見出し画像

ハーバード・ジャパン・デーの開催報告

皆さんお久しぶりです!夏目です。

Noteを書くのも実に1年半ぶりで、これまではFBやXなどを通じて投稿はしていたのですが、久しぶりにまとまった形で文章を書くので、乱筆乱文で読みにくいところがあると思いますが、どうかご容赦いただけますと幸いです。。。

ということで、人生初めてアメリカの東海岸を訪れました。

ちょうど1ヶ月前に相方がサンフランシスコから、ニューヨークとボストンを訪れ、PearVCや、Index Ventures、a16z、Coatue、Genera Catalystなどといった米国のトップティアVC18社に会ってきたのですが(その際の出張報告はこちらから←アメリカの資金調達について書いているので、興味ある人はぜひ読んでいただけると幸いです)、私は今回全く異なる目的で東海岸を訪れました。

Facebookでも度々投稿させていただいていたのですが、今回は米ハーバード大学内で「Harvard Japan Day」を開催するために、一週間ほどボストンに滞在し、Harvard Undergraduate Japan Initiative(HUJI)に所属する学部生と一緒に”ハーバード大学の歴史上、最も規模感が大きく、多様性あふれる学生主導の日本関連イベント”を共催しました。

なぜ私たちが遠いアメリカ東海岸のハーバード大学でイベントを共催したのかというと、
① ハーバード大学における日本プレゼンスの低下;
② 一方で、ハーバードや米トップ大学のコアな学生の中で、日本に対する興味関心が高まり、日本での起業に興味を持ち始めている学生が増えていること;
③「ハーバード・カレッジ・チャイナ・フォーラム」のような北米を代表する日系起業家の登竜門的なイベントがなく、開催するには絶好のタイミングだったこと。

結果として、200名を超える参加者の方にご応募いただき、ハーバード大学のみならず、MITやボストン大学などケンブリッジ一帯に所在する大学以外にもコロンビア大学、プリンストン大学、UCバークレーなど全米の大学、そしてイギリス、カナダの大学に在学している学生・教職員の方々にお越しいただきました。

今回はそのハーバード・ジャパン・デーの開催報告と、一週間にわたる出張(ボストン&ニューヨーク)をまとめてNoteに書き出したいと思います。

文章がちょっと長すぎて読めない!という方は本文のまとめを下部に掲載しているので、こちらを読んでいただけると幸いです。


そもそもなぜハーバード大学で?

冒頭でも書かせていただいた通り、今回の旅が人生初のアメリカ・東海岸であり、ハーバードとは縁もゆかりもなく、いまだに自分が共催者としてイベントの企画段階から携わったことを不思議に感じています。

事の始まりは、数年前からハーバード大学にて、HUJIと共に「Harvard Japan Career Forum」というハーバード大学の学生に日本への就職ルートを作ろうと働きかけていた有志たちがいました。彼らは、日本の企業に積極的にアプローチをし、ハーバードの構内でキャリアフォーラムを開催。結果として多くのハーバードの学部生が日本企業へと就職し、各業界で大きく活躍しています。その有志の一人であり、今回の共催者でもある光澤大智くんと学生時代に知り合い、彼から多くのハーバード生を友達として紹介してくれました。

そして今年の2月に、光澤くんから以前ご紹介いただいたHUJIの前代表であり、友人のSimon(コロンビア出身)から新しくHUJIの代表に就任したのは中国人学生のBozhen Pengということを聞きつけ、私も中国で19年間生活した経験があったことから、親近感が湧き、Simonにご紹介をお願いし、オンラインで初めて彼にお会いしました。

12棟あるハーバードの上級生寮、Lowell Houseにて
左2がBozhenで、真ん中が光澤くん

Bozhenは、ハーバードカレッジ(学部)の二年生で、幼少期から日本のアニメに深く魅了されていました。学業で落ち込んでいた時も彼を奮い立たせたのは数多くの日本のアニメであり、次第にこれらのコンテンツに対する興味は、日本語や、日本文化、日本人、そして日本という国に対する興味へと変わっていったそうです。

実際、Bozhenと話す中で、彼は度々私たち日本人が気づかない「日本の素晴らしさ」を教えてくれました。日本の社会環境や、生活、そして彼が研究を進める日本語、特に万葉仮名や漢文、音読み、訓読みなど、恥ずかしながら私が知らない日本の一面を彼から教わりました。彼は中国出身でありながら、日本を愛し、日本のために何かしたいと常に語り、HUJIでも日本との交流活動に精力的に取り組んでいると聞きました。

その会話の中で、私はハーバード・カレッジ・チャイナ・フォーラム(HCCF、気になる方は下記の備考欄をチェック)の話を切り出した上、日本の現状、特に私がいるスタートアップ・ベンチャーキャピタル業界の話をし、彼に「日本の経済が上向き、注目が集まる中、日本に多くのチャンスが集まっている。この時期に、HCCFの日本版であるハーバード・ジャパン・フォーラムを開催してみないか?」と打診したところ、彼は二つ返事で承諾し、企画に入り始めました。

備考:ハーバード・カレッジ・チャイナ・フォーラム(HCCF)とは?

