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DX推進にはアンバサダー/インフルエンサー/エバンジェリストが必要

はじめに

以下のような記事がありました。

進藤氏は「DXを難しく考えている事業者が多い」と指摘し、DXを推進するポイントとして「いきなりDXを目指さない」「なしくずしデジタル化しよう」「ITで会社の強みを伸ばすのがDX」の3つを挙げた。
(中略)
「われわれは、一気に大規模なことをするのではなく、なしくずし的に進めている。3年間をかけてSlackをハブにいろいろなツールを導入し、現在はほぼ全ての業務をSlack上で行えるようになった」と進藤氏は述べた。

気付いたら、DX--「Slack」を軸としたディップの業務改善ストーリー
https://japan.zdnet.com/article/35203945/

この記事を読んで非常に共感を覚えたのですが、同時に

何故世の中はなしくずし的にDXが進まないのか

とも思えました。今回はこの点について考えていきます。

なしくずしDXは誰が行うのか

DXに関して導入を進めようとするときのセリフは決まって「小さく始めるべき」とか「PoCを」とか「成功体験を」とかです。

そんなことはもうわかりきっているのに、なぜそうならないのか

という点に興味があります。先の記事では、続いて以下のような記載がありました。

また、情報システム部門と現場で熱量に差が生まれることを防ぐため、現場の従業員が「DXアンバサダー」としてツールの導入業務を兼任する体制を構築。これにより、現場の従業員を中心とした導入が実現したという。
その結果、導入後3カ月で全従業員の約8割がSlackを利用し、メールの数も激減した。当時実施したアンケートの結果を見ると、97%が「業務・コミュニケーションが効率化された」、88%が「自身の業務スピードがアップした」、79%が「業務上のアウトプットが増えた」と回答した。「お話しした通り、そこまで大層なことはやっていない。“カロリーがかからない”小さな成功体験を作ることから始めた」と進藤氏は説明した。

気付いたら、DX--「Slack」を軸としたディップの業務改善ストーリー
https://japan.zdnet.com/article/35203945/

この企業では、DXアンバサダーなるポジションを用意し、その人に導入を推進してもらうことをしたようです。

アンバサダーとか、インフルエンサーとか、エバンジェリストとか

この「アンバサダー」という言葉は最近よく使われているようですが、少し前のはIT界隈では「エバンジェリスト」という呼び名もよく聞いていました。また、デジタルマーケティング界隈では「インフルエンサー」という呼び方もよく聞きます。これらは違いがあるのでしょうか?

以下のサイトでは「営業」とこれら3種のキーワードとの違いについて説明してくれています。

エバンジェリストとは?求められる役割や能力・育成方法について解説|ウェルナレ
https://www.wel-knowledge.com/article/dx/a211 より

どのキーワードも、彼ら/彼女ら自身が自発的に広く影響を与えようとするところは同じように見えますが、特にアンバサダーは「自分自身が広告塔になる」という点を特に強調したい時に使うようです。

影響を与える範囲は3.5%で十分?

アンバサダーが広告塔になるという話が出ましたが、これはどこまで広げたらよいのでしょうか? 以下の記事によると、

ある集団の意識を変えるには、その集団の3.5%を変えればよい

とのことです。

伊佐山:組織を変革するには、メンバーの過半数の意識を変えないといけないと思いがちですが、そうではないんです。3.5%の人の意識を変えれば、組織は変わります。
磯貝:たった3.5%で変わるのですか?
伊佐山:ハーバード大学ケネディ行政大学院のエリカ・チェノウェス教授は、過去の革命や市民運動などを調査し、人口の3.5%が非暴力で立ち上がれば、社会が変わることを見いだし、「3.5%ルール」と名付けました。
ここから考えると、恐らく企業も3.5%の人の意識が変われば、その人たちから周りも影響を受けて、組織全体が変わっていくことが期待できます。例えば、1万人の会社であれば、350人の意識を変えればいいわけです。5000人の意識を変えるのはかなり大変ですが、350人ならできそうだと思いませんか。

伊佐山元氏「社員の3.5%が変われば組織は変わる」 (3ページ目):日経ビジネス電子版 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00459/041700008/?P=3

いわゆる、イノベーター理論でいう「イノベーター」は母集団の2~3%程度とはよく言われますが、

アンバサダーがイノベーターに対してしっかり魅力を伝える

ことができるかどうかがポイントということなのでしょう。(イノベーター理論については、以下のnoteもご覧ください)

おわりに ~ 最後は自分が変わらない限り、何も変わらない

最後にもう一度、記事を読んでみましょう

日本の会社は段階を踏んで取り組みを進める傾向があるが、遠藤氏は“なしくずし”を提唱する。DXを進めるのは経営者ではなく従業員であるため、自動化や効率化に前向きな“社論”を作る必要があるという。その方法には、デジタル化に尽力したメンバーを社内報で紹介するなどして成功体験を共有したり、RPA、AI、DXといった専門的な言葉ではなく「業務改善」と呼んで腹落ちさせたりすることが考えられる。

気付いたら、DX--「Slack」を軸としたディップの業務改善ストーリー
https://japan.zdnet.com/article/35203945/

「DXは自分事にならない限り進まない」とはよく言われます。それはつまり

DXによって自分が便利になるという変化を実感する必要がある

ということだと考えます。人にやってもらうDXはまだDXではなく、その意味では、どれだけ簡単なデジタルツールでもよいから、身近にファンがいて、そのファンとともになしくずし的に使ってみるということでしかDXは進みません。

逆に「聞かれたらなんでも答えますよ」とか「全部やってあげますよ」というコンシェルジュサービスのようなものは、その意味ではDX的ではないと言えるのかもしれません。

DX推進にはアンバサダー(インフルエンサー/エバンジェリスト)が必要 #一枚絵図

(おわり)

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