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数学よもやまエッセイ

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数学や算数にまつわるエッセイをまとめました。内容は、そんなに専門的ではありません。ちょっとした息抜きにどうぞ。
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記事一覧

数学の小ネタ#21 ルーローの三角形

”ルーローの三角形”という言葉を聞いたことがあるでしょうか?。タイトル図のように丸みを帯びた三角形は、どんな向きにしても幅が変わりません。そのため、自転車の車輪としても使用することが可能です。このような、幅がいつも同じ図形を定幅図形と言います。 このおにぎりセンベイみたいな形の三角形は、19世紀にドイツ人のフランツ・ルーローが考案した図形です。作画方法は簡単で、正三角形の頂点を中心にして、一辺が半径となる円をコンパスで描くだけです。この丸みを帯びた部分(円弧)を三辺に持つの

数学の小ネタ#20 ローマ数字について

1,2,3・・・と私達が普段使っているのは、アラビア数字と言われる数字です。その他の数字としては漢数字やローマ数字などがあります。漢数字やローマ数字は、基本的には数字を構成する線(棒)の数が数字を表す基本概念になっています。漢数字なら「一,二,三」、ローマ数字なら「Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」といった具合です。 このように棒の数を足していく数の数え方は、見た目にも分かりやすいし直感的です。このように”足し算”の概念は古くからあることがわかります。なお面白いことにローマ数字には、足し算だけで

数学の小ネタ#19 ”ノーベル数学賞”が無い理由

ダイナマイトを発明したことで巨万の富を築いたスウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベルさんは、彼の遺言がキッカケで設立されたノーベル賞でも有名です。ノーベルさんは「人類の役に立つことをした人に自分の富を与えてほしい」という遺言を残し、彼の死後、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞の5つの分野のノーベル賞ができ、その後に経済学賞が追加されました。 6つの分野は、どれも人類に貢献しているのでしょうが、大昔から存在する数学に対するノーベル賞はありません。もちろん、数学

数学の小ネタ#18 ゼロで割ること

ネットの記事に、ちょっと気になるものがありました。それは、小学校の算数のテスト問題に、”0で割る問題”が出ていることと、その答えが間違っていることです。 下の画像がその問題です。18÷6の答えは、この生徒の解答の通りで”こたえなし”が正解です。しかし、この問題を出した先生は、正解を不正解として採点しています。これは由々しき問題です。 特殊な数学体型を除けば、0で割ること(ゼロ除算)は定義されていません。コンピュータのプログラミングでは、ゼロ除算は重大なエラーとなります。ま

数学の小ネタ#17 高度合成数

数学では角度を弧度法でラジアン単位で表わすことがありますが、一般的には一回り360度を使います。なぜ一周が360度なのかというと、360は約数の数が大きいからです。約数の数が多いと、ケーキの様な円形のものを等分する場合に都合がよいからです。360の約数は「1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 10, 12, 15, 18, 20, 24, 30, 36, 40, 45, 60, 72, 90, 120, 180, 360」の24個です。 ところで「自分より小さいど

数学の小ネタ#16 ソフィ・ジェルマンの恒等式

21世紀の今でも女性数学者の数は多いとは言えませんが、18世紀では女性が数学の研究者になることは、当時の常識では考えられませんでした。しかし、そんな悪条件の中、数学や物理学の研究に熱中した女性がいました。それが、18世紀後半のフランスに生まれたソフィ・ジェルマンです。 彼女の功績は、数論や弾性論など数多くありますが、受験生などに身近なのは『ソフィ・ジェルマンの恒等式』と呼ばれる数式↓↓です。この式は、4次式を2次式と2次式の掛算で表わしていて、因数分解などの整数問題に利用さ

「2×5+16÷2ー5」の計算ができますか?

