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アンナチュラル1話は“初回”の最高傑作


「アンナチュラル」を観たことがありますか。


まだ観てない?名前だけは知ってる?
そうか・・・・・・・・・・


全人類観て!!!!!!!!



今日言いたいのはそれ以上でもそれ以下でもなくただ「アンナチュラルというマジでめちゃくちゃ面白いドラマがある」という一点なのですが、

アンナチュラルの一体何がそこまで面白いのか。


ストーリー、人物造形、伏線、テンポの良さ、、
様々な観点から追求できると思います。

以前、ドラマオタク歴20年のわたしが選ぶ【人生ベストドラマ】をまとめた記事でも、アンナチュラルの魅力は「すべてにおいての一切の無駄のなさ」だと見解を述べました。

ドラマの魅力を決める5つのポイント
①脚本 ②キャスト ③演技力 ④演出 ⑤音楽
その五角形が、本当に綺麗な形をしている作品がまさに「アンナチュラル」ではないかと。
どのシーンもどのカットもどのセリフも、一切の無駄がなく、しかもここが大事なのですが、それでいて過分でもないっていうのがマジでやばい。欠けてるのも引っ掛かるけど、やり過ぎてるのもこれまた引っ掛かってしまうものですが、このドラマは終始どこまでも気持ち良くて、飽きることなくのめり込み続けて観られます。
そして、繊細な伏線が張り巡らされたすべての話を観終わった後。溜息と共に出てくる感想として大満足、という言葉以外にぴったりな表現が見つからないのです。だからこそ、幅広い世代に愛されるドラマになったのではないでしょうか。


見事かつ完璧な作品の終了から早くも3年近くの年月が経ち、あれから様々なドラマを観るにつれて改めて強く感じたことがあります。


・・・アンナチュラルの初回、ヤバくないか?


初回。

それは1クール・約10話で構成されるテレビドラマの世界において、間違いなく要となる回です。

「初回だけは観る」「1話を観て判断する」

勿論初回だけですべてが決まる訳ではありませんが、テレビ離れが加速し様々なコンテンツで溢れ返る今の世の中では、視聴者の興味を引くことができるか?今後の視聴継続に繋げることができるか?という非常に重要な役目を担っていることは明らかでしょう。

面白いドラマは山ほどあります。
価値観によって個人差があるのもまた事実。

しかし、わたしはどんな作品を見てもつい思ってしまうのです。

テレビドラマ界の “初回” 史上、アンナチュラルが最高傑作ではないか???と。


アンナチュラル大好き芸人の名にかけてその素晴らしさをどうにか言語化すべく、今回は1話タイムテーブルの構成を順に追いながら解明していきたいと思います。


先に言います。
ここから先は、ネタバレしかありません。

全人類観て、とか最初に勧めておきながらどう頑張っても核心を避けては書けませんでした。

なので、これから初めてアンナチュラルを観る!内容は先に知ってもおっけい!という方のみお進みください。言わずもがなアンナチュラルオタクの同志は大歓迎です。


前置きが長くなりましたが、いざ!!!


【自由研究】 アンナチュラル1話の完成度について


①タイムテーブル分解 (初回15分拡大)

[注釈]
《 00:00〜00:00 》 ・・・放送時間
→ ・・・何が起こっているかの簡易説明文
*1 ・・・1話で回収される伏線
*1’ ・・・同一数字にて1話で回収された伏線
▷ ・・・2話以降で回収される伏線 (詳細後述)
※ ・・・最終話に繋がる伏線 (詳細後述)
★ ・・・個人的 “ここがヤバい” ポイント
(起) ・・・特定事件の起、承、転、結


《 00:00〜03:00 》
→5人のメイン登場人物のキャラクター・関係性の説明をいきなりほぼ一通り完遂させる

ミコト) *1 朝から天丼を食べる、輪ゴムで髪をまとめる、サバサバタイプ、彼氏持ち
東海林) *2「異性間交流」、*3「問題は名前」、出逢いを求めている、プライベート重視っぽい

