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複利の成長法則と減衰曲線

植物の成長には複利の成長法則が成り立つ。

種から芽が出て膨らんで、子葉が展開してと最初はゆっくりじっくり大きくなっていくが、ある点を境に急激に成長速度が上がっていく。

植物の成長速度はなぜ急激に上がるのか?いくつかの理論を基に考察したい。

①光1%理論
光が1%増加すると生産量が1%増加する理論。作物により飽和点があるが、一定量までは増加する。

②葉面積と受光量の関係
葉の面積(LAI)が高いほど受光率が高くなる。実はこの受光率の値が指数関数的に増加する。


引用元 もうカツ丼はいいよな より。


①、②の理論より、葉面積が増えれば増えるほど、受光率が高まり光の利用効率が高まるため指数関数的に成長速度が増加する。という訳である。

温度が高いと成長が早いというのは本当?

ある温度帯であれば、温度が高いと成長は確かに早いが、本当にそれだけが原因だろうか。

温度は葉の展開速度に相関がある。
一般に温度が高ければ、葉の展開が早まり、葉面積獲得が早まる。
先程述べた葉面積獲得により、植物は複利的に成長する。
単純な温度の差という訳ではなく、初期の生育差(葉面積の差)が複利的な差になる。ということである。
温度が一次的な要因であるとするならば、葉面積拡大による受光量増加は二次的なものであると考えられる。

逆に捉えるならば、初期に葉面積獲得することができるならば、必然的に生育速度を上げることができると考えられる。

ここで一つ面白い試験がある。
森の中で生育の良い木から採取した菌を選抜して、植物の苗に植え付けると初期生育があがり、初期収量が向上した。考察として、菌が根の付近にある養水分を運んでくれることにより根の表面積が増加し、養水分吸収量が増加し、初期生育が向上し、複利的な差に繋がったと考えられる。
一次プロセスとして菌による養分吸収増加による葉面積獲得。二次プロセスとして葉面積獲得による受光量増加という流れをたどる。

では、初期に生育量が増えれば収穫量が増えるのか?という問いが思い当たる。確かに、葉物野菜などでは、生育量=収穫量となるため、それでもよいだろう。
果菜類の場合を考えてみる。
果菜類には、生殖成長と栄養成長という考え方がある。
生殖成長と栄養成長の説明は下記の通り。

生殖成長ー花や果実など生殖器官が相対的に多いこと。

栄養成長ー根や葉、茎などの栄養器官が相対的に多いこと。

初期生育が向上し、葉面積が拡大するのは、一時的に栄養器官が増えることであり、収穫量が必ずしも増えるとは限らない。

理想的な栄養成長と生殖成長のバランスイメージを下記のグラフに示してみた。個人的な解釈のため、表現の正誤はご了承ください。

生育量を縦軸に、時間tを横軸にとり、任意の収束値を栄養成長と生殖成長の均衡点とする。

変曲点T1までの区間は、成長速度は指数関数的に成長する。
最初はゆっくりだが、ある点を境に右肩上がりに増加する指数関数のイメージ通りである。

変曲点T1を境に傾きが変わり下に凸のグラフから上に凸のグラフに変わる。

T1からは、栄養成長と生殖成長が交互に繰り返される周期関数となる。
つまりは、果実が多い期間は成長成長。果実が収穫されて栄養器官が強くなれば栄養成長といった形で栄養成長と生殖成長がある期間で周期的に繰り返される。
おそらくだが、理想的な曲線は栄養成長と生殖成長のバランスをとりながら時間tが経過するため、収束値の値に近づく減衰曲線となる。

では、初期に栄養成長が強くなった場合をグラフで表記してみる。

①栄養成長過多
いわゆる、つるボケ、樹ボケという症状のことである。
本来的には変曲点で傾きの変化量がマイナスになるはずだったが、極度な葉面積が増えたなどで、栄養器官のみの成長で花が咲かずに終わってしまう場合である。

②生殖器官が少ない
このパターンは花はつくが花数が少なかったり肥大が悪いパターンである。

次に生殖成長が強い場合をみてみよう。

生殖成長が強い場合は、花や果実はついたが栄養器官(身体)ができずに負担を背負ってしまい、最悪の場合枯死してしまう。短期的には、収穫できるが長期的な収穫は見込めないパターンである。

それぞれのパターンをみてきたが、ここで栽培のポイントがある。
「周期的な極値は変曲点を作らないと取れない。」
ということである。
当たり前のことであるが、変曲点が無ければ次の極値は取れない。
極値がまだかなぁって待ってる時点で気付いた際には、変曲点となるべき閾値を超えてしまう。
実は、樹ボケ、つるぼけになってしまってからではもう既に手遅れであり、手のつけようがなくなる。
極値をとる想定の2ー3つ手前の段階で、傾きの変化量を操作する必要性がある。
なぜならば、「植物は複利的に成長する」からである。
最初はゆっくりじっくり。ある点を境に急激なスピードで生育が進むため、症状が全体に見えてからブレーキを踏んでも時既に遅し。
ブレーキは使わずに先を読んでアクセルを緩めることの方が重要なのである。

実はスケール間は違うが病害中に関しても同じことが言える。
例えばの話であるが、1週間周期で1匹から10匹増加する虫がいたとすれば、1ヶ月で10,000匹まで増加する。
適正な条件下で複利的に増加するため、発見した時点で抑えておかないと止めることはできないだろう。


施設栽培の考え方の中にPID制御という考え方がある。
長くなるので次回に記述するのだが、簡単に言えば、
比例ー微分ー積分を使うことにより、急激な温度変化を避ける制御の仕方である。
実は僕のイメージレベルでは、果菜類の栽培もこのPID制御で栽培しているのだが、表現力が身につけばまた書きたいと思う。

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