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「こんなに難しいとは思わなかったけど」・・自動運転

やっと、イーロン・マスクも『完全自動運転』の難しさが分りかけてきたというところだろうか。

「ハハ、自動運転ソフトウェアのβ版はもうすぐだと保証する。
どこでも可能な自動運転は現実世界のAIの大きな課題の解を見つけなくてはいけないから、難しい問題だね。こんなに難しいとは思っていなかったけど、もともと難しいのは自明だった。現実世界よりも自由度が高いものはないんだから。」

だが、私に言わせれば、イーロン・マスクはまだ甘い。
まだまだ本当に難しいのはこれからだと私は思う。
インターフェイス条件が予め定義できるシステムを制御するソフトの開発と、そんなものは定義できない(というか、なんでもアリな)ソフトの開発の難しさの違いを分かる人は、世の中にそれほど多くはない。

それは、ソフトの規模による違いとは本質的に異なる。「すべての『想定外』に正しく対応できるミッション・クリティカルなソフトの開発がどれほど難しいか」という点である。

世の中のミッション・クリティカルなソフトの開発者は『想定外』をいかに「想定」するかについて日々苦労している。想定内の事態への対応ならば、ソフトは「正常ルート」を走っていれば良い。システムに障害が起きても、システム内の障害である限り対処のしようはある。

しかし、道路を走る自動車のまわりに存在する自動車、オートバイ、自転車、歩行者、道路工事、パンク、ブレーキの不調、自身のプログラムのバグ、がけ崩れ・・・・
隣の自動車は幅寄せしてくるかもしれないし、後ろから煽られるかもしれない。歩行者はいつ飛び出してくるか分らない。高速道路の上の橋から物を投げる不審な輩が要るかもしれない。

筆者が「完全自動運転とソフトウェアの課題」で説明したように、『自動運転のためのソフト』というのは、一般の人が考えているほど簡単に開発できるものではない。開発できたとしても、それがすべての要求条件を満たしていることを検証するのは、今の段階ではほぼ不可能ではないかと思われる。

とりあえず、「自動運転」として実現可能なのは、「高速道路上での自動運転」などの、「がんばれば要件定義が不可能ではないソフトウェア」によって制御される「自動運転」に限定されるし、それは当分の間続くだろう。


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