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ネ申Excel(カミエクセル)を排除しないとDXは実現しない

はじめに

仕事でExcelを使う人は非常に多いですが、日本の仕事において「Excelを表計算ソフトとして利用している人」は果たしてそのうちの何割くらいなのでしょうか? このnoteでは、そのような記事をずっと書いてきております。

「表計算ソフトは数値・計算をするためのソフトで、Excelはそのうちの一つである」というのは、言葉の定義からすると正しいですが、現状の日本企業での使われ方からすると必ずしも正しくありません。

データ分析ツール=Excel?
https://note.com/hideh_hash_845/n/ne53ec5644ca7

実は、このように主張する人は私だけではありません。こういうExcelを

ネ申Excel(カミエクセル)

と呼ぶ人もいます。「神」などと呼称されますが、とんでもない、ネ申Excelは企業内のデータ活用を妨げる存在です。DXという文脈で言うならば、

ネ申Excelを排除しなければ、DXは実現しない

とすら言い切ってよいと思っています。今回はネ申Excelがどのようなものかをご紹介し、それが企業内のデータ活用・DX推進にどう影響を与えているかを記述します。

ネ申Excel(カミエクセル)とは

ネ申Excel(「カミエクセル」と読む)とは、一言で言うと「紙に印刷され、帳票として出力されることを前提としたExcelファイル」のことです。

特に、方眼紙状にセルを設定してから帳票を作成する人がいて、そのようなExcelは「Excel方眼紙」と呼ばれるともあります。

このように、データの再利用ではなく、罫線を多用した紙の帳票作成を最終目的とする場合に、Excelが利用されることが多いことを問題視している人は多く、たとえば三重大学の奥村晴彦教授が論文にて問題提起したものが有名です。

「ネ申 Excel」問題 奥村晴彦@三重大学
https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/SSS2013slide.pdf

ネ申Excelは未だに存在する

「令和の時代にそんなものがあるわけがない」「妄想だろ」と考える人もいるかもしれません。しかし、それは間違いです。

令和時代にも、ネ申Excelは至るところに、当たり前に、存在します。

それは、たとえば2022年3月にもネ申Excelの記事が書かれているところからもわかります。

ネ申Excelが製造業でいまだに蔓延る理由

上の記事は、「役所や自治体が、紙による申請書類を作成する」という状況に基づいて書かれた内容ですが、この状況は製造現場と類似しています。すなわち、

  1. 元々の業務プロセスが紙によるものを前提としている。特に、製造されたものに関する品質保証のルールから「紙で保存すること」がルール化されている場合は、紙を用いるしかない。勝手にルール変更はできない。

  2. 上のような業務プロセスをシステム化する際に、「帳票作成ツール」として製造現場ではExcelが広く利用されており、また現場ではすでに長い時間をかけてExcelの操作性を習得している。

  3. 世の中はDX化が進み、本来「帳票作成ツール」であっても、もっと便利なツールはいくつも存在するのだが、すでに慣れた環境を「操作が容易であると認識しがち」であり、乗り換え工数を払ってまで環境変更をしようとしない

などの理由が存在しています。製造業におけるネ申Excelは、単に企業文化だけでなく、

品質保証などの製品開発プロセスと密接に関連しており、非常に根深い

問題です。

ネ申Excelは何がまずいのか

これもすでに多くの方が示してきておりますが、もっとも代表的な問題点は

Excel方眼紙に埋め込まれたデータをシステムで取り出すのは非常に難しい

という点があります。たとえば、

https://dic.nicovideo.jp/a/ネ申excel より

というファイルをもとに考えてみると

\ 3 5 0 0 0 という各セルを「35000円」という意味に解釈させるのが大変

だという意味です。もちろん技術的に不可能ではありませんが、多大な(そして、その割に見合わない)労力を払う必要があります。

もう一つまずいことを挙げると、

「ネ申Excelが作れる」ことを「Excelが扱える」と表現される可能性がある

点です。これは、たとえば業務上発生するデータを活用しているか?どのようなツールを使っているか?という趣旨の質問をしたい際に、回答者が

「TableauなどのBIツールやPythonは扱えないけど、Excelはできます」

と言ってきたとします。これは非常に危険な雰囲気を感じさせます。果たして「Excelができる」とは、何を指しているのでしょうか?

ここでずっと議論しているようにExcelは表計算ソフトです。この回答者は「表計算ソフトの中にあるグラフ化やデータ操作に関する機能」を指して、「それが使いこなせる」と言っているのかもしれません。しかし、ここでいう「機能」は「表計算ソフトの中に埋め込まれたデータそのもの」を操作するためのものなのでしょうか? それとも「計算はしないけれども、ワープロソフト・プレゼンテーションソフトの代替として、使いこなすことができる」という意味だったらどうでしょうか?つまり、単に2次元セルにデータを入力し、紙に印刷する際にレイアウトを上手にすることはできるけれど、そもそも

グラフ化やデータの統計処理は全くやったことがないのに「Excelができる

と表現され、「Excelの経験あり」と表現されるのは職のミスマッチに繋がりかねません。ネ申Excelはこんなところにも悪さを引き起こします。

ネ申Excelの例

ここからはいくつか実際のネ申Excelの例を示します。以下は、いくつか内容を加工しているものの、実際に利用されているExcel達です。

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