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アジャイル=「早い」でイメージするから誤解するのだ

はじめに

アジャイルという言葉についてこれまでいくつかnoteを書いてきました。

ここまでの、このnoteでは

  • そもそも、製造業のようなミッションクリティカルな分野では、アジャイルの適用は難しい

  • 「アジャイル」という言葉を使う人は、実は「ピボット」と言いたい(間違えて使っている)

といった内容を書いてきました。今回は、これをさらに深掘りし、

なぜ『ピボット』と言わず『アジャイル』と言ってしまうのか?

といった点などについて考えていきます。

アジャイルだと仕様書を作らなくてよい、という誤解

もうありとあらゆるところで書かれていると思いますが、

「アジャイル開発でドキュメントは作らない」と言うのは大きな間違い

です。より正確に書くと、「アジャイルでは無用なドキュメントは作らない」と言われることがあります。ただし、それは文字通り「無用な」物を作らないだけで、

作ったほうが仕事が早いなら、作るに決まっている

のです。ドキュメントと言っても形式ばった資料である必要はなく、それこそ(「チケット」などと呼ばれる)メモでもよいのですが、ともかく何かしらの動くものを早く作るための最速の手段を取ろうと言っているだけであって、決してドキュメントを作らないといっているわけではないのです。

アジャイルと言いたがるのは、要するに「要件仕様書を作りたくない」から?

以前の文で「『モックアップ』よりはしっかりしたいものが欲しいが、『情シスによる正式なシステム開発』よりは簡単に進めたい」という人がいることを書きました。この状況で、発注者が最初にしないといけないことは何でしょうか? それは

何がしたいか?という要求をまとめること

です。「要求仕様」などと呼ぶこともあります。ところが、この要求仕様をまとめることは非常に難しいのです。我々が日ごろ脳内で考えているのは非言語のイメージを使っていることも多く、それを言語化することは思っている以上に大変で、さらにそれをドキュメントに起こすことはもっと大変です。

アジャイル開発が有利な点は「前回の成果物を見ながらもう一度要件定義できる」という点です。要するに「作ってから考えることができる」と言っているのです。

なので、ちゃんとしたものを作りたければ要求仕様はまとめられる必要があります。どうも、「アジャイル開発だからドキュメント作らなくていいんでしょ?」という人は、ドキュメント作りたくないというよりも

ドキュメントにまとめる力がないのを「アジャイル」と呼んでごまかし

ているだけなのではないか、と感じることがあります。(※もちろんそうではなく正しく理解している人もいるのですが)

おわりに ~ アジャイルという言葉を「早く」で片づけるな

とにかく強調したいのは、本質的にアジャイル開発という手法は

担当がその場で取れるアジリティが高まるだけで、PJ全体の速度は同じ

だということです。「アジャイルでは無用なドキュメントは作らない」というようなことを断片的に知っている人も、なぜかこの点は知らない人が多い気がします。ここを無視して、「アジャイルだと早くできるんでしょ?ドキュメント要らないんでしょ?」と言い出すのは、無茶だし、無理解です。

アジャイルという言葉には「繰り返し行う」「毎回振り返る」「駄目なら作り直す」という意味が含まれているし、PJの方針を切り替えたいならピボットと呼ぶべきです。

このnoteでは、アジャイル・ピボットといった用語を含め、ソフトウェア開発PJ・DX推進PJについて、引き続き解説していこうと思います。

アジャイル開発はミクロで見たら回ってない #一枚絵図

(つづく)

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