→あっけらかんとして仲良しな2人

六郎) 一番下っ端で組織には入りたて、気弱そう
坂本) 異様に怯えている、ムーミン好き

→※双方のペアから発せられる仕事内容=7K「汚い、キツい、危険、、、」

中堂) 解剖台で寝ている、すぐに下の人間を辞めさせる、目つきと口が悪い、とっつきにくそう、バツイチ疑惑がある

★フルネーム紹介=マグネットの使い方が秀逸
★5人それぞれ1stショットのインパクト大

《 03:00〜05:00 》
→6人目のメイン登場人物・神倉所長登場、架空組織UDIラボの詳細や役割の紹介が早速完結

★登場人物達が何をしている職場なのかという疑問に開始5分で納得できる
★両親に説明することで1件目の事件導入も兼ねる


《 05:00〜06:30 》
→UDI内でのミコト<中堂の力関係が明白になる
*4+▷「解剖実績」の差

《 06:30〜07:30 》
→(起)1件目の事件の詳細、日本の解剖における現状説明


《 07:30〜10:30 》
→解剖開始、(承)第二の被害者情報が舞い込む
※「法医学は未来のための仕事」
*5「死因が灰になる前に」


《 10:30〜11:00 》
OP/作品タイトル 「アンナチュラル」IN
→キーワードとして、死因究明、*6「毒殺」
アイテムとして ▷金魚 が視覚情報で登場

★期待を煽る意味ありげなオープニング
★開始僅か10分の時点で「UDIラボという架空組織でキャラクター性のある法医学者達が事件解明に取り組む物語」という作品概要を視聴者が既にほぼ完璧に理解している状況


《 11:00〜12:45 》
1話タイトル *7「名前のない毒」IN
→第二の被害者詳細説明
*8 クッキー①


《 12:45〜13:00 》
※「ウォーキングできないデッド」

★ミコトと東海林の何気ないたった5秒の会話が大きな伏線キーワードになっている


《 13:00〜14:00 》
→六郎と謎の男性の繋がり匂わせ
*9 本名「三澄ミコト」


《 14:00〜15:30 》
→ミコトの恋愛パート
*10 彼氏を待たせている=このカップルにとってよくある光景?


《 15:30〜17:45 》
→ミコト実家パート、家族のキャラクター説明
母:明るい、父:仕事で長期不在、弟:優しい
*11「寝顔が愛おしい人」
▷「私の家はここだけ」

《 17:45〜19:00 》
→検査で毒物は出てこない、*7’ 1話タイトル「名前のない毒」を軽く回収
※「フグの毒」

★ウォーキングデッド同様、ミコト・東海林・六郎のさりげない会話に「フグの毒」が実は伏線アイテムとして入っている

《 19:00〜22:45 》
→被害者宅捜索、婚約者登場、六郎の探偵モード開始
*12 最初の郵便受けカットにピンクの封筒


《 22:45〜27:00 》
→被害者会社捜索、婚約者の犯人疑惑浮上、*’6「毒殺」回収
*13 クッキー②(クッキー①と繋がる)
※「エチレングリコール」

《 27:00〜28:30 》
→UDIにてクッキー問題解明せず、1話タイトル「名前のない毒」が展開


《 28:30〜29:30 》
→中堂の謎生態(解体新書を読む・所長室に住む)が明かされる


《 29:30〜32:30 》
→(転1)MERS発覚
*8/13’ クッキー①②の繋がり回収


《 32:30〜34:30 》
→MERSの詳細深掘り、世間の厳しい反応


《 34:30〜37:30 》
→第一被害者が激しく批判される、検診の受診事実発覚で被害が拡大する
▷マスコミ
*12’ ピンクの封筒回収


《 37:30〜38:30 》
→該当病院内の院長との会話で所長が厚労省出身だと明かされる


《 38:30〜39:05 》
→葬儀社と中堂は金銭が絡む怪しい関係性、中堂の過去映像が一瞬入り込む
▷「赤い金魚」
*14「死体が多い病院」


《 39:05〜43:30 》
→婚約者がミコトに後悔を語り、ふとした会話から事件解決の新たな糸口が発覚
*15「そんな気分じゃないから食べる」
*2’「異性間交流」回収

