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「わたしのふくしを探す旅」書籍出版記念 ~トークイベント~ 

本日は長与町にあります、ながよ光彩会さん(理事長 貞松徹さん)の「みんなのまなびば み館」で開催されたトークイベントに参加してきました。

~みんなのまなびば み館(みかん)外観~
地域のみんなのための“まちのリビング”をコンセプトに定期的に
ワークショップを開催されているそうです

福祉の実践現場において「いい支援をするには、どうすればよいのか?」という問いに対する明確な答えが見いだせないことがあります。人と人とが関わる仕事であるため、100人の人に対し100通りの答えがあります。
私自身、福祉の大学を卒業し、福祉の資格を持っていましたが、実践現場では日々悩みながら支援に取り組んでいました。「利用者を幸せにする良い支援を行うには?」これは、新人からベテランまで、支援にあたるすべての人々の共通の悩みです。

今回、私が参加したトークイベントでは「仕事に悩む、若手福祉従事者へ届けたい。」とのメッセージを込められた書籍『わたしのふくしを探す旅』の著者、太田百恵さんと世古口敦嗣さんを登壇者に迎え、ゲストとして長崎県で先進的な福祉事業に取り組む石丸さんと福祉について熱いトークを行っていました。
本記事では、そのトークの様子をレポートします。


登壇者プロフィール

■世古口 敦嗣さん
 農福連携に力を入れている、就労継続支援B型事業所「三休(さんきゅう:THANK YOU!!!)」のサービス管理責任者です。ノウフク・アワード2022で、「フレッシュ賞」の受賞歴があります。(下記リンクに紹介記事があります)
また「福祉探求ラジオ」の運営者として活躍しています。

世古口さん

■太田 百恵さん
  就労支援事業所にて3年勤務し、新たなチャレンジとしてJICA海外協力隊にて海外へ派遣予定とのことです。世古口さんとともに福祉探求ラジオのパーソナリティを務め、ラジオには今まで300名以上に参加いただいたそうです。

太田百恵さん

ゲストプロフィール

■石丸徹郎さん
イラスト制作から商品デザイン、パッケージづくりなどを事業とする就労継続支援B型事業所「ミナトマチファクトリー」を始めとするISIAL(イシアル)グループの代表として、先進的な事業を幅広く展開しています。(詳細は下記より)

石丸徹郎さん

(1)オープニング ~本の完成まで~

まずはオープニングとして「わたしのふくしを探す旅 -9名の福祉人から得た価値観-」の本が完成するまでの経緯についてお話されていました。

本が完成するまでの流れを説明。クラウドファンディングも行ったとのこと。

就労支援に取り組む若手支援員の迷いやモヤモヤを解消するため始まった「福祉探求ラジオ」。Xのスペースでは「出口から見る就労支援」などのテーマでトークが行われています。

これらのトークで感じたことを、スペースだけで終わらせるのはもったいないと考え、書籍化したいと考えたそうです。悩みながら支援に取り組む方々へ向けて処方箋となる書籍を目指し、若手、中堅、管理職、経営者などの様々な立場の方にインタビューを行い、その内容をまとめています。(書籍の詳細及び購入は下記リンクをご覧ください)


ハッシュタグは「#わたふく」で、と語る太田さん

太田さん:今回、書籍化した内容についても、これで完成!というつもりはありません。その時々の福祉に対する考え方の変化によって、違った見え方をするでしょうし、読み返すことで新たな発見や楽しみがある本だと思います。

書籍への思いを語る世古口さん

世古口さん:この書籍は、ほんとに時間と労力をかけて作ったんです。百恵さんへの校正チェックの時も、熱意があふれて原稿の7割から8割くらいに、赤字でびっしり指示を書き込んじゃったんですよ。内心、「嫌われてないかな?」なんてドキドキしちゃいましたね。笑

各地で開催された完成イベントの様子 
京都や東京で開催され、長崎は4か所目でした。

(2)ゲストを交えたトーク

続いて、ゲストの石丸さんを交えたトークが行われました。さまざまな福祉に関するテーマについて、対談形式で進められました。

ゲストの石丸さん(ISIAL代表)

トークテーマ1 ~「ふくし」とは?~

トークテーマ1 ~「ふくし」とは

太田さん:選択肢を広げられる手助けをすることが重要だと感じています。例えば、私たちは当たり前に学校に行ったり、友達と様々なところに遊びに行ったりしますが、障がいのある人々の選択肢が狭い場合もあります。そのため、可能性を広げる支援ができればいいかなと思っています。

ー福祉の多様性と理念のアップデートー

石丸さん:福祉には正解も間違いもありません。個々が自分なりの福祉観を持つことが大切だと思います。多様性があってこそ、福祉は幅広く強いものになるんです。標準化されたものでは面白みはありませんよね。

日々、変化するニーズに対応するには、理念を常にアップデートしていく必要があります。ただし、理念を語る際に「世界平和」などの抽象的なことを語っても浸透しないので、具体性を持たせることも重要です。

ー強みを活かし、役割について考えるー

石丸さん:自分自身が何をなすべきか?職員の強みをどう活かすにべきかを考えています。私自身、若い世代の支援を行った経験があったので、その強みを活かし、そこを起点に事業を構想しました。

ー「福祉×ビジネス」どう両立させるか?ー

石丸さん:福祉事業と言っても、とりわけ就労支援では、ビジネスの視点が欠かせないと思います。家族さんの希望を聞くと「健康でいてほしい」という声を聞くこともあります。当然に大事なことではありますが、自立した生活を目指すには現実問題として、お金のこともしっかり考える必要があります。

