『ネオンサインと朝日』第4話
どうも、最近夏バテすぎてそうめんと豆腐ばかり食べている女子みたいな食生活のアラサー男子、上神です。絹ごし豆腐が好きです。
さて、今日は小説『ネオンサインと朝日』の第4話をアップします。
個人的には脚本をアップしたいのですが、小説の方が割と評判が良いので、今回も小説を書きました。(すぐに媚びる)
▼前回の第3話はコチラ
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『ネオンサインと朝日』第4話
「一刻も早く、昨日の記憶を取り戻したい…」
昨日の深夜、バーテンダーの僕はお店で誕生日を迎えたが、なぜか記憶喪失になっていた。
一年に一度の貴重な誕生日に、記憶喪失になってしまう人がかつていただろうか。
朝、目が覚めたら、お店のソファで寝ていた自分がいた。オマケのように後頭部に謎の痛みもあった。
昨日、何があったのか、なぜ記憶がなくなったのかを知るために、お昼頃、大学キャンパス内のベンチに座っていた僕は同僚の夏生に電話をすることにした。
夏生はいわゆる草食男子の塊みたいな穏やかな性格でイイ奴だったが、如何せん仕事ができない。
空気を読めずお客さんに何度も怒られるわ、寝坊して遅刻するわ、業務上のケアレスミスは多いわ、と仕事のクオリティは最悪だった。
そのお店では僕の方が1年先輩だが、年齢は僕より4つ上だったから、厳しく注意できない自分にモヤモヤしていた。
でも、僕よりも年齢が上なのに偉そうにしないイイ奴だからあまり憎めない奴だった。
僕の好きなタイプのお客さんに手を出したことを聞いた時は、狂ったようにキレそうになったが。
そんな夏生に電話をしたが、繋がらなかった。
それはそうだ、昼間は彼の充電期間中。
こっちは大学で授業を受けているのに、ヤツは家でぐっすり眠っている。
「俺はいつ充電すればいいんだ、誰か充電してほしい……」
大学で自分本体の電池が切れそうな僕の元に、珍しく昼間に夏生から折り返しの電話が。
「もしもし」
「あ、もしもし。ごめん、昨日俺潰れてたよね」
「うん、それは大丈夫なんだけど、ちょっと大丈夫じゃないこともあってさ…」
「え?」
「昨日、ジョーさんにボコボコに殴られたの覚えてない…?」
「え?俺が殴られた?」
ジョーさんというのは、僕の15個以上先輩の違うお店のオーナーさん。
僕が働いているお店のオーナーとも仲が良く、しかもオーナーよりも先輩なので、僕にとっては大先輩みたいな存在。
気前が良く、よく奢ってくれる人だったが、自分が違うと思ったら鬼のように説教をするような、まさに「ザ・昭和のノリ」みたいな人だった。
そのジョーさんにボコボコに殴られた、俺が?
一体、なぜ?
動揺が隠し切れない僕はすぐにナツに質問した。
「え?いや、何で?」
「やっぱりアノこと覚えてないんだ…」
「……」
え、コワイ怖いこわい……
意味深な感じで話すな、このヤロー。
俺のタイプだった子を食ったことは一生忘れないからな、このヤロー。
「……お、俺、何かやらかした?」
「やらかしたって言っていいのか分からないけど、昨日2時頃に潰れたの覚えてない?」
「え、2時?そんな早くに潰れたの俺」
「飲めません!って言って、シャンパンを頭からかけた後に」
「あ、それはちょっと覚えてるかも……」
なるほど、早い時間の浴びるような量のシャンパンのせいで記憶がなくなったのか。
普段、シャンパンなんか飲まないから余計に記憶がとんでいってしまったのだろう。
しかもお客さんからもらったシャンパンを頭からかけるという大失態を起こすレベル。
今思えば、確かに服からシャンパンの甘い匂いがする。
「その後さ、裏で休憩するって言って、なかなか起きてこなくてさ。それで4時頃かな、ジョーさんたちが来てさ」
「それはマジで覚えてないわ」
「アイツ、起こしてこいって言われたからさ、潰れてしまって全然起きませんって言ったら、じゃあ俺が起こしてやるわ、って裏に行ってさ。それで数分経って裏見たらボコボコにされててさ」
「……」
僕は思わず言葉が出なかった。
この後頭部の痛みがまさか大先輩からの暴力だったとは。
その驚きもあったが、今の時代、人を殴って起こす人がいることも衝撃的だった。
そもそも、これって訴えたら勝てる案件じゃないのか。
実際に後頭部に傷が残ってるし。殴られた証拠がバッチリある。第三者の目撃情報もある。
ただ、一つ問題点がある。
それは、被害者の僕が記憶喪失だということだ。
『自分が他人に殴られたこと』を第三者から聞いて初めてその事実を知ったのだ。
訴えようにも、自分が被害者であるという実感が湧いてこない。
正直、怒りよりも驚きの方が上回ったが、こんなことがあっていいのか。
「お酒の場は無礼講」とよく聞くが、こんなことは許されてもいいのか。
よくパワハラやセクハラがお酒の席であるが、これをパワハラとは呼ばないのか。
確かに大先輩がわざわざ僕の誕生日をお祝いしに来てくれたのに、酔って潰れてしまったのは、完全に僕の失態だ。
でも、だからといってこの暴力は許されるのだろうか。
このズキズキした後頭部の痛みが段々と心の痛みに変化していっているような、そんな気がした。
夏生が続ける。
「もしもし、聞いてる?」
「あ、うん、聞いてるよ」
「で、大丈夫?めっちゃ殴られてたけど」
「いや、今も正直めっちゃ痛い」
「そっか…。あ、それでジンさんから電話があってさ」
「うん」
「ジョーさんに直接謝りに行けってさ、ジンさんが」
「え、俺が?」
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ここで、第4話が終了です。
基本的にノンフィクション(事実)を脚色していますが、登場人物の名前は、実在の人物とは関係がありません。
来週は最終回?の第5話です!お楽しみに〜
画像引用:FSK(https://www.photo-ac.com/profile/653879)さんによる写真ACからの写真
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