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ぶったん箸休め

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物理探査のことを略して、物探(ぶったん)と呼びます。ここでは、物探とチョッとだけ関係ある話題を集めました。智の箸休めです。楽しんで下さい。
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2021年10月の記事一覧

地電流のアーティスト

 MT法の関連で地電流のことを調べていた時に、偶然に”地電流の芸術家”を見つけました。彼は、電子回路に土壌(earth)を組み込み、地球(Earth)をハックすることをもくろむMartin Howseさんというメディア・アーティストです。彼はロンドンとベルリンをベースに活動しています。  エンジニアでもある彼は、土壌に電極を刺し、自作の発振器やコンピュータをつないで信号を変調させたり、地電流を音や光に変換する作品を制作しています。2015年には本物の土を積んだユーロラック・

こんな測定装置を作りたい!

 今回は、本気で本格的な研究のお話です。  10月から始まったプロジェクトでは、MT法(地磁気地電流法)の新しい測定装置の開発を目的としています。現状でも、高精度のMT探査機はあるのですが、高価(一式で高級外車が買えるくらい)ですし、磁気を測るセンサが重い(1本が10kg程度)などのため、1つの地域で多くの調査を実施することは、そう簡単ではありません。  そこで、このプロジェクトでは、小型・高精度のMT測定装置を開発し、ついでに探査コストも低減させようと目論んでいます。今

私が経験した物理探査

 物理探査学研究室では,日本の各地や海外において様々な現地調査や共同研究を行ない、地下水・温泉・地熱資源の発見や古墳内の可視化などの多くの成果をあげています。今回は私が実際に行って調査した場所を挙げています。記事というより、探査したフィールドの備忘録です。単なる場所の羅列ですが、どこでどんな調査をしたのかが分かると思います。 地熱探査  大分県九重町・八丁原(比抵抗法,流電電位法)  大分県九重町・滝上(流体流動電位法)  大分県久住町(流電電位法)  大分県湯布院町(流体

MT法の先駆者たち

 地磁気地電流法(magnetotelluric method; MT法)は、1950年にロシアの地球物理学者Andrey Nikolayevich Tikhonov、1953年にフランスの地球物理学者Louis Cagniardによって、それぞれ独自に研究されました。 当初は、探査理論や測定の難しさから実用化に時間がかかりましたが、測定装置、データ処理、数値モデリングの進歩などにより、MT法は地球深部の研究における最も重要なツールの1つとなっています。  Tikhonov

リアル”三匹のおっさん”の挑戦

 『三匹のおっさん』は、有川浩さんの小説で、テレビドラマにもなったので知っている人も多いかもしれません。有川浩さんといえば『図書館戦争』が有名なので、若い人ならこちらが思い浮かぶでしょう。私はおっさんですが、どちらも読んでいます。  今年(2021年)の10月から、地熱資源探査に関するビッグプロジェクト(Nobel MT Project(仮))を始めました。現在のスタッフは、私とT先生、それと10月から新メンバーになったH先生の3人です。普通大きなプロジェクトは、ベテランか

祝ノーベル物理学賞 真鍋淑郎さん

 今年もノーベル賞の季節がやって来ました。本日のホットニュースは、今年のノーベル物理学賞にアメリカ・プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎さん(90)が選ばれたことです。  真鍋さんは地球温暖化研究の先駆的存在で、1950年代末からアメリカにわたり、コンピュータを用いて気候の変動を分析する研究分野を開拓しました。また、二酸化炭素濃度の上昇が大気や海洋に及ぼす影響を世界に先駆けて研究し、現代の地球温暖化予測の枠組みを築きました。これらの業績に対して、ノーベル物理学賞が贈られまし

新プロジェクト始動

 2021年10月1日です。今日から、新プロジェクトを開始します。新プロジェクトと言っても、noteブログの記事のことではありません。  九州大学の私の研究室では、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の委託を受けて、物理探査に関する新しいプロジェクトを始めることになりました。このプロジェクトは、再生可能エネルギーである地熱エネルギーの探査の効率化を目的としたプロジェクトです。  日本は世界第3位の地熱エネルギーのポテンシャルを持つ、地熱の有望国ですが、実際の地熱発