ムダに教養がつくかも知れない不定期な雑学講座の連載（講義中は寝ないこと）～世界宗教の基礎知識３「キリスト教」をひもとく 第２講 「旧約聖書」の世界 その３

人類初の殺人事件

　アダムの妻エヴァは、
カインとアベルという二人の兄弟を産みました。
そして、兄のカインは「土を耕すもの」になり、
弟のアベルは「羊を飼うもの」となりました。

  ある日、二人は神に捧げ物をすることになりました。
カインは「土からの実り」
そしてアベルは「羊の初子の中から最良のもの」を捧げました。

すると、神はアベルの捧げた羊をいたく気に入り、
カインの捧げ物には目もくれませんでした。
カインは憤り、顔を伏せたのです。

すると神は、

「なぜ憤り顔を伏せるのか、
自分が正しいと思うのであれば顔ををあげるがよかろう。
もし、そうでなければ罪が待ち伏せている。
それはおまえを誘惑するであろう。
それはおまえ自身が治めなさい。」

と、神は考えようによっては
カインを「試す」ような示唆をしました。
　
ところがカインは、弟のアベルを野原に誘い出し、
そこでアベルにたちかかり、殺してしまいました。
そのあと、神がカインにアベルの行方を尋ねたとき、
「知らない、自分は弟の番人ではない。」
としらばっくれるのです。

　しかし、全能の神はそんなことはお見通しなのです。
つまりここで、カインは自分の親と同じ「罪」を犯したのです。

　ですから神は、カインにこう言い渡します。

「おまえはこのことで呪われる身になった。
弟の血を口を開けて飲み込んだ土よりも、
さらに呪われる身になったのだ。
もはや土を耕したとして、
土がおまえの作物を実らせることはないであろう。
すなわちおまえは地上の放浪者となるのだ。」

　と、身もふたもない罰を与えたのです。
かくしてカインは神のもとを去り、
放浪者となるのですが、カインは神に言います。

「放浪者となった罰は、わたしには負いきれません。
なぜならわたしを見つけた人は、
その罪ゆえに誰もがわたしを殺すからです。」

　それに答えて神はこう言います。

「そうではない、誰であろうとカインを殺すものは、
その7倍の復讐を受けるであろう」
といって、一つの印をカインに与えました。

　こうしてカインは神の前を去り、
エデンの東にあるノドの地に住んだのです。

　さて、ここで一つのミステリーがあります。
　それは、「神がなぜえこひいきしたんか？」

　という謎です。聖書にはその理由が全く書かれてないからです。
ですから、この解釈をめぐって、いろいろな説が飛び交うのです。

ノアの方舟

旧約聖書では、そもそもアダムとエヴァが
「神の言いつけを破った」という原罪ゆえに、
その子孫もたびたび愚かな行いをし、
そのたんびに神の怒りに触れる。
というトホホな展開が源流に流れていると言えるのです。

すなわち、人は罪深く、愚かで、どうしようもない存在なのだ。
ということを繰り返し述べ、
その度に「神による罰」が与えられるというシナリオになっています。
これがいわゆる「原罪」というものです。

　そういう、セコい「人の業」に対して神はとうとうブチ切れた。
というのが創世記における「ノアの方舟」のくだりです。

神は、人類の堕落を嘆き、

「すべての人を地上からぬぐい去ろう、
人も獣もそして地をはうものも、空の鳥までも
わたしはこれを創ったことを悔いる」

　と、「リセットボタンを押すよ!」と宣言したんです。

　その時、カインの末裔のレメクの子とも、
アベルの代わりに生まれたセトの子とも記される
ノアという人物が登場します。

　まぁ。この辺あたりだと
登場人物の年齢が500歳とか900歳とか、
妻が産んだのかその人が生んだのか、
むちゃくちゃですから、細かいのは割愛して、
「ノア」という一人の人類の子孫。
という設定にします。

　とにかく「人類」にぶち切れた神は、
まるで坂本龍馬みたいに「この世の大洗濯」をします。
と決定しました。
ほんとにどうしようもない奴らを創っちゃったから、
オールリセットするよ。というノリですね。

しかし、その中でノアだけが、
その乱れた世の中で唯一正しく、
かつ人格に優れた人だったとされています。
だから、ノアに告げたのです。

「おまえは糸杉の木で方舟を作り、
一家八人と、すべての動物のひとつがいを乗せて、
その方舟にて洪水を乗り切れ」。

といいました。つまり神は、ノアが作った方舟に乗せた以外の、
一切の生物を滅ぼすので、
それまで方舟に乗っていろというのです。

さて、神の言うとおり洪水は40日に渡ってつづきました。
そして、地上に生きるものはすべて死に絶えたのです。
そして、水は150日間引くことはなかったのです。

というところで、創世記の第8章が終わります。
ここでの大きなメッセージは、
「あなた方は神に選ばれた命である。」
という事です