、不公平感を生むことがあります。

 会社の研修とはいえ、従業員の立場も考慮する必要があるでしょう。研修は新しいスキルを学ぶ良い機会だと思いますが、仕事とのバランスを取るのが難しいと感じてしまうことも考えられます。研修が自分のキャリアに直結しているかどうかも重要だと思います。関連性が低いと参加意欲が落ちてしまいます。私自身も、「スキルアップには興味あれど、会社の研修には興味がない」、という方も少なからず出会います。

 研修体系をつくるに当たっても、一旦、メリットとデメリットをよく考える必要があります。以下、例になります。

メリット

  1. スキルと知識の標準化

    • 従業員間で必要なスキルや知識が均一化されるため、業務の品質と効率が向上します。

    • 新入社員や異動者が迅速に職務に適応できるようになります。

  2. キャリアパスの明確化とモチベーション向上

    • 従業員は自分のキャリアパスを理解しやすくなり、将来の目標設定に役立つでしょう。

    • 研修を通じて新しいスキルを身につけることで、従業員の自己実現感が高まります。

  3. 組織の市場・技術への適応力強化

    • 継続的な学習を通じて、組織は市場の変化や技術の進展に迅速に対応できるようになります。

  4. 従業員・組織にニーズギャップの解消

    • 従業員の能力と組織のニーズの間のギャップを効果的に埋めることができます。

デメリット

  1. コストと時間

    • 研修体系の設計、実施、維持には多大な時間とコストがかかります。

    • 効果的な研修を実施するためには専門知識が必要で、外部のトレーナーやリソースの活用が必要になる場合もあります。

  2. 柔軟性の欠如

    • 厳格な研修体系は、従業員個々のニーズや特性を無視する可能性があります。

    • 個々のキャリア目標や学習スタイルに合わせたカスタマイズが困難になることもあります。

  3. 実務との乖離

    • 研修内容が現実の業務とつながらない場合、従業員は学んだことを実践できない可能性があります。

  4. 継続的な評価と更新の必要性

    • 研修体系を常に現代的で関連性のあるものに保つためには、定期的な評価と更新が必要です。

考察・まとめ

 メリット、デメリットを再度考察します。

 研修体系の構築にはメリットがあります。まず、従業員のスキルや知識が組織全体で標準化され、品質が保たれます。また、研修体系は従業員のキャリアパスを明確にし、モチベーションの向上にも繋がります。研修体系はただのスキル向上の手段を超え、革新的な思考や新しい技術への適応を促します。これにより、組織は変化する市場や技術の進歩に迅速に対応できます。研修体系が従業員の能力開発と組織のニーズの間のギャップを埋めるのに役立つということです。それは、従業員の個々の成長と組織の目標達成の両方をサポートします。

 デメリットとしては、研修体系の設計と維持にはコストと時間がかかる点が挙げられます。柔軟性の欠如があります。研修体系が厳格すぎると、個々の従業員のニーズや特性を無視するリスクがあります。適切な研修体系を維持するためには継続的な評価と更新が必要であり、これは非常に時間とリソースを要する作業です。

 従業員からすると、研修体系があることで安心感があり、研修は新しいスキルを学ぶ良い機会ですが、実務に忙しい中で研修に参加するのは大変です。また、実際の業務と研修内容がつながらないこともあります。
 採用の現場でも、「研修体系」に関する質問は相当するあります。新入社員やキャリアチェンジをする人にとっては特に有益です。ただし、研修が形式的で内容が古い場合、時間の無駄に感じることもあるでしょう。

 人材育成、研修の体系作りは非常に重要ではありますが、「何か大切なのか」、「何を優先すべきなのか」を良く考える必要があります。



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