《 43:30〜45:30 》
→(転2)MERSの院内感染疑惑浮上
*14’「死体が多い病院」回収


《 45:30〜46:00 》
→おめかししたミコトを男性陣がイジる
▷「女がいつどんな服を着ようといいじゃない」

★事件の核に突入した場面で不意に訪れるコメディパート、緊張と緩和が見事


《 46:00〜49:00 》
→院内感染を決定づけられる緊迫のラストチャンスに立ち向かう
*5’「死因が灰になる前に」回収


《 49:00〜53:30 》
→(結)真の感染ルートが発覚
*7’「名前のない毒」改めて回収=*3’ 「問題は名前」にも繋がっていた

★あれだけおめかししていたミコトの巻き髪と化粧が取れていることで必死さがより伝わる


《 53:30〜55:25 》
→ミコトは顔合わせ当日だったと判明
*10’ 彼氏をいつも待たせていたことが回収


《 55:25〜55:30 》
→主題歌「Lemon」が流れ始める

★歌い出し「夢ならばどれほど良かったでしょう」を演者のセリフなしで綺麗に聴かせる
★初回からフルサイズで流す


《 55:30〜56:00 》
→ミコトは実家に電話し別れたと報告
*11’「寝顔が愛おしい人」ミコト本人は相手に見せられなかった真実を回収


《 56:00〜56:25 》
→病院の謝罪会見


《 56:25〜56:35 》
→「Lemon」サビが流れ始める

★「あの日の悲しみさえ〜今でもあなたは私の光」までをこちらもほぼセリフなしで綺麗に聴かせる
★婚約者の心情・表情と歌詞のマッチングが抜群


《 56:35〜56:50 》
→ミコトが無言で牛丼を頬張る
*1’ 朝から牛丼を食べることの回収
*15’「そんな気分じゃないから食べる」回収


《 56:50〜58:00 》
→再び解剖台で寝る中堂がミコトと今後に展開しそうな会話を交わす
*4’「解剖実績」回収
▷「協力すれば4,500件」
※「敵はなんだ」「不条理な死」

★終盤でサラッと交わされたように見えて、作品全体の核に一気に触れる端的な会話


《 58:00〜58:45 》
→クレジット開始、ミコト自身の謎が明かされながら1話終了
*9’ 本名「三澄ミコト」回収
▷本当の名字は雨宮、養子、一家4人無理心中


【 2話以降に繋がる伏線の詳細 】

▷「解剖実績」
→3話:偉大な法医学者の権威との闘いで実績数の違いを指摘される

▷「協力すれば4,500件」
→7話以降:中堂が追う事件(夕希子さん)解明のミコト/中堂協力体制を示唆

▷金魚、▷「赤い金魚」
→夕希子さん事件のキーアイテム

▷「私の家はここだけ」
▷本当の名字は雨宮、養子、一家4人無理心中
→2話:ミコトは一家心中の生き残りで養子だったと明かされる

▷マスコミ
→2話以降:厄介な記者・宍戸を示唆

▷「女がいつどんな服を着ようといいじゃない」
→6話:東海林が加害者扱いされた時に刑事から派手な服装を指摘されたこと対するミコトの反論に繋がる
【 最終回に繋がる伏線の詳細 】

※7K「汚い、キツい、危険、、」
→ミコトと東海林がラストに「嫌いじゃない!」と交わす掛け合い

※「法医学は未来のための仕事」
→帰ってきた六郎の宣言

※「ウォーキングできないデッド」
→夕希子さんの土葬が事件解決の糸口だった

※「フグの毒」「エチレングリコール」
→中堂が宍戸に打った毒、解毒剤として登場

※「敵はなんだ」「不条理な死」
→ミコト過去、中堂さん過去に繋がる本作最大のテーマ


②ここに注目!


・モヤモヤとイライラが長引かない

アンナチュラルは【1話完結型+最終回まで繋がる縦軸】という作品構造になっています。
近年のドラマでも医療モノや刑事モノでよく見られるスタイルではありますが、ポイントは「1話の中でどこまで解決させるか」ということ。あまりに早く謎解きをするとつまらないし、引っ張りすぎても飽きさせる。シンプルな課題ですが、非常に塩梅が難しいところです。

1話完結・・・話中に設けられた単発事件
最終回までの縦軸・・・赤い金魚事件

この2軸がメインコンテンツとして進む本作はタイムテーブルで前述したように、初回中に出されては回収される伏線(*)の数がなんと15個もあるので視聴者側のモヤモヤとイライラが募らずに気持ち良く解決を見守れる。そして、最終回に繋がる伏線(※)も複数登場しているのでいい意味での引っ張りが次回以降の興味にも繋がる。

初回の中での情報量出し入れが本当に巧い!!!


