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教室のアリ 第18話 「4月27〜29日」〈子どもが来ない…〉

 オレはアリだ。長年、教室の隅にいる。クラスは5年2組。
 学校は休みだったのでポンタと公園に散歩に行くことにした。クローバーが元気よく伸び始めていた。オレはもう一度ポンタにシロツメグサの件を説明した。

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少し長いオレの話が終わるとポンタは言った。
「とっても悲しいと思うけど、コタローだけでも逃げられてよかったね」
仲間と離れ離れになった。その意味ではオレもポンタも同じだ。
「ひとまず、給食室のエサをとったのは誰なのか?それがわかるまではオレたち二匹で生きないといけない」
オレは確認するように言うとポンタは黙ってうなずいた。すると子どもたちがこぼしたお菓子を探しに行った。結構、動きは早い(ケガをするまではエサ集めのエースだったらしい)。きょうは土曜日だ。公園にはたくさんのエサ(エサを持った子どもたち)がやってくる。チップス、飴、グミにお弁当、そしてアイスクリーム!でも、オレたちには「巣」がないから5年2組か給食室に運ぶしかないんだけど、ほとんどは公園で食べてしまった。今、振り返ればこのときにたくさん食べておいて本当に良かったよ(理由はまた話すね)。公園ではトラブルもたくさんあった。お弁当を狙っていたら、芝生に引いてあったシートが風で飛んで、オレは宙に舞った。チップスの袋の中にいたポンタはくしゃくしゃにまるめられそうになった。ハイチュウを探していたら(ポンタは教室で食べたハイチュウがお気に入りになったようだ)サッカーボールが飛んできてつぶされそうになった(ポンタにはサッカーと野球は教えておいた)。

〈アリ生(人生)を考える
 空は青く高く、風がほのかに薫る、4月の終わり。このままアリ生を過ごすのも悪くない。そんな気持ちの一方で、もう一度みんなの先頭に立って働きたい。それが叶わないなら、いろんな土地のアリと出会いたい。一緒の冒険をしてくれる(だろう)友はいる。大きな地球(アリにとっては果てしなくデカイ)の公園の片隅でそんなことを考えていたんだ。
 夕方になった。子どもたちは家に帰ったので、オレたちも給食室にエサを運ぶことにした。ポンタと力を合わせた。校舎に入り、廊下を歩き、給食室の棚の中へ入る。隠しておいたエサはそのままだった。誰も来ていないってことだ。食べ物がある幸せと、少しのがっかり。

〈子どもたちが来ない〉
 日曜日はポンタと音楽室の絵を見て「ヘアスタイルが変だね」って笑って過ごした。給食室のエサも確認しに行ったけど、この日も「そのまま」だった。
 そして月曜日の朝、事件は起きた。子どもたちが…先生が…学校に来ない。なぜだろう?

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