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作家性を排除した実用品と小鹿田焼き、そして「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」を見た話

21_21 DESIGN SIGHTへ。日本民藝館館長を務める深澤直人が、同館の所蔵品から146点の新旧さまざまな民藝を選び抜き、その魅力を語るコメントとともに展示する企画展「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」を観に行くために。

「民藝」は、民衆の用いる日常品の美に着目した柳宗悦、濱田庄司と河井寛次郎らが、無名の職人達が作った民衆的工芸品に名付けた言葉。造語。中でもバーナード・リーチが愛したことで、その技法が世界的に注目されたのが小鹿田焼きで。個人的にも小鹿田焼きが焼き物の中で一番好きなのです。

ミドルスクールに通っていた時に、たまたまセラミクス(陶芸)のクラスを履修していて、それから器が好きで。とは言っても、別に古伊万里が好きとか、ビンテージのアラビアが好きとかそういうことではなく、日常生活の中で、誰が作ったかもよく分からない手仕事の痕跡を感じることができる器と、それがある食卓が好きで。20代の時は年寄りみたいな趣味だと言われたけれども、今となっては年相応な趣味になってきたかもしれないね。

実用性:鑑賞するためにつくられたものではなく、なんらかの実用性を
    供えたものである。
無銘性:特別な作家ではなく、無名の職人によってつくられたものである。
複数性:民衆の要求に応えるために、数多くつくられたものである。
廉価性:誰もが買い求められる程に値段が安いものである。
労働性:くり返しの激しい労働によって得られる熟練した技術をともなう
    ものである。
地方性:それぞれの地域の暮らしに根ざした独自の色や形など、地方色が
    豊かである。
分業性:数を多くつくるため、複数の人間による共同作業が必要である。
伝統性:伝統という先人たちの技や知識の積み重ねによって守られている。
他力性:個人の力というより、風土や自然の恵み、そして伝統の力など、
    目に見えない大きな力によって支えられているものである。


小鹿田焼きと出会ったのは、たぶん鎌倉のもやい工藝で、その時に代表的な技法である飛び鉋が施された湯呑みに一目惚れしてしまい、いっきに6個買って。その後プラスチックの器よりも陶器に触れてほしいと思って、離乳食の時から子供に小鹿田焼きの茶碗を使わせて、欠けたり割れたりしたら、母にお願いして金継ぎしてもらい、それこそ民藝の定義の通り、日常的に使っていたんですね。

好き過ぎて、わざわざ大分県日出市まで行って。ちょうど熊本地震と九州北部豪雨の影響で壊滅的な被害を受けていた直後。訪れた小鹿田焼きの里はひっそり閑としていて。細く曲がりくねった坂道に沿って窯元があり、どこからともなくドスンと土を砕くため唐臼の音だけが響いていました。より正確に書くと、チョロチョロ(川の音)、そしてギギギギギギ・・・・・ドスンっていう感じでしょうか。

小鹿田焼きの窯元はわずか10軒。柳瀬家・黒木家・坂本家・小袋家だけで、開窯以来一子相伝で受け継がれてきたもの。初めてこのことを聞いた時には驚きましたし、よく続いているなと。21_21 DESIGN SIGHTの企画展では、坂本家の親子がインタビューに答えているんだけれども、曰く後継者(息子)に教えることはないと。何故ならば自分(親)も全てを理解しきれていないから教えることができない、ということらしい。あくまで伝統的な技法を継承して、作家性を排除していることに、とにかく大きな衝撃を受けました。

「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」は六本木の21_21 DESIGN SIGHTにて開催。会期は2019年2月24日まで。そうそう、あと鎌倉に来たらもやい工藝も。夏は蚊が多いけど、鎌倉にある店でオススメできる数少ない店です。



140文字の文章ばかり書いていると長い文章を書くのが実に億劫で、どうもまとめる力が衰えてきた気がしてなりません。日々のことはTwitterの方に書いてますので、よろしければ→@hideaki