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自分が楽しむのが第一

大学に勤めていると、「どうしてそんな研究をしているんですか?」というような質問をされることがあります。もちろん研究の動機には色々なものがありますが、最も大事なのは”知的好奇心”だと思います。発明は、それまで不便だったものを便利にする具体的な行為ですが、研究は必ずしも成果に結びつくわけではありません。

研究者という人種は、自分が興味があることや、まだ明らかになっていない謎の解明などのために研究を実施しています。工学分野は、経済的なことも考慮に入れなければなりませんが、それでも”自分の興味があること”しか研究しません。厳しいノルマがある仕事をされている方からすれば、「そんないい加減な!」とお叱りを受けるかもしれません。

残念ながら、全ての研究が人類の役に立っているわけではありません。ノーベル賞級の研究はほんの一握りです。多くの研究は、個々の研究は成功しても人類の進歩に大きく貢献することはありません。しかし、これらの積み重ね(蓄積)で、科学技術や文化が進歩していきます。

苦しみながらやる研究も少なくないでしょうが、どうせなら楽しみながら研究をしたいと、個人的には考えています。楽しく研究している姿は、人を魅了し感動を与えます。それに対して、嫌々している研究には感動はありません。

学会(学術講演会)に参加すると、その期間中に”特別講演”と呼ばれる講演会が開催されます。その多くは、開催場所に関連した話題が多いのですが、エライ先生の話は退屈で、どうしても眠気が襲ってきます。しかし、一度だけ眠ることなく聞けた講演がありました。

その先生はコンピュータグラフィクス(CG)の有名な先生とのことでした。その先生の言動は突拍子もなくて、開始早々「火星に家を建てたらどうなるんだろうと考えました・・・」と話し始めたのです。想像の斜め上を行くジャブから始まりました。最後まで眠らずに聞いても、その先生の研究については全くわからなかったのですが、”研究を楽しんでいる”ことはよくわかりました。その先生は決して話が上手いわけではありません。どちらかというと下手な方に入るかもしれません。でも、とても楽しそうに、活き活きと話をされました。

この時はじめて、話はテクニックではなくハートだということがよくわかりました。人を感動させようと思ったら、自分を曝け出す必要がありそうです。私には、まだまだ遠い世界です。

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