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尖った技術は一足飛びに普及する!

エッジの効いた技術は、それまでの一般的な技術を一気に追い越す場合があります。例えば、現代の生活に欠かせない携帯電話やスマホは、その好例でしょう。私が子供の頃は、ダイヤルを回して数字を入力する固定電話(黒電話)が一般的でした。それがいつの間にか、プッシュホン(今では皆無)になり、自動車電話を経て、携帯電話・スマホに進化していきました。

日本では、電話はこのような緩やかな進化を遂げましたが、発展途上国では事情が全く違います。発展途上国では、”電話が無い”状態から途中を飛び抜かして携帯電話に移行しました。固定電話を使うためには、電話線の整備が必要です。日本は明治時代から少しずつ電話線のインフラ整備をしてきましたが、日本国中に電話線を普及させるためには、多くの年月を有しました。発展途上国には、日本のようなインフラ整備は出来ません。

しかし、無線通信を使った携帯電話が登場したことにより、状況は一変しました。無線電話は電話線を必要としないので、適当な間隔で無線基地局さえ整備できれば携帯電話を普及させることができます。中国やロシアなどの広大な国土を持つ国では、そもそも電話線のインフラ整備は不可能な話です。

現在、原油価格の高騰、原子力発電所の停止、猛暑などで、電力の供給が不安定になりそうです。これを解決する手段として、二十数年前にスマートグリッドという技術が注目されたことがありました。これは、電気を使う製品をIoTで結んでスマートな電力供給網(グリッド)をつくり、AI技術などを利用して最適な電力供給を行なおうとする技術でした。しかし、未だに普及していませんし、今ではその名前すら出てきません。

スマートグリッドの欠点は、スマートグリッドの本質であるキメ細かな電力供給網でした。この供給網を完成させるには、莫大な量の銅線が必要になります。スマートグリッドのアイディア自体は悪くはありませんが、実現するのが難しい技術だったのです。ただし、今すぐには出来ないでしょうが、将来的に無線による電力供給網が実現すれば、スマートグリッドは復活するかもしれません。

最近は、スマホを使った電子決済が普及しつつありますが、日本はまだまだ普及率は高くありません。お隣の韓国などでは電子決済の普及率が高く、国からのコロナ補助金さえ、電子決済を利用して速やかに振り込まれたそうです。日本はといえば・・・。これは、日本のインフラが整備され過ぎたために起こった逆転現象です。

今は円安が続いていて円は価値が低いと思われるかもしれませんが、円はドルやユーロに続く世界の基軸通貨です。その安定した円(現金)は、田舎にまで整備された銀行や郵便局のATMから、いつでも引き出すことができます。こんな便利な国は殆どありません。また、治安が良いのも、現金を持っていても不安にならない要因の一つです。治安の悪い国では、多額の現金は不安要素でしかありません。

発展途上国では、携帯電話の普及に伴って、電子決済も一気に普及していきました。日本は治安が良くて、便利な金融インフラに助けられて、電子決済が普及しません。この記事を書いている私も、現金の呪縛から解き放たれてはいません。インフラが進み過ぎて便利になることも、新しいテクノロジーの普及に待ったをかける一因になることを、我々は認識するべきです。

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