・圧倒的なテンポの良さ

タイムテーブルを作りながら見えたことですが、アンナチュラル初回はシーンの切り替えテンポがとても早いです。

同じ場面に時間を割いたのは、最大でも約4分半(婚約者がミコトに後悔を語る中盤)と、5分以上同じ場面を流していないことが分かります。UDI、ミコト実家、被害者宅、被害者会社、病院、葬儀場、と決して場所は多くありませんが、分刻みに環境が変わることで中弛みせずテンポの良さを楽しめるのも大きな魅力!


・視聴者が俳優名<登場人物の名前で呼べる

持論になりますが、面白いドラマって必ず「俳優名(中の人)よりも登場人物名」が記憶に残るんですよね。それは、キャラクター設定がしっかりしている分視聴者側も愛着が湧くからだと思っているのですが、アンナチュラルは初回から登場人物の名前が本当に強く残る。

「ミコト」「東海林(しょーじ)」「中堂さん」「久部くん or 六郎」

開始早々の3分間でそれぞれのキャラクターが明示化され、その後も登場人物同士がお互いの名前を呼び合う場面が多いので、初回だけでも十分記憶に残ることに驚きました。(坂本さんは飯尾さんご本人のインパクトが強いですが、2話以降のキャラで完全に補完されていくのも味があって良い)

脚本家の野木亜紀子さんは「登場人物が印象に残ること」にこだわりを持っておられるので、それが顕著に現れているなぁと思います。

>ドラマって、善人でも悪人でも、やっぱり何かしら印象に残ってほしいし、それが一番重要かもしれないとも思うので。


③数字で見る初回の面白さ


こちらに関しては皆さんご存知のように視聴率の時代も終わったので参考程度に…という感じなのですが、まぁひとつの基準として。

アンナチュラルは、1話で12.7%だった視聴率が2話になると13.1%にアップしています。

ちなみに直前クールで放送されていた「コウノドリ2」は12.9%→11.8%、直後クールの「あなたには帰る家がある」は9.3%→8.1%、という数字。

本作の塚原監督×新井Pペアがアンナチュラルと同じくTBS金10枠で以前に手掛けた「リバース」では10.3%→6.3%

野木脚本の括りで比較するとTBS火10枠「逃げるは恥だが役に立つ」は10.2%→12.1%、TBS金10枠「MIU404」では13.1%→11.5%

すべての作品が初回からアップする訳ではないことを考えると、やはり初回完成度・満足度の高さを伺えるポイントのひとつかなとも思いました。

(ちなみに視聴率といえば思い出すモンスタードラマ「半沢直樹(2013)」は19.4%→21.8%、「半沢直樹(2020)」が22.0%→22.1%でした。)


④最後に、改めて


という観点からアンナチュラル初回を分解してみましたが、いかがだったでしょうか。

自分で勝手に書いておきながらなんですが、わたしはめちゃくちゃ楽しかったです!!!!


いつもtwitterやnoteでドラマの感想を書きながら、面白いって自分との相性や肌感みたいな気がしてマイナス理由の方が明確に言語化しやすいなぁと思っていたのですが、こうして時間をかけて「好き」「面白い」を因数分解してみるとすごく納得感がありました。

細やかな脚本の伏線や演出が俳優陣の豊かな表現力でカタチになるドラマの素晴らしさを、改めて実感、改めて感動。

この先何年経っても何十回観ても、変わらず最高に面白いと思える作品と出会えて本当に幸せだなぁと思いました!


とにかくアンナチュラルは最高!!!!

長々書きましたが、それだけ伝わっていれば大満足です!



(アンナチュラルに合わせて金曜22時にこの記事をアップしたという細かすぎて伝わらないこだわりだけ、最後にアピールしておきます……!)


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