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エッセイ 11 早朝の叫び

子どものころから釣りをしています。
様々ある釣りの中でもルアーフィッシングを専門にやっています。エサ釣りとは違い少しだけファッショナブルなカッコよさもあります。

もちろん実際のエサを使った釣りではなく、プラスチックや金属で作られたお魚さんの人形のようなものをエサの代わりに使っているので、魚を釣り上げるのは難しくなります。その分釣れた時の満足感は大きなものがあります。


そのルアー釣りの中でも少しハードなショアジギングというものもやっています。釣りあげようとしているのは、ブリやハマチ、ヒラマサなどの大きくてパワーのあるお魚さんです。
そんなお魚さんは近くの防波堤で手軽に狙えるものではなく、山を越えた崖を降りた岩場であったり、長く伸びた堤防の先であったり、釣り場に行くのにも苦労するような場所です。

そんな中、お気に入りのよく行く釣り場がありました。そこは島の中央に神社がある離れ小島です。島の正面にはまっすぐな一本橋が架かっており、歩いて島に渡ることが出来ます。橋を渡った後も山を登り神社への道を抜け、岩場を下ってやっと釣り場に到着します。


釣りといえば早朝や暗い間に出かけるイメージがあると思います。
その時の私も、まだ日の出まで大分時間のある早朝に島へ架かる橋を渡っていました。

ルアー釣りをするときには、ライフジャケットにスパイクシューズ、帽子に手袋そしてヘッドライトなど、装備は万全に整えています。岩場で転んでしまったり、海へ落ちてしまうことも想定しての備えです。身を守るための準備はバッチリです。


実はこの辺りは心霊スポットとして有名な場所です。島の中や橋の上、そして手前のトンネルなどは幽霊がでると有名な場所です。

辺りは真っ暗闇、お化けや幽霊が出るには好条件です。しかし私はこの中をひとりで歩いていても怖くはありません。それは何が出てきても怖くないというわけではなく、目に見えないモノは怖くないというだけです。目の前に怪物やゾンビが出てきたとしたら気を失うくらい怖いです。

波の音だけが聞こえる真っ暗闇の橋をひとりで歩いていきます。これまで何度も通ってきたこの道に、お化けが見えたことはありません。怖がることなくどんどん進んでいきます。


橋を渡り切り、結構な高さの階段を上ります。この階段にはいつも体力を奪われてしまいます。「ぜーぜー」息もあがってしまいます。

登り切ってしばらくすると神社が見えてくるはずです。
街灯もなく真っ暗な島の山道には、ヘッドライトの明かりだけが頼りです。
足元の踏み石を外れないように、少し手前の地面を照らしながら歩いていきます。


そのとき。。。。。

「ギャッーー!!」

とんでもない叫び声に、身体がビクッとなりました。
心臓の鼓動が早くなり、周りを見ても真っ暗で状況が何も解りません。
この島で初めての恐怖を感じました。

。。。。

「ぎゃははははっ!!」

続けて笑い声。。。


そう、肝試しをしている若者のグループの叫び声だったのです。

神社の近くで友人を脅かしていたようです。

まだ、鼓動は収まっていません。
幽霊やお化けなどは怖くはないのですが、人の声には驚かされました。


一番怖いのは肝試しに来ている人の叫び声
「やっぱり目に見えるものの方が怖いわ」
と感じた早朝の出来事でした。

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