我々もアート事業に取り組んでいますが、「いい作品だね」と認められるだけでは生活費を稼ぐこともできません。障がい者がアート活動で生活ができるようにしたい。そのために我々は日本全体でアートの価値を向上させ、仕組みを整え、皆の努力やアート作品の価値に見合う正当な報酬が得られる社会を作りたいと思います。そのためには福祉とビジネスをどう融合させるかが鍵となります。

ー夢を応援すること、チャレンジすること、できない理由を乗り越えることー

石丸さん:アートやイラスト事業を行っていると「漫画家になりたい!」という夢を持つ方います。その際に、支援者が現実的な安全策に走ってしまうことがあるかもしれません。

しかし、私は本人の夢へのチャレンジを応援する姿勢が大事だと考えています。実際に、漫画家として仕事につなげた人もいますし、たとえ漫画家になれなかったにしてもチャレンジして身につけたイラスト作成スキルを活かして仕事を得ることができた人もいます。チャレンジをしたからこそ、選択肢が増え、本人の可能性を引き出すことができたのだと思います。

太田さん:支援員が選択肢を広げる就労支援をするにはどうすればよいでしょうか?

石丸さん:日本には2万種類の職種があると言われています。しかし、1日の流れを全て説明できる職種は10にも満たないのではないでしょうか?
そのため、地域にある仕事を利用者さんに当てはめるのではなく、自分達で仕事を生み出すくらいの気持ちでチャレンジすることが重要です。実際に取り組んだことで、大きな仕事を得たこともありますし、また、たとえ失敗したとしても、それを次に活かすことができます。支援者の経験だけで利用者さんを型にはめてしまわないよう心掛けることが大切です。

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「ふくしとは?」シンプルな問いかけですが、非常に本質的なものだと私も感じました。「福祉はこうあるべし!」と決めつけるのではなく、一人一人が多様な福祉観を持つことが大切です。多様性があることで、利用者さんの個性や可能性を最大限に引き出す支援の充実ができると感じました。

私どもの社会福祉法人悠久会でも「福祉とは何か?」についての記事を過去に書いておりますので、ぜひ下記のリンクからあわせてご覧いただきますと幸いです。

トークテーマ2 ~「もやもやしたこと」

トークテーマ2 就労支援の現場で、もやもやしたことは?

太田さん:福祉の現場を離れようかなと悩んだ時のもやもや感についてお話します。就労支援をしている時に「個性を活かす」のではなく、個人個人を社会に合わせる支援をしていることに気付きました。そのとき、個性をなくすような支援になっているのではないか?とすごく、もやもやした記憶があります。

石丸さん:日本の教育システムを例にすると、あてはめることが中心ですよね。障がい分野はマニュアルがないので自由にクリエイティブに取り組んでいいのではと考えています。

教育と言えば、福祉の教育課程には、企業とのコミュニケーションを学ぶ機会など、就労支援のプロになるための教育が不足していると感じます。就労支援では、企業と利用者さんをフィッティングを行うことがあるので、企業の方とビジネス的にコミュニケーション能力が必要です。

我々は、他の法人の事業所見学をあまり行っておらず、実際に利用者さんが働く可能性のある企業を見学するようにしています。企業のコストを削減や、利益創出の取り組みを就労系事業所は学ぶべきでしょう。

ー参加者からの質問ー

Q/参加者:利用者さんが通所することが大事だと思い、まずは通ってくれるにはどうすればいいかとばかり考えてしまいます。

石丸さん:通所してもらうことも当然に必要ですが、企業に就職するという目的がある場合には、目標のハードルを上げる必要があります。企業で就職した場合「出勤さえしてくれればいいよ」とは言ってもらえないと思います。さらに、企業によって求められる能力や評価基準は異なりますので、様々な企業の求める要件を把握しなければいけませんが・・

Q/参加者:就労支援においてリスクを気にしてしまいます。就労支援のリスクについてはどのように考えていますか?

石丸さん:リスクという観点から言えば「どんな企業でもいいから就職させてしまえ」という考えは不適応や早期退職などのリスクを生むと思います。我々の事業所では「利用者さんを本当に輝かせてくれる」企業へ就職させたいと思っています。企業とのフィッティングが大切です。

例えば、企業の障がい者雇用の担当者が実際の働く現場を理解せずに障がい者雇用を進めている場合、ミスマッチが起きる危険性があります。実際に働く現場のことを理解している社員さんと話をすることが大切です。

Q/参加者:書籍化にあたり就労支援の言語化を意識したと思いますが、福祉観などを新人職員と共有する場合にはどのような工夫を行いましたか?

太田さん:もやもやの解決には対話が重要だと思います。管理者やサービス管理責任者などの上司と理想を語り合える事業所であるならば、自然と理想とする福祉観が共有されるでしょう。

石丸さん:1回きりで終わらせず、繰り返し語る機会を持つことも大切ですね。支援員さんが夢を語れる機会をいかに作るかが鍵だと思います。夢を語りやすい風土を作るとよいのではと思います。

クロージング

クロージングでは、参加者一人一人の自己紹介が行われました。
医療関係、福祉関係、企業関係者、障がいを持たれた方の家族さんなど、様々な人たちが参加していました。

最後に登壇者・ゲスト、そして参加者全員で記念撮影を行い、トークイベントは終了となりました。

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