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【書籍】大杉潤氏に学ぶ、定年ひとり起業で実現する安心と充実ーTHE21より

 The21 2024年9月号は、「老後のお金「これで安心!」講座」でした。その中で、大杉潤さんの「好きなことで働き続ける「定年ひとり起業」のススメ」(p25)は興味深く、大変参考になりました。

 この記事では、大杉潤氏が提唱する「定年ひとり起業」の魅力、その具体的な成功のためのステップ、そしてそれを実践する際の重要なポイントについて、詳細かつ包括的に解説されています。大杉氏は長年にわたって金融機関でのキャリアを築いてきました。日本興業銀行や新銀行東京など、いくつかの金融機関で働き、その経験を積んだ後、2015年に独立して起業しました。彼の経歴は非常に多岐にわたり、これらの経験から得た知識とノウハウをもとに、多くの人々に「定年ひとり起業」の魅力を伝えています。

 ポイントを取り上げ、考察したいと思います。

日本社会の高齢化と働き方の変化

 日本社会において、高齢化が進行する中で、多くの人が70歳を超えても働き続けることが一般的になりつつある現状を背景に、大杉氏は「定年ひとり起業」の重要性を強調しています。現在、日本では65歳から69歳の人口の約半数が何らかの形で働いているとされており、70歳まで働くことがもはや特別なことではなく、むしろ標準的なキャリアパスの一環として考えられるようになってきています。これは、長寿社会における新たな課題と機会を反映しており、より多くの人々が、定年後も引き続き労働市場に参入し、自己実現を追求することが可能になっているのです。

 しかし、長く働くことが求められる一方で、従来の「雇われて働く」スタイルだけでは、老後の不安や問題を完全に解消することは難しいとされています。特に、定年後の「お金」「孤独」「健康」に関する3つの大きな不安が、多くの人々にとって重大な問題となっており、これらをどのように克服するかが重要なテーマとなっています。大杉氏は、この3つの不安を同時に解決するための一つの有効なアプローチとして、「定年ひとり起業」という選択肢を提示しています。

定年ひとり起業のメリットとその具体的な効果

 大杉氏によれば、「定年ひとり起業」は、「お金」「孤独」「健康」という老後の3大不安を一挙に解決できる魅力的な働き方です。具体的には、まず年金に加えて定期的な収入を得ることで、「お金の不安」を大幅に軽減することができます。また、起業によって、仕事を通じて新しい人間関係を築き、社会とのつながりを持ち続けることで、「孤独の不安」も解消されます。さらに、仕事を続けることによって、日々の生活に規則正しいリズムと適度な緊張感を持たせることができるため、「健康の不安」に対しても有効な対策となります。

 こうしたメリットを享受するためには、「定年ひとり起業」を成功させるための具体的な戦略やステップを理解し、実践することが重要です。大杉氏は、自らの経験をもとに、「定年ひとり起業」の成功にはいくつかの重要な要素があると述べています。

定年ひとり起業を成功させるための5原則

 大杉氏が提唱する「定年ひとり起業」の成功のための5つの原則は、非常に具体的で実践的なものです。

  1. 長いキャリアを活かした独立
     まず、長年にわたり会社員や公務員として培ってきた経験やスキルを活かし、50代から60代のタイミングで独立することが重要です。これにより、安定した収入基盤を持ちながら、独立に向けた準備を進めることができます。この段階では、今までのキャリアを振り返り、どのような強みを持っているかを再確認することが求められます。

  2. 一人または夫婦での事業運営
     次に、事業を始める際には、夫婦または一人で運営することが推奨されています。これにより、共同経営によるトラブルや、従業員を雇うことによるリスクを避けることができ、柔軟かつ効率的な事業運営が可能になります。特に、夫婦で事業を行う場合、お互いの強みを活かしながら協力し合うことが、事業の成功につながります。

  3. 初期費用を抑えたスタート
     起業時の初期費用を極力抑えることも、リスクを最小限にするためには欠かせません。事務所を構えることや、人を雇うことは避け、できるだけ自宅での運営やオンラインを活用するなど、低コストでスタートすることが重要です。また、借金をしないことも大切であり、自己資金で始めることが望ましいとされています。

  4. 小規模からのスタート
     月に5万から10万円程度の収入を目指すスモールビジネスからスタートすることが推奨されています。大きな利益を追求するよりも、まずは安定した収入源を確保することが重要であり、そこから徐々にビジネスを拡大していくことが望ましいとされています。この段階で無理に事業を拡大しようとせず、自分のペースで進めることが成功の鍵となります。