「ハーバード・カレッジ・チャイナ・フォーラム」(HCCF)は、1997年からに設立された北米最大の学生主導のフォーラムであり、今では米国と中国を結ぶ重要なイベントとなっています。

2018年時点では、1,000人を超える参加者と、100名を超えるスピーカーが参加し、中にはアリババ創業者のジャック・マーや、ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン、ブリッジウォーターのレイ・ダリオなど経済界の重鎮が参加する北米随一のアジア関連イベントとなります。

そして、HCCFは単に米国と中国を繋げるイベントだけではなく、今や多くの中国やグローバルベースのベンチャーキャピタルが参加するようなイベントとなっています。その理由として、HCCFでは毎年トークセッション以外にも、ピッチコンテストを開催しており、ハーバード以外にも東海岸を中心とした学生が多く参加しています。彼らは自身のビジネスアイデアをピッチし、優勝すればHCCFから一定のグラントを獲得することができます。

またピッチコンテストに参加する審査員を見てみると、2022年にMidas Seedの首位に輝いたZhenFund CEOのAnna Fangから、GGV CapitalのマネージングパートナーであるHans Tung、Sequoia ChinaのパートナーであるQingsheng Zhengなどの大物がずらりと並んでいます。

学生としてもHCCFのピッチコンテストは、北米の中国系スタートアップの登竜門的なコンテストで、グラントを獲得できるチャンスがある以外にも、これらのトップティアVCから直接フィードバックをもらえる貴重な機会という事で、コンテストに参加する学生は年々増え続けているそうです(ちなみに過去にはコンテストに参加した直後に審査員を務めていたVCが直接スタートアップに出資し、今ではユニコーンになった企業もあります=XtalPi)。

このようにハーバード・カレッジ・チャイナ・フォーラムは、中国の経済界、特にベンチャーキャピタルにとっては北米で開催される一大イベントとなり、今でも絶大な影響力を誇ります。
参考記事:https://www.bloomberg.co.jp/.../2023-09-25/S1D0JNDWX2PS01...

「ハーバード・ジャパン・デー」当日の様子

Bozhenと、HUJIの副代表であるAlbertが企画から実施まで担当し、その中で私と前述した光澤くん(外資コンサルを経て、現在Jelper Clubという企業の代表を務める)がアドバイザーという立ち位置に入りました。

今回のハーバード・ジャパン・デーのコンセプトは「日本とハーバードにおける共創と日本社会への理解」という内容で、パネルも全て日本とアメリカ、ひいてはハーバードとどのように連携を強化し、次世代の日米を担う人材を輩出するかという設計でした。

ハーバード・ジャパン・デーの詳細

ポップカルチャーから始まり、スタートアップや、ビジネスなど、特に北米の学生の興味を惹きそうなコンテンツが用意され、スピーカーもめちゃくちゃ豪華なラインナップでした。

ポップカルチャーパネルでは、Cygamesの技術顧問であり、Cygames Research所長の倉林さんや、ハーバードビジネススクール助教授の天野先生などにご登壇いただき、

スタートアップパネルは前楽天グループChief Data Officer であり、現在量子コンピューターを作るQuEra ComputingのPresidentを務める北川さんと、シリアルアントレプレナーであり、米国でFirst Cardという大学生向けのキャッシュバック付きデビットカードを展開する丹羽さん、

ビジネスパネルはトヨタ自動車のグループマネージャーである遠藤さん、政策研究大学院大学の助教授であり、ハーバード大学で日米関係の研究をされているProf. Brummerにご登壇いただきました。また、特別セッションでプロメアや、サイバーパンクエッジランナーズを手がけるスタジオTRIGGERの皆様にもお越しいただきました。

私も、スタートアップパネルで日本のスタートアップ・ベンチャーキャピタル業界についての紹介をさせていただき、セッション後には多くの在学生から日本での起業についてや、資金調達環境についての質問が数多くありました。

Startup Panelの詳細
会場の様子
HUJIの副代表、Albertがモデレーターを務めるPop Cultureセッション
多くの学生にお越しいただきました

今回は初の開催でありながらも、結果として35を超える機関から218名の応募があり、そのうち学部生が56.9%、大学院生が24.3%という数値になりました。また、ハーバード大学に所属する参加者は全体の6割近くを占め、その次にボストン大学とMITがそれぞれ1割程度という分布でした。

セッション後は、二日間とも参加者向けにお寿司を提供し、
ネットワーキングセッションの場も設けました。
光澤くんが代表を務めるJelper Clubからお寿司をご提供いただきました!

