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プロスポーツ事業のトップに従事してみて(2/3)

ーINDEXー
■指導者との関わり方
■選手に求めること
※次回公開内容
■フロント強化部へ求めること
■お客様に対して
(1/3)として公開済
■指揮命令系統の常識/権限と責任
■トップがこだわるべき「勝負」として大事なこと

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■指導者との関わり方

 それでは、指導者との関わり方はどう在るべきか。勿論トップとしてこだわっている勝負にかかわる前述した4つの条件(競技時間中は全力で走り切る/目の前の敵に気持ちで絶対に負けない/最後まで絶対に諦めない/継続性を担保するために自分達の型を持つ)を満たす指導をしてもらわねばなりませんが、それは口で言うのは簡単ですが、そういう集団に仕上げていくことは並大抵のことではないと思っています。ここでもテクニカルなことはスペシャリスト達に任せるとして、ではトップとして指導者はどう在るべきかについてのこだわりを指針として記しておきたいと思います。

 それはいたってシンプルなものです。本当に書くだけならいたってシンプル。しかしながら、これらを満たす指導者は中々いないことも事実です。特に②については殆どが契約上では一国一城の主人が相手ですからとても難しいと考えています。
①健康にして高いモチベーションを有する
②選手、コーチングスタッフからの信頼を得るに足る人間性を有する
③勝負にかかわる4つの条件を満たす指導内容、方法を有する
結局のところ、トップは指導者を誰にするか決めるのではなく、最低限の上記指針を示し、強化部より出されたそれに足る候補者を確認した上で、その条件を満たした最終候補者を追認することにあります。そしてトップとして最も大事なことは、決定した指導者がその能力をフル稼働させられるよう、物心両面から全力でサポートすることです。

 そしてもう一つトップとして指導者との関わり方に於いて大事な仕事は、解任是非の見極めです。具体的に解任判断をするのは強化部ですが、トップはその指針を明確に示すことが大事です。それも至ってシンプル。
①上記指針(健康にして高いモチベーションを有する/選手、コーチングスタッフからの信頼を得るに足る人間性を有する/勝負にかかわる4つの条件を満たす指導内容、方法を有する)のどれか一つでも未充足となり、全てを満たした指導が出来なくなった時
②強化部、指導者で合意した成績を残せなかった時
③日本国の定める法令遵守義務を逸脱した時
このような状態に陥った時、解任判断をしなければなりません。そして、③以外での解任の場合は、契約残余期間の報酬は、契約で特に定めのない限り、満額一括払いをするのが当然ですし、私がトップ在任時に不幸にもこのケースが生じた際には、異なる形での雇用継続者を除きそうしてきました。それがせめてもの最後のサポートと思っています。

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■選手に求めること

 さて、次にトップとして選手に何を求めるのかについて記しておきます。これも指導者同様にとてもシンプルです。
①ベストを尽くした練習
②ベストを尽くした試合
③ベストを尽くした私生活
プロ選手は煎じ詰めればこの3つに収斂することを、尊敬してやまない監督さんから教えられました。そしてそうした中で、シンプルだからこそやり切ることの難しさもあることを学びました。例えばベストの練習の中には、与えられたプログラムを漫然とこなすのではなく、その意図を汲み意識することで能動的姿勢が醸成され、試合での応用が効くようになります。また、ベストの試合は、勝とうが負けようが、チームとして個人として詰め込んできたものが全て出し尽くせたかどうか、スタンドの声が聞こえないほど集中して自分の仕事が出来たかどうか。或いはミスを恐れずチャレンジしたかどうか、それでいて頭の中は冷静でいられたかどうか…ベストを尽くすということは、とても深いところでの自分との戦いをしなければいけないということで、とても難しいと思っています。私生活も衣食住全てに於いて、突き詰めれば詰めるほど多くのことに気を配らねばなりません。一生の内の1/3はベッドの上。そこに投資していますか?一番良い睡眠を得られる時間帯は?栄養管理ちゃんと勉強していますか?ビタミン、タンパク質、炭水化物の摂取順は頭に入っている?特に独身者。サンダル履き?足の保護しないの?自分のプロ生活を支えてくれる人達への感謝や敬意をどう表現していますか?…ノートに記しておかないと身につくまでには相当な時間と根気を要すと思います。

 さて、かく言う私も毎年1月末契約更新の所謂単年契約プロですから、選手やコーチングスタッフと同じように、一年一年ベストを尽くす習慣が身についています。終身雇用の社員と決定的に違うところは、雇用継続に対する危機感です。そうしたことから、毎年「この社員達と仕事が出来るのも今年で最後かもしれない」と思いながら仕事をしています。そう思うと社員がとても愛おしく見えてきます。何とか成長して欲しいと心底思うようになります。一期一会の念ですね。普段は立場上、選手達とは一定の距離を置いた付き合いとなっていますが、彼らも同じ思いで仲間同士で仕事をしているのかなと思います。「このメンバーでやれるのは今年が最初で最後」という思いで仕事をしているのだろうと。その一点で生まれる結束は、終身雇用職場の人達には想像出来ない強いものです。私は単年契約、毎年崖っぷちで仕事をしていますので、彼らの気持ちがよくわかります。そうした彼らの結束が良い方向でチーム力の向上につながるようにしてあげたいと、いつも強く強く思っています。


続く




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