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短歌集/文月 「木陰、まなざし」


「 まなざし 」
逃がさない 彼の黒目が 語ってる
滴る汗と 速まる鼓動



「 隠した紫 」
べっとして 見せた青色 まぶしくて
わたしは紫 見せられないけど



「 遠い 」
お祭りも 浴衣も花火も 海だって
次会うときには 過ぎたことなの



「 コンビニ 」
用もなく 携帯片手に 彷徨った
あなたが来てる ような気がして



「 木陰 」
降り注ぐ 強さにわたしは 耐えきれず
木陰を求めた それだけだった



「 堕落した幸福 」
午後三時 揺れるカーテン 扇風機
い草の香り ホームランの音



「 薄闇 」
手を伸ばす 睫毛の先まで よく見える
まだ明るい夜 キスはできない



「 紅い斑点 」
首もとに 浮かんだ印 鮮やかに
蚊だよと微笑う そうかと微笑う



「 真昼の夢 」
笛の音 嘘だと願う 荒い息
頬をつたうは 汗か涙か



「 種 」
とおくまで 飛ばしたほうが 勝ちだった
深く根付いた あたしの負けよ



「 騒音 」
今なんて 蝉が邪魔した 嘘を吐く
もいちど言って さっきのことば



「 24℃ 」
欲しいのは 毛布でもない すぐそばに
眠るあなたの ぬくもりだった



「 無心 」
みぎ、ひだり それだけをただ 繰り返す
蒼過ぎる空の 果てが知りたい



「 夕立ち 」
いつの日か 突き刺すほどの 雨のなか
家まで走った あなたは笑った



「 イノリ 」
馬鹿みたい 紙切れ一枚 分かってる
それでも縋る この日のせいで



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あっという間に下半期。恐ろしいです。

先月のnoteでふと思い立って、短歌を書いてみたんですよね。


わたしは結構だらだらと書いてしまう癖があったりするので、最初から文字数が決められているというのはいい練習になるなぁと思いました。
なので、毎月試験的にやってみようかと!


五、七、五、七、七、という限られた枠の中で想いや表現を出し切るのはすごく難しいですね。
余白、余韻、などを残しつつも、ピタッとハマる単語を持ってこられるようになりたいです。




甲子園のない夏がやってきます。

どうしたって消えることのない彼らのやるせなさと切なさを、正しくぶつけることが許される世の中でありますように。



価値を感じてくださったら大変嬉しいです。お気持ちを糧に、たいせつに使わせていただきます。