見出し画像

怒りの感情と上手につきあう(その2)

さて、アンガーマネジメントのお話を続けましょう。
今回は「コントロール」についてです。


怒りの正体「べき」

怒りを生んでいる正体は、特定の「人」や「事」ではなく、人がそれぞれが持っている、「べき」、つまり「当然」「常識」「当たり前」であることを(その1)でお話しました。

この「べき」が裏切られたり、侵害されたり、否定されたり、蔑ろにされたり、あるいは、叶わなかった時に、私達は心にイライラや怒りを生じるわけです。

この「べき」には、2つの特徴があります。

ひとつは、「すべて正解」
つまり、それぞれの人にとっての常識ですから「それは違う」「おかしい」「間違っている」という言葉は通用しません。

もうひとつは、「人それぞれ違う「べき」を持っている」ということです。
ひとつ目と根っこは同じです。
個人個人が持っている信条、常識ですから、「私の「べき」は、誰々と同じだ」と、即断するのは間違いです。

ここで少し、あなたのイライラや怒りを覚えた時の経験を
思い出してみてください。それは、あなたのどの様な「べき」が裏切られたから生じたのでしょう?

  • レジでは素早く支払いを済ませるべき。

  • 待ち合わせの時間は守るべき。

  • 公共の場では、自分のゴミは持ち帰るべき。

  • 新人は大きな声で先に挨拶するべき。

・・・等々、イラつきや怒りの背景に、こんな「べき」が透けて見えそうです。

そして、この「べき」を起点として怒りが生まれるメカニズムは、ライターに例えられます。
人が持つマイナスの感情や状況、
例えば、悲しい、辛い、不安、恐怖、孤独感、や眠い、疲れた、空腹、等が、ライターのガスの様に心に溜まり、それに「べき」が発火石となって、怒りが炎として生じます。

「べき」が着火点となるにせよ、生ずる炎の大きさが異なるのは、マイナスの感情や状況の溜まり具合によるガス圧の違いと言えますね。

アンガーマネジメント 3つのコントロール

さて、では怒りが生まれてしまった時、アンガーマネジメントではどの様に対応することを提唱しているでしょうか?

それは3つのコントロールです。

1.衝動のコントロール
2.思考のコントロール
3.行動のコントロール
の3つです。

これらコントロールを順番に行っていきます。

「え~、怒りって瞬間的なものじゃないですか~。コントロールを3つ順番になんて、悠長なことできるんですか?」

という疑問の声が聞こえてきそうですが、はい、出来るのです。しかも、辛い修行を通じて身につける様なものでもありません。

「コントロール」と呼んでいますが、それぞれが「自分の感情と向き合い、考える機会」となります。
そもそも、人は普段の生活の中で、
「自分はどの程度怒っているのだろう?」 とか、
「自分の「べき」は、どこに許す、許さないの境界線を
持っているのだろう?」 とか、
「自分が重要だと思っていることは何だろう?」 とか、
あまり考える機会を持ちません。
アンガーマネジメントは、3つのコントロールによって、その機会を与えてくれます。

そして、それを習慣とすることで、感情にふりまわされる自分にならず、
「怒ること」と、「怒らなくていいこと」との間に線引きが出来るようになることを目指すのです。

では、順を追って説明していきましょう。

先ずは、衝動のコントロール

先ず、衝動のコントロールです。
ここで最も大切にしているのは、「反射しないこと」です。
「反射」とは、考えることなしに発言したり、行動したりすることで、その結果は、後悔に結び付くことがよくあるからです。

そこで、
「イラっとしたら、カッとなったら、6秒待つ」
これが、衝動のコントロールになります。

誤解して頂きたくないのは、6秒待つと怒りが消える、というわけではありません。また6秒の間に、反撃のための怒りエネルギーを充電する、などということでも、もちろんありません。
諸説ありますが、6秒経つと人間の脳に「理性」が介入してくると言われています。これが「6秒待つ」ことの目的です。

理性が介入しても怒りの感情が残っていることは当然あるでしょう。
しかし、一旦理性が介入していれば、反射的に、暴言を吐く、恐ろしい顔を作る、モノに当たる(あるいは投げる)、暴力に転じる、等々、後悔に繋がる様な言動は避けられるということです。

怒りの数値化イメージをもつ

この「6秒待つ」ために、数字をカウントダウンするとか、深呼吸をするとか、様々な方法がありますが、比較的簡単で有効なものに、
「スケールテクニック」があります。ご紹介しましょう。

  • 温度計をイメージします。

  • メモリは下が0、上が10とします。

  • この温度計で今感じた怒りを計ってみます。

  • 先ず、0を「平穏な、安らかな気持ち」とし、10を「人生最大の怒り、今まで経験したことのない様な激しい怒り」とします。(「経験したことの無い様な激しい怒り」はイメージするしかありませんが、下手すると、事件を起こすような怒りのレベルと想像してください。

  • そして、「さて、この温度計では、今自分が感じた怒りは何度くらいだろう?」と考えてみます。
    3かな? いや、もうちょっと高いかも・・・・5かな? というように。この間に6秒が経過するというテクニックです。

温度の高い、低いは問題ではありません。
そして自分だけが分かっていればよい話です。
そもそも、怒りの感情の数値化など出来るわけがありません。しかし、その極めて主観的なもの(感情)を客観視して、数値化してみることが大切なのです。
スケールテクニックを繰り返すことが、ご自身の感情を冷静に見つめてみるという習慣につながります。

最初は高い温度をつける方が多いです。何故なら「ご自身の怒りの正当性」を強く持っているからです。しかし、怒りを何度も計っているうちに、徐々に測定温度は下がってくる傾向が見られます。
前述したように、温度の高低は問題ではないので、測定値が下がることを目的とはしていません。しかし、怒りの感情を冷静に眺めていくことで現れる、興味深い傾向です。

今回は「衝動のコントロール」についてお話してまいりました。
次回は、アンガーマネジメントの3つのコントロールのうちの2番目、
「思考のコントロール」についてお話を進めてまいります。

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

拙著 『ニッポンIT株式会社』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/
Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得
「実践経営・リーダーシップ」部門
「ビジネスコミュニケーション」部門
「職場文化」部門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?