『ネオンサインと朝日』 第3話
どうも、最近カープが強すぎて鬼のように嫉妬している巨人ファン歴19年の上神です。
毎週、月曜日のnote配信でしたが、先週サボってしまい、小さな罪悪感を覚えながらも、「あれ?今日の配信は?」と誰からも質問されない、この切なさ……(苦笑)
とりあえず、今週もnoteの更新やりあげました。サクッと読めるので暇な時間にどうぞ。
(今週はノンフィクション小説の第3話!)
▼前回の第2話はコチラ
▼第1話から読みたい方はコチラ
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『ネオンサインと朝日』 第3話
二日酔いから少しお酒が抜けたお昼前。
授業中、大学生の僕はトイレで用を足した後、洗面所で携帯を見ていた時、ふとある疑問が思い浮かんだ。
「あれ?これって、もしかして……」
その後、昼休みになったため、大学構内のベンチに座ってボーッと遠くの方を眺めていた。
一人の男友達が僕に声をかけた。
「よぉ、今日も相変わらず二日酔い?」
「うん、毎日が二日酔いですよ……」
「隣いい?」
「もちろん」
隣に友達が座る。持っていた缶コーヒーを飲みながら、こう話しかける。
「そういえば、今日誕生日だっけ?Facebookで見たけど」
「うん、何かおごってよ」
「気が向いたらな。このコーヒーいる?」
「いや、コーヒー飲める余裕がないわ」
「誕生日なのにそんなに辛そうなんだな」
「まぁね……」
「あ、授業始まるから俺は行くわ、じゃあな、あんまり飲み過ぎるなよ」
「おう」
ベンチでひとりになった瞬間、昨夜の出来事を振り返りながら、また遠くの方を眺めるーー
昨夜、自分が働いている街中のとあるバーで自分の誕生日を迎えた。
酔っ払いレベルが最高潮に達し、昨日の記憶がほとんどないという大失態。しかもなぜか後頭部にも謎の痛みが残っている。
断片的な記憶はあるが、何を飲んだのかも、何を喋ったのかも、誰がお店に来たのかも、かなり曖昧だ。
まさか自分が生まれたおめでたい日に”一日限定の記憶喪失”になるとは想像もしていなかった。
起きたらお店のソファに寝ていたため、お客さんとの”接触事故”は恐らくなかっただろうとは理解できる。ないと信じたいだけなのかもしれないが。
「とりあえず、昨日の記憶をどうにか取り戻したい…」
そう、まずは何よりも昨日の記憶だ。
目が半分も開いていない二日酔いの僕は、ギリギリ日本語が読めるレベルで、その場でひとまずLINEを確認することにした。
確認すると朝、6時頃のLINEが最後の受信となっていた。
「今、どんな状態?」と、お店のオーナーからの連絡だった。
お店を閉めたことの報告を忘れていたのも大失態だが、それよりまずは記憶を取り戻さなければ。
お店のセキュリティも自分のセキュリティもガバガバなことは置いといて。
その最後の連絡よりも前に遡ってみようとすると、”あるやり取り”に目が止まった。そして少し酔いが覚めた。
「明日、(休日なのに)お店に入っていることになってるけど、学校大丈夫なんか?」
「明日は僕の誕生日で予約があるので、入ります」
「ちゃんと営業したんか?」
そう、僕がこのお店を辞めようと決断した、この一連のやり取り。
僕は部下である自分の誕生日をすっかり忘れているオーナーに、
自分の誕生日をただの金儲けの道具としか思っていないようなオーナーに、「おめでとう」のその一言もないオーナーに、すっかり嫌悪感を抱いてしまったからだ。
しかし、このやり取りをまた改めて見直した所、一つの疑問が生まれた。
「あれ?これってもしかして……」
「俺の伝え方が間違った……?」
オーナーは「明日、お店に入っていることになってるけど、学校大丈夫なんか?」と質問した。
僕は「人の誕生日を忘れやがって……」と、苛立ちを隠しながら、「明日は僕の誕生日で予約があるので、入ります」と素っ気なく返信した。
が、そもそも、クエスチョンとアンサーの内容が噛み合ってないことに気付く。
向こうは、「学校あるのに大丈夫なんか?」と質問したのに、自分は「誕生日だからお店に入る」と答えた。
つまり、明日が大丈夫かどうかについては僕は何も触れていない。
そう、考えようによっては、オーナーは僕をわざわざ心配してくれて、気を遣ってくれて、この連絡をしたとも取れる。
もしかしたら、僕が「明日は僕の誕生日で予約があるので、入ります」と返信したために、『授業はあるけど大丈夫』という前提となり「営業したんか?」と業務連絡になったのではないか。
正直、その返信を見た直後、僕は心のどこかでこう思っていた。
「いや、本当は学校あるのに大丈夫なわけないだろ、誕生日だから強制的に入らないといけないんだよ、それぐらい察してくれ」と。
しかし、向こうはわざわざ「学校大丈夫か?」と聞いてきた。
もしかすると、向こうは「大丈夫ではないです」もしくは「大丈夫かは分かりませんが、頑張ります」このような答えが返ってくると予想したのではないか。
しかし、僕は自分の伝えたいことだけ伝えてしまった。
いや、もっといえば、自分の本音を包み隠して、スムーズに事が進むように対応した。
会話のキャッチボールが全く成立していないのに、僕はゲームの進行がスムーズになるように事を進めた。
過去を思い返してみると、僕はいつもそうだった。
上司に連絡をする時、目上の人に連絡をする時、「仕事の業務連絡だから」と本心を隠しながら連絡を返してしまう。
実際に会った時に話す時も、どうやったらその場がうまく回るかを優先してしまい、本音が言えないことも多かった。
かしこまった感じで、”ちゃんとしている風”に返してしまい、その場を上手くやり過ごすことにコミットする。
絵文字を使ってはいけない、そんなことは当然だ。
ビジネスだから暗い感じになるのは当たり前、そんなことも分かってる。
でも、その場の空気を読もうとしすぎた結果、自分が相手に伝えたいことを伝えきれず、相手が自分に伝えたいことを理解できず、ギクシャクしてしまう。
自分は今まで、空気を読むことによって相手とのコミュニケーションが上手くいくと思っていたが、違っていた。
時には空気を読むことも重要な場合はあるだろう。
でも、周りの空気を読む『受信力(理解力)』と同じように、相手の伝えたいことを本質的に理解し、どうすれば自分の本心が上手く伝わるか、という『発信力』も重要なのではないか。
そう考えれば、一概にオーナーを責めることができない自分がいた。
「でも今までの積み重ねもあるし、お店を辞めたいと思ったことは事実。どうしようか……」
そう思い悩んでいた時、同じバーで働いている同僚から電話連絡が来た。
「もしもし」
「あ、もしもし。ごめん、昨日俺潰れてたよね」
「うん、それは大丈夫なんだけど、ちょっと大丈夫じゃないこともあってさ…」
「え?」
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第3話は終了です。
「今日の配信は?」と聞かれるように来週も頑張ります。
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画像引用: 中村 昌寛さん(https://www.photo-ac.com/profile/532879)の写真AC(https://www.photo-ac.com/)の写真
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