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コミュニケーション法のDESC法とL.E.T.の両者の関係を考察してみる

DESC法とL.E.T.

 DESC法とL.E.T.(リーダー・エフェクティブネス・トレーニング)は、両者とも効果的なコミュニケーションスキルとして使用されることにあります。とはいえ、ここではそれぞれについて、以下にそれぞれの詳細とその関係を詳しく説明します。

DESC法について

 DESC法は、「Describe, Express, Specify, and Consequence(描写、表現、提案、結果)」の略であり、主に次のステップで構成されています。

  1. Describe(描写)
    具体的な行動や状況を客観的に描写する。このステップでは、判断や評価を排除し、観察した事実をそのまま述べます。例えば、「あなたは会議に遅刻した」というように、具体的で客観的な行動を記述します。

  2. Express(表現)
    その行動や状況に対する自分の感情や反応を表現する。このステップでは、自分の感情を正直に伝えます。例えば、「あなたが遅刻すると、私はイライラします」といった具合に、自分の感情を率直に伝えます。

  3. Specify(提案)
    望む行動や結果を具体的に述べる。このステップでは、相手に期待する具体的な行動を明示します。例えば、「次回からは会議に時間通りに来てほしい」といったように、相手に望む行動を具体的に伝えます。

  4. Consequence(結果)
    望む行動が実行された場合とされなかった場合の結果を説明する。このステップでは、行動の結果がどのようになるかを説明します。例えば、「時間通りに来れば、会議がスムーズに進行しますが、遅刻が続くと、プロジェクトに遅れが生じるかもしれません」といった具合に、望ましい行動がもたらす結果と望ましくない行動がもたらす結果を明確に伝えます。

L.E.T.(リーダー・エフェクティブネス・トレーニング)

L.E.T.は、主に以下のようなコミュニケーションスキルを強調しています。

  1. 行動の窓
     「行動の窓」は、相手の行動を「受容領域」と「非受容領域」に分類することで、相手の行動を判断することなく、事実に基づいてコミュニケーションを取るためのツールです。これにより、感情的な反応を避け、客観的な観察に基づいた対話を促進します。

  2. アクティブ・リスニング(A/L)
     A/Lは、相手が話す内容を積極的に聞き、相手の感情や意図を理解し、それを確認する聞き方です。このスキルは、相手が感じていることをそのまま受け入れ、安心感を提供することで、相手が自分の問題を解決する手助けをします。

  3. Iメッセージ(I-M)
    I-Mは、自分の感情やニーズを相手に伝えるための自己表現の方法で、特に対立的な場面でも効果的です。これにより、相手に対する非難を避け、自分の立場や感情を明確に伝えることができます。

  4. メソッドⅢ: メソッドⅢは、双方のニーズを満たす解決策を共に探す話し合いの方法で、対立を建設的に解決するための手法です。この方法では、相手と協力して解決策を見つけるプロセスが重視されます。

 L.E.T.に関する記事は、私もたくさん書いていますので、こちらもご覧下さい。

DESC法とL.E.T.の関係

 DESC法とL.E.T.の共通点は、どちらも明確で効果的なコミュニケーションを目指している点にあります。具体的には以下の通りです。

  • 客観的な描写
     DESC法の「Describe(描写)」は、L.E.T.の「行動の窓」で行動や事実を客観的に捉える方法と共通しています。どちらの方法も、観察した事実をそのまま述べることで、主観的な判断や評価を排除し、客観的な対話を促進します。

  • 感情の表現
     DESC法の「Express(表現)」は、L.E.T.の「Iメッセージ(I-M)」で自分の感情や影響を表現することと対応しています。どちらも、自分の感情や反応を正直に伝えることで、相手に自分の立場を理解してもらうことを目的としています。

  • 具体的な要求
     DESC法の「Specify(提案)」は、L.E.T.のメソッドⅢで具体的な解決策を共に考えるプロセスと似ています。どちらの方法も、具体的な行動を提案することで、問題解決を促進します。

  • 結果の説明
     DESC法の「Consequence(結果)」は、L.E.T.の対立を解く際に使用する方法と類似しています。どちらも、行動の結果を明確に説明することで、相手に理解と納得を促すことを目的としています。

 DESC法とL.E.T.は、両方とも効果的なコミュニケーションを目指しており、相互理解と問題解決を促進するためのツールやスキルを提供します。DESC法は、行動の描写から始まり、感情の表現、具体的な要求、そして結果の説明というステップで構成されており、L.E.T.では行動の窓、アクティブ・リスニング、Iメッセージ、メソッドⅢなどのスキルを通じて、同様の目的を達成します。これらの方法を組み合わせて使用することで、より効果的なコミュニケーションと問題解決が可能になります。

DESC法の「Specify(提案)」は、L.E.T.で使用される対決的Iメッセージ(I-M)と似ていないか


 DESC法の「Specify(指定)」は、確かにL.E.T.で使用される対決的Iメッセージ(I-M)と似た要素があります。以下にそれぞれの詳細とその関係を考えてみます。

DESC法のSpecify(提案)

 DESC法の「Specify(提案)」は、望む行動や結果を具体的に述べるステップです。この段階では、相手に期待する具体的な行動を明示します。例えば、「次回からは会議に時間通りに来てほしい」というように、相手に望む具体的な行動を伝えます。このステップは、相手がどのように行動を変えるべきかを明確にするために重要です。

対決的Iメッセージ(I-M)

 対決的Iメッセージは、自分が受け入れられない相手の行動に対して、その行動が自分にどのように影響を与えているか、そしてその影響によって自分がどのような感情を抱いているかを伝える自己表現の方法です。以下の要素で構成されます。

