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「転職したらいけないの?」と悩む前に考えてほしいこと

はじめに

「この仕事が合わないのでは?」と漠然と考えている人や、もっと具体的に転職を考えている人に対して、特にそれを諫める文脈で

・石の上にも三年
・今は辛くても、いずれこの時の苦労が花咲く時が来る
・もがき苦しんだ分だけ力がつく

などの言葉をかける人たちがいます。

私自身、転職を決めた後の報告において同様の言葉を受けたことがありました。ただ、実際の心情として違和感が残ったことを覚えています(※1)

今回は、このあたりについて、少し考えてみたいと思います。

日本代表ですら「合う」「合わない」で選ばれる

上記の他にも、よくかけられる言葉として

・本当に実力のある人なら、この会社にいればいつか活躍できる
・この会社でダメなのに、他の会社に行っても良い結果になるわけない

などもあります。これも本当でしょうか?

話は少し飛びますが、サッカー日本代表のスタメン議論を考えてみましょう。スタメン議論は常に白熱するものですが、特に昨年の春頃~ロシアW杯前までは、あちこちで議論が飛び交っておりました(※2)。

当時よく見られた意見を一言でまとめると「それまで重用してきたベテラン勢を外し、まだ出場機会が少ない若手に一新すべき」というものでした。しかし、実際には(すったもんだの末)ベテラン勢を重用した布陣で戦いに挑むことになり、その結果は、ご存知の通り、日本史上最高タイ(ベスト16)の成績を上げたわけです。

この結果をどう見るか?

その後の報道では「出場機会が奪われた若手がかわいそう」という意見をほとんど見ることはなかったように感じます(※3)。

やはり、勝負事は結果がすべてです。プロジェクトのマネージャは結果を出すことが重要なので、最も結果が得られそうなアクションを取りますし、それ自体は悪いことではありません。

若手を抜擢しがちな風潮と、その実際

当時のW杯でも、またIT系プロジェクトでもそうですが、若手を抜擢することが好まれます。ところが、実際には若手を抜擢することと、プロジェクトの成功率には何の関係もありません(※4)。

ただ、若手を抜擢する方が「新しいことをした感」は出るかもしれません。それはすなわち、プロジェクトの成功率や実力とは関係なしに、メンバーに選ばれたり、逆に外されたりするということを示しています。

結局、メンバーに選ばれるかどうかは「合う」「合わない」でしかないということであり、「合わない」のであれば、出場機会は得られないのです。

「実力がないから、上手くいかない」とは限らない

何かが上手くいってないとして、その理由は「実力が追い付いてない」「時流が合わない」のどちらか、あるいは両方です。上手くいかないのは、自分のせいではない場合も多いのです(※5)。

上手くいってない時に「力がついている」というのは、本質的ではありません。「上手くいってない」という状況に、他の意味を考えるのは、自分を納得させるためでしかないです。つまるところ、それは精神論でしかないし、己の心をごまかすための解釈だと考えざるを得ません

大事なのは「出場機会」

今日、合わない環境を変えるための手段はたくさん出てきました。

ただし、環境を変えたからといって、次が理想的な環境であるなんて何もわかりません。大事なことは、転職がいいか悪いかなどではなく、それで「出場機会が得られるか?」ということです。

どうやって出場機会が得られそうな場を探せばいいのか? については、またの機会に。

(この項終わり)

脚注

(※1)本人に(おそらく)悪気はないので、違和感があったことはその方にはお伝えしていません。

(※2)議論が大きく盛り上がってしまったのは、それまでのJFA(日本サッカー協会)のマネジメントに起因する点も多々あると考えますが、ここではその点については触れません。

(※3)「メディアは飽きっぽい」という点は差し引いて理解すべきではありますが…。

(※4)「若手を抜擢して、IT刷新のプロジェクトが大成功!」というのは、「大成功したから」発表されたのであって、若手を抜擢して失敗したプロジェクトは発表されないのです。そして、全てのプロジェクトは、実際には失敗することの方が多いのです。

(※5)よく「リーダーは上手くいかないのは自分のせいだと思え」と教育されますが、それは「メンバーへはそう言っておいた方が彼らが気持ちよく働ける」から(つまり、ある種の「テクニック」として)そう言うと理解しています。

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