というような形で、準備期間を含めると約半年間の時間で企画から開催まで持っていくことができました。今回の「ハーバード・ジャパン・デー」は初の試みであり、全く土地勘のない東海岸、さらには縁もゆかりもないハーバード大学での開催ということで、チャレンジの連続でしたが、HUJIのメンバーが現地でうまく取りまとめ、無事に開催することができました。

また会後には、「ハーバード・ジャパン・デー」がルーズベルト大統領や、ケネディ大統領、Airbnb、Quoraの共同創業者、Microsoft、AmazonのCEOなどが在籍したことがある由緒正しき学内報「The Harvard Crimson」に写真付きで掲載されました。個人的にも、学部生の頃から「The Harvard Crimson」のことは知っていたので、改めて掲載していただいて本当に嬉しい限りでした。

掲載していただいた記事

「ハーバード・ジャパン・デー」の開催を通じて学んだこと

実際、「ハーバード・ジャパン・デー」の開催のために、ボストンに滞在したのは五日間ほどでしたが、これまでとは全く異なる環境(むしろ土地勘ゼロ)で一共催者として企画から実施まで経験できたのは本当にいい経験でした。

一見、このような地道で、草の根的な活動は無意味に見えますが、「ハーバード・カレッジ・チャイナ・フォーラム」も当初はわずか数人規模のチームでイベントを開催し、今や上記のように米国と中国を結ぶ重要なフォーラムとなり、ユニコーン企業も輩出し始めているので、私たちの活動も五年後、十年後に大きな実を結ぶことを信じています。

この機に、自分が今回のイベント開催で学んだ経験や、渡米中にお会いした起業家・投資家から得た学びと気づきをこちらで少しまとめたいと思います。当たり前すぎる内容もあるかもしれないのですが、普段の生活で、むしろ当たり前すぎてそのままスルーしてしまうこともあるので、定期的に振り返るためにも書き出したいと思います。

  • ハーバード大学は生まれながらの天才というのも多いが、大半が「超」がつくほどの努力家。1秒1分を争って学業に打ち込んでおり、各々の専門分野ではエキスパートと言えるほどの専門家。実際、彼らの寮で一緒に作業させてもらったが、夜中の2、3時になっても食堂兼自習スペースで自習している学生が多かった。

  • イノベーションの源泉とも言えるのが学生寮と留学生比率であることがよく理解できた。自分も中国の大学で学部の4年間と、大学院の2年間はキャンパス内に設置された学生寮に住んでいたが、留学生寮と中国人学生寮は分けられていた(自分が住んでいた大学院生の寮は混合だった)。ハーバードはしっかり現地の学生と留学生をバランスよく混ぜ合わせ、寮の中でもお互いの文化を理解する場や、議論する場が作られていた。まさに映画「ソーシャルネットワーク」に登場したハーバードの寮を今回は体験できた。

  • 思ったより日本に興味を持つハーバード・MIT生が多い。今回のイベントに応募した218名中、実に7割にのぼる学生が日本語を話せる、または流暢/ネイティブレベルだった。

  • 日本でのキャリアに興味を持つ学生も多い。特にコンテンツやテック業界に興味を持つ学生が多く、彼らの多くは日本での就活を試みるが、むしろ受け皿が少なく、断念することが多い。比率的にはアジア系の学生(特に中国系)が日本への興味関心が高い。

  • ハーバードの学生などアメリカのトップスクールに総じて言えるのが、世界トップのリソースを手にしているが故に、イベント事に対して興味が薄れがち。また、三、四時間の時間を拘束するのはそもそも無理がある(やる事が多すぎる)。Harvard students, especially the college students are extremely busyというのをよく聞く。

  • 海外大に進学している日本人留学生(特にトップ大学)の多くはハーフ。ハーバードも驚くことに、日中、日韓、日米ハーフがかなり多かった(体感値だが日本人学生の半数以上はハーフ)。こういった学生は共通したアイデンティティ(ハーフアイデンティティ)を持つ。

  • アメリカ市場の特殊性。よく日本市場の特殊性が挙げられるが、アメリカも中部や、南部、東・西海岸とユーザーの需要は全く異なる上、人種が異なることも多い。アメリカで成功=グローバルで成功できると思われている理由はアメリカという世界で最もユーザーが多様な市場において、それぞれのユーザーのニーズに応えることで初めてプロダクトとして成立し、それが一定国外市場への転用が可能となる。