  1. 行動の描写: 「あなたが会議に遅刻すると」

  2. 影響の説明: 「その結果、会議の進行が遅れて」

  3. 感情の表現: 「私はストレスを感じます」

  4. 望む行動の提案: 「次回からは時間通りに来てくれると助かります」

この例では、対決的Iメッセージは相手に具体的な行動を提案する部分が「Specify(提案)」に該当します。

DESC法のSpecifyと対決的Iメッセージの関係

 DESC法の「Specify(提案)」は、対決的Iメッセージの一部として機能します。両者ともに、相手に望む具体的な行動を伝えることで、問題解決を促進しようとしています。

共通点

  • 具体的な行動の提案
     両者ともに、相手に対して具体的な行動を提案する点が共通しています。これにより、相手がどのように行動を変えるべきかが明確になります。

  • 明確なコミュニケーション
     両者は、明確で具体的なコミュニケーションを通じて、誤解を避けることを目指しています。

違い

  • 感情の表現
     対決的Iメッセージでは、相手の行動によって引き起こされた自分の感情を明確に表現しますが、DESC法の「Specify」にはこの要素が必ずしも含まれていません。

  • 構成要素
     対決的Iメッセージは、行動の描写、影響の説明、感情の表現、望む行動の提案という4つの要素で構成されていますが、DESC法は描写、表現、指定、結果というステップで構成されています。

具体例の比較

DESC法のSpecifyの例

  1. Describe: 「あなたは会議に遅刻しました」

  2. Express: 「私はそれにイライラしています」

  3. Specify: 「次回からは時間通りに来てください」

  4. Consequence: 「そうすれば、会議がスムーズに進行します」

対決的Iメッセージの例

  1. 行動の描写: 「あなたが会議に遅刻すると」

  2. 影響の説明: 「その結果、会議の進行が遅れて」

  3. 感情の表現: 「私はストレスを感じます」

  4. 望む行動の提案: 「次回からは時間通りに来てくれると助かります」

まとめ

 DESC法の「Specify(提案)」は、相手に望む具体的な行動を伝えるという点で、L.E.T.の対決的Iメッセージと似ています。両者ともに、具体的で明確なコミュニケーションを通じて問題解決を図ることを目的としています。違いとしては、対決的Iメッセージが感情の表現を重視する点が挙げられますが、基本的な構造には多くの共通点があります。したがって、「Specify」は対決的Iメッセージの一部として理解することができます。

DESC法における、Specify(提案)は、Youメッセージの要素を含むのではないか

 「望む行動の提案」は確かにYouメッセージの要素を含むことがあります。Youメッセージは、相手に指示や命令をする形でメッセージを伝えるもので、相手の行動に焦点を当てているため、相手がどうすべきかを示唆することになります。

 一方、対決的Iメッセージ(I-M)は、自分の感情やニーズに焦点を当てるもので、相手に対して指示を出すのではなく、自分の状況や感情を伝えることを重視します。以下に、これらの違いとそれぞれの例を詳しく説明します。

Youメッセージ

 Youメッセージは、相手に対して指示を出したり、相手の行動を評価したりする表現方法です。これは、相手に対する要求や非難と受け取られることが多く、抵抗感を引き起こしやすいです。以下が例です。

  • 「あなたは会議に遅刻している。次回から時間通りに来てください。」

  • 「あなたはちゃんと準備していない。」

対決的Iメッセージ(I-M)

 対決的Iメッセージは、自分の感情やニーズを主体として表現する方法です。これにより、相手を非難するのではなく、自分がその行動によってどのように感じているか、どのような影響を受けているかを伝えることができます。例えば、以下の通りです。

  • 「あなたが会議に遅刻すると、私は会議の進行が遅れるのでストレスを感じます。時間通りに来てもらえると助かります。」

  • 「あなたが準備をしていないと、私たちの進行が遅れるので不安になります。次回は準備をしてきてほしいです。」

Specify(指定)の位置づけ

 DESC法の「Specify(提案)」は、望む行動を具体的に伝えるステップです。この点でYouメッセージのように見えることがありますが、重要なのはその前の「Describe(描写)」と「Express(表現)」が適切に行われているかどうかです。これにより、Specify部分がYouメッセージの命令形としてではなく、Iメッセージの一部として機能するかが決まります。

例の比較

Youメッセージの例

「あなたはいつも遅刻する。時間通りに来るべきだ。」

対決的Iメッセージの例

「あなたが遅刻すると、私は会議が遅れてストレスを感じます。時間通りに来てもらえると助かります。」

DESC法の例

  1. Describe: 「あなたは会議に遅刻しました。」

  2. Express: 「そのため、私はイライラしています。」

  3. Specify: 「次回から時間通りに来てください。」

  4. Consequence: 「そうすれば、会議がスムーズに進行します。」

YouメッセージとIメッセージの違い

  • Youメッセージは相手の行動に焦点を当て、指示や評価を行います。これにより、相手は非難されていると感じることが多いです。

  • Iメッセージは自分の感情やニーズに焦点を当て、自分の状況や影響を説明します。これにより、相手は自分が非難されていると感じることなく、状況を理解しやすくなります。

考察

 DESC法の「Specify(提案)」は、一見するとYouメッセージのように見えるかもしれませんが、その前のステップである「Describe(描写)」と「Express(表現)」が適切に行われることを前提として、対決的Iメッセージの一部として機能することができます。
 これにより、望む行動の提案が単なる指示や命令ではなく、相手との建設的なコミュニケーションの一部となります。重要なのは、自分の感情やニーズを明確に伝えつつ、相手に対して具体的な行動を提案することで、より効果的なコミュニケーションが図れる点でしょう。

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