タイトルにある、簡単な四則演算ができますか?。理系/文系関係なく、四則演算のルールが身に付いていれば簡単です。正しい計算手順は以下の通りです。 2×5+16÷2ー5=10+8-5=13 ひょっとすると、2×5+16÷2ー5=10+16÷2-5=26÷2-5=13-5=8? という間違いをしていませんか?。 四則演算の規則は以下の通りです。 ネットで一時期話題になった計算問題「6÷2(1+2)=?」は、乗算の記号×が省略されているので、ちょっと”引っ掛け問題”的では

数学関連記事のまとめ#1

フォロワーさんが少し増えて、108名になりました。これは人間が抱える煩悩の数と同じです。私も多くの煩悩を抱えながら、このブログを書いています。今日は過去に書いた、数学(算数?)関連の記事をまとめてみました。

ヒルベルト変換について

ヒルベルト変換(Hilbert transform)は、実変数関数 u(t) を別の実変数関数 H(u)(t) へと写す線型作用素のことを言います。実用面でのヒルベルト変換は、主に時系列データの信号処理に使われています。ヒルベルト変換は、時間領域ではu(t)と1⁄πt とのコンボリューション(畳み込み)で表現されます。 この変換は、ドイツの数学者であるヒルベルト(David Hilbert)によって考案されました。ヒルベルトの業績は、抽象代数学・代数的整数論・積分方程式・関

数学の小ネタ#15 循環小数

循環小数(recurring decimal)は、小数点以下のある桁から先で同じ数字の列が無限に繰り返される小数のことです。このとき、繰り返される数字の列を循環節といいます。タイトル画のように、”5/9”なら循環節は1桁の”5”ですが、”181/11”の場合は循環節は2桁の”45”になります。 今日タマタマ見つけた数学ネタの動画に、面白い循環小数が紹介されていました。数学好きの人なら知っている人も多いかもしれませんが、”1/9801”です。古くからのパソコンユーザなら、”9

掛け算は回転だ!

掛け算は、足し算や引き算に続く重要な演算ですが、数学(算数)の最初の関門でもあります。また、掛け算の基礎を習った後には、退屈な九九の暗唱が待っています。このあたりも、掛け算でつまづく子供が多い原因なのでしょう。私も当時、運悪く算数の教科書を紛失してしまい、授業中に覚えられなかったので、居残りさせられて先生とマンツーマンで暗唱させられた苦い思い出があります。 掛け算は、「2+2+2+2+2+2+2って書くのはめんどうでしょ。でも2×7を覚えたら一発でしょ。覚えようね」と”累加

数学の小ネタ#12 2:8の法則

2:8の法則というのを聞いたことがありますか?。これは、働きアリの観察から発見された経験則のようなものです。  働きアリの行動をよく観察すると、巣に向かってひたすら重い荷物を背負って運ぶもの、手ぶらでただついていくもの、そうかと思うと列から外れたりして勝手にウロウロするものなど、様々なアリを見ることができます。働きアリと言っても、全部がよく働くわけではありません。ざっくり言って、サボっているアリが2割で、真面目に働くアリが8割です。そのため、2-8の法則と呼ばれています。

数学の小ネタ#14 数値計算の加速法(サンプルプログラム付き)

 無限級数の計算には、多くの繰り返し計算が必要ですが、級数の性質によってはなかなか収束しない厄介な級数も存在します。その中でも交代級数と呼ばれる足し算と引き算が繰り返される級数は、収束が遅いことで知られています。有名な交代級数に円周率の1/4を計算するライプニッツの公式があります。この公式は以下のように、奇数の分母を持つ有理数の足し算と引き算で構成されています。  項数を増やして、この式を素直に計算しても、正解には辿り着きません。例えば1000項まで計算しても、有効数字2桁

数学の小ネタ#13 ”足し算”は”掛け算”よりも難しい?

 昨日、NHKで『数学者は宇宙をつなげるか?』と番組を見ました。この番組は、人類に残された最後の超難問と言われる『ABC予想』というものを取り上げた番組です。ABC予想を優しく説明するのは難しいので、”足し算と掛け算の違い”に焦点を当てて、ABC予想を説明していました。  この番組の中で語られていた「足し算は掛け算よりも難しい」が、私には衝撃的でした。「難しいのは掛け算なんじゃないの?」と私も思っていましたが、説明を聞くと「なるほど・・・」と少しだけ納得しました。例えば10