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カラーバス効果

 カラーバス効果というのは、脳は意識したものを見るという視覚効果です。逆に言えば、脳は意識しないと見えないのです。英語ではcolor bathで、直訳すれば”色を浴びる”という意味になります。同じように聴覚では、騒がしい雑音の中でも、自分の名前を呼ばれたり、関心のある相手の声だけは、明瞭に聞き取れます。これはカクテルパーティー効果と言われます。

 脳の中には網様体賦活系もうようたいふかつけいという場所があって、関心のないものをフィルタリングして、関心のあるものだけを認識します。なので、脳は意識を向けないと働きません。脳は、心に思い描いて、意識を向けることによって、はじめて動き始めます。

 正確には覚えていませんが、面白い心理学の実験がありました。バスケットボールの動画を見せて、パスが何回続くかをよく見て欲しいという実験だったと思います。動画が終わった後、「動画中にゴリラが出てきたのは分かりましたか?」と質問すると、被験者の人は例外なく「ゴリラだって?」と聞き返します。すぐ後で同じ動画を見せるのですが、その動画中にはゴリラの着ぐるみが明瞭に映っていました。また着ぐるみゴリラは、堂々と画面の端から端まで横断さえしていたのでした。

 カラーバス効果は、ビジネスの世界でも活用されています。情報収集では、意識していることほど、それに関係する情報が自分のところに舞い込んでくるようになるというものです。また経験的に、「困難に陥った時にちょうどよく助けてくれる人に出会う」や「新事業について考えている時に、偶然古い知人と再会して、新しい事業へのヒントを得た」などもあるようです。心理学のカラーバス効果は脳科学的にも正しいですが、ビジネスでのカラーバス効果は少し胡散臭い気もします。

 物理探査で得られた地下構造も、最終的に解釈するためにはカラーバス効果が必要です。石油の探査には、背斜構造や岩塩ドームなどの特徴的な地質構造がありますし、地熱の探査では、断層や変質体などの特別な地下構造にフォーカスする必要があります。ボーッと見ていると、見えるものも見えてきません。

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