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失敗は成功のもと セレンディピティ

 「最近の若者は、・・・」というセリフは、数千年前のエジプトのヒエログリフにも描かれているそうです。いつの時代も、年寄りは若者が気に入らないみたいです。しかし、敢えて言います。「最近の若い人は、チャレンジする気持ちが弱いんじゃないかな?」。仕事柄、若い学生さんたちと接していますが、最近は”失敗を極端に嫌がる”傾向があるように思います。統計を取ったわけでもないので、あくまでも私の個人的な感想です。

 もちろん、私も失敗は嫌ですが、失敗することで次はその手順を踏まないようにできるので、失敗は貴重な経験となります。失敗と思えば躊躇しますが、経験だと考えれば気持ちは楽になります。受験勉強は、答えがある問題を解くわけですから、いかに効率よく間違えないで解くかが主眼です。しかし、大学の研究は問題に答えが無い場合が大半です。さらに言えば、問題自体を探すところから始まる研究もあります。まさに、研究は失敗の連続の成果だといえます。

 セレンディピティ(serendipity)は、時々耳にする言葉ですが、その意味は「素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること」です。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけることもセレンディピティです。科学的な重大な発見は、歴史的にみるとセレンディピティの見本市です。例えば、ガルバーニがカエルの実験で生体信号が電気信号であることを発見したり、レントゲンがX線を発見したり、ベクレルが自然放射能を発見したりと、枚挙に暇がありません。

 ノーベル賞を受賞した日本人研究者の研究もセレンディピティだらけです。オワンクラゲから緑色蛍光たんぱく質(GFP)を発見した下村脩先生も、金属のように電気を良く流す導電性高分子を発見した白川英樹先生も、その発見のきっかけは失敗です。ただし、単に失敗を放置するのではなく、失敗によって条件を絞って行ったり、失敗の原因を詳しく探ることが重要な発見に結び付きました。

 セレンディピティという言葉は、イギリスの政治家・小説家であるホレス・ウォルポールが1754年に生み出した造語で、彼が子供のときに読んだ『セレンディップの3人の王子(The Three Princes of Serendip)』という童話にちなんだものです。セレンディップとはセイロン島、現在のスリランカのことです。ウォルポールがこの言葉を初めて使ったのは、友人に宛てた手紙の、自分のちょっとした発見について説明しているくだりです。その手紙の内容は次の通りです。

 この私の発見は、私に言わせればまさにセレンディピティです。このセレンディピティという言葉は、とても表現力に満ちた言葉です。この言葉を理解して頂くには、ヘタに言葉の定義をするより、その物語を引用したほうが良いでしょう。『セレンディップの3人の王子』という童話を読んだことがあるのですが、そのお話では王子たちは旅の途中、いつも意外な出来事に遭遇します。しかし、彼らはその聡明さによって、彼らがもともと探していなかった別の何かを発見するのです。例えば、王子の一人は、自分が進んでいる道を少し前に片目のロバが歩いていたことを発見します。なぜ分かったかというと、道の左側の草だけが食べられていたためなのです。

 しかし、セレンディップに気付くかどうかは、確かな観察力や深い洞察力が必要なようです。凡人には難しいかな^^。


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