  5. 好きなことを仕事にする
     最後に、最も重要なポイントとして「好きなことを仕事にする」ことが挙げられています。これは、起業において非常に重要な要素であり、好きなことであれば、たとえ結果がすぐに出なくても続けやすいとされています。大杉氏自身も、ビジネス書の読書が好きで、その知識を活かしてブログを始めましたが、読まれるようになるまでには3年かかったと述べています。しかし、好きなことを続けることで、結果的には多くの読者を獲得し、それが出版や研修にもつながったとしています。

トリプルキャリアの提案と「好きなこと」を仕事にするための具体的な方法

 大杉氏はまた、定年後のキャリアを豊かにするために「トリプルキャリア」という考え方を提唱しています。これは、人生を3つのキャリア段階に分け、それぞれの段階で異なる働き方を取り入れるというものです。

  1. ファーストキャリア
     まず、会社員としての「ファーストキャリア」を築きます。この段階では、組織の一員として働き、スキルや経験を積み重ねることが重要です。

  2. セカンドキャリア
     次に、個人事業主としての「セカンドキャリア」に移行します。この段階では、雇われない働き方を選び、自分のスキルや経験を活かして独立することが求められます。

  3. サードキャリア
     最終的には、ライフワークとしての「サードキャリア」を実現します。この段階では、自分が本当にやりたいこと、ライフワークとして追求したいことを仕事にすることを目指します。

 この「トリプルキャリア」の考え方を採用することで、長く楽しく働き続けることが可能になります。また、「サードキャリア」を事前に決めておくことで、それに向けた準備を「ファーストキャリア」や「セカンドキャリア」で進めることができ、結果的には「好きなことを仕事にする」という目標に向かってぶれることなく進むことができます。

 さらに、自分の「好きなこと」を仕事にするためには、まず自分の人生を振り返り、好きなことや得意なことを見つけ出すことが重要です。大杉氏は、自身の例として「ビジネス書」「財務スキル」「ブログ」「ハワイ」という4つの要素を組み合わせて、起業後の新たな仕事を発想したと述べています。このように、自分の「好き」や「得意」を掛け合わせることで、収入の複線化を図り、安定したビジネスを構築することが可能です。

情報発信の重要性とインプットの必要性

 大杉氏はまた、自分の好きなことや得意なことが見えてきたら、次に取り組むべきは情報発信であると強調しています。ブログやSNSを通じて、自分の知識や経験を広く発信することがビジネスの成功につながると述べています。どんなに良いアイデアやサービスがあっても、それを他人に知られなければビジネスとして成り立たないため、発信力は極めて重要です。

 しかし、情報発信を続けるためには、継続的なインプットが必要です。趣味や仕事として行っているだけでは、自分の視点に偏った情報しか得られないため、アウトプットがすぐに枯渇してしまいます。したがって、幅広い視点からのインプットを心がけることが大切であり、それが専門家としての信頼性を高めることにつながると述べています。

 大杉氏は、自らの経験を通じて、情報発信とインプットのバランスを保つことが、起業において成功するための鍵であると強調しています。例えば、彼自身がビジネス書を読み、それをブログで紹介するという活動を続ける中で、読者からのフィードバックや新たな知識を得ることができ、それがさらなる情報発信の原動力となっていると述べています。このように、インプットとアウトプットのサイクルを繰り返すことで、ビジネスが徐々に発展していくのです。

定年ひとり起業のさらなる可能性と未来

 大杉氏は「定年ひとり起業」が老後の不安を解消し、豊かな人生を送るための有力な選択肢であると強調しています。好きなことを仕事にし、それを長く続けることで、定年後も充実した生活を送ることができると述べています。また、情報発信やインプットの重要性を強調し、常に学び続ける姿勢が成功への鍵であるとしています。

 「定年ひとり起業」は、単なるビジネスの選択肢にとどまらず、人生100年時代における新しいライフスタイルの提案でもあります。大杉氏の経験と知識をもとに、多くの人々がこの考え方を取り入れ、自分らしい働き方を実現することで、より充実した人生を送ることができるでしょう。また、この「定年ひとり起業」というコンセプトは、これからの日本社会において、ますます重要な役割を果たすことが期待されています。

 大杉氏が提唱する「定年ひとり起業」は、単なる起業の手法ではなく、長寿社会における新しい働き方のモデルとして、多くの人々にとって大いに参考になるものであり、今後の日本社会においても、その価値が広く認識されることが期待されています。この働き方を選ぶことで、老後の不安を軽減し、人生の最終章を豊かに生きるための一つの手段として、多くの人々に受け入れられていくことでしょう。

 私自身もスタートをまさにスタートを切ったところではありますが、継続していきたいと思います。


定年後に「ひとり起業」を始める姿を描いたシーンを表現しています。落ち着いた雰囲気と自然光が差し込む空間が、充実した時間を感じさせます。このイメージもまた、老後の新しい働き方の魅力を伝えています。


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