  • Idiot-proofの重要性。日本は単一民族国家(homogeneous)でありながら、世界3位の市場規模を有する国なので、プロダクトのコンテクストが複雑になっても、同一市場においては理解されるが、海外市場では厳しい。誰でも使える・扱えるように=Idiot-proofに作り込むのがそもそも重要。

  • 日本のソフトパワーの影響力は想像以上に大きい。日本人が知らない作品でも、海外で知名度がかなり高いケースが多く、日本人の目線で判断しない方がいい。あと同じカテゴリーと思っていざ展開してみると、全く異なる市場となることが多々起きる。漫画/アニメ ≠ コミック/カートゥーンなど。

  • 相方の李も前回の出張報告で、基本的にアメリカの投資家は「Where are you from」という問いを投げかけることはあまりないが、結局「Who are you」&「Why you」は重要。

  • 日本人だから難しい、というのはフィックスマインドセットであり、そもそもその考えを取っ払うことが最優先事項。海外からすると、日本にはありふれるほどの宝が埋まっており、それをレバレッジしないのが不思議という評価(そもそも日本人や日本という国を意識しないのが大事かもしれない→ただし、レバレッジできるものはしっかりレバレッジするべき)。

  • 大谷翔平選手が誕生したように、日本から大谷翔平選手のようなスタートアップが誕生する可能性も十分ある。課題は言語力とマインドセット。

  • 日本は”安い国”になりつつあるが、むしろそれを強みに生かすことも可能。労働対価が諸外国で比べると低水準だが、日本人は依然として優秀だし、日本のマーケットは大きい。これをどのように活かして、グローバルの市場で戦っていくべきか。

  • 日本の市場は一定のボリュームがあるので、まずは自国市場で成功することは大事。だが、重要なのはローカルPMFに固執しないこと。アメリカの投資家や起業家は常に新しいPMFを求め続けている。アメリカという巨大市場における地域的なPMFや、海外市場におけるPMF、新たなユーザー層に向けたPMFなど、常に刷新し続けている。

  • シリコンバレーの一強支配が終わりを迎え、東海岸にリスクキャピタルが集まり始めている。もちろん、サンフランシスコやサンノゼといった都市の資金調達額は依然として比率として高いが、2015年のデータと比較しても、ニューヨークの投資シェアは著しく伸びており、2015年には全米で7.09%だった投資シェアは、2021年には15.9%に伸びている。ニューヨークは消費の中心地でもあり、アメリカで人種の多様性が最も高い都市でもあるので、ここを中心に次世代のプロダクトが誕生する可能性も高い。

The Martin Prosperity Institute - Rise of the Startup City
The Post-Pandemic Geography of the U.S. Tech Economy
  • (まだ色々ありそうな気がしますが、思い出したら書き足していきます🙇‍♂️)

まとめ

  • ハーバード大学の歴史上、最も規模感が大きく、多様性あふれる学生主導の日本関連イベント”を共催しました→「The Harvard Crimson」の記事

  • 今回は初の開催でありながらも、結果として35を超える機関から218名の応募があり、そのうち学部生が56.9%、大学院生が24.3%という数値になりました。また、ハーバード大学に所属する参加者は全体の6割近くを占め、その次にボストン大学とMITがそれぞれ1割程度という分布でした。

  • 思いのほか、日本に興味関心がある学生が多く、日本での就職や起業を求めている学生が多数参加していました。

  • 今回のイベントに応募した218名中、実に7割にのぼる学生が日本語を話せる、または流暢/ネイティブレベルでした。

今回の開催は、関係者や、スポンサー、ゲストの皆様方のご支援なしには成し得なかったことで、この場をお借りして改めて感謝申し上げます!初の開催で、バタバタな状況だったにも関わらず、ご登壇を快諾していただいたスピーカーの皆様、また開催についてもまだまだ不明瞭な中でスポンサーしていただいた皆様、本当に心から感謝申し上げます。

また今回の開催に際して、最前線で活動していたHUJIのメンバー、特にBozhenとAlbert、本当にお疲れ様でした!!!ハーバード生との出会いのきっかけを作ってくれて、今回も一共催者として五日間イベントの共催をともにした光澤くんもありがとう&お疲れ様でした!

今回のハーバード・ジャパン・デーの企画運営にあたったチームメンバーたち

最後にBozhenのFB投稿をお借りして、このNoteの結びとさせていただきます!

This is just the beginning. The seeds we've planted today promise a flourishing future. We're more than ready to nurture this into a perennial endeavor. Let's keep the momentum, keep the conversations alive, and continue to celebrate the rich tapestry of Japan here at Harvard and beyond.

Bozhen Peng


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?