「こっっつ」駅

※だいぶ前に書いたものです。

夢の話というのは、聞かされる側からすれば面白くもなく、たいていは苦痛なものなのだけど、それを承知の上であえて書いてみる。

今朝方、目覚める直前に見ていた夢なのだけど、現実には成人しているのに、5、6歳の頃の娘と電車に乗っていた。

停車した木造の古い駅には、3畳くらいの小さな木造の売店があって、看板にはちょっとレトロな赤い字で「リリィ」と書いてあった。僕はそういう古めかしい店が大好物なのだけど、目的地があるようで、後日来ようと車窓から見える駅名標を確認すると「こっっつ」と書かれていた。

「こっっつ」は田舎というより、昔の駅という感じで、ホームの向こうに見えるコンクリートのビルも、僕が生まれる前の昭和30年代という雰囲気で、どうしても写真を撮りたいと思い、次の駅で降りて「こっっつ」に引き返すことにした。

その電車はローカル線のようだけど、よくある車両の両側に長い座席が向かい合っているものではなく、片方の窓に向かって青いベロアの長い座席が四列並んでいるので、座っている人の前を通って降りなければならない。

それで、「こっっつ」の次の駅で降りようとしているのに、座席の端に座っている男が脚をどけてくれず、降りるのに苦労した。その男の横には空になった青いワインボトルが転がっていた。

駅名はわからないけど、次の電車まで時間があるようで、駅の外に出てみると、草木が茂っていて、霧もないのに線状の白い光がいく筋も射し込む光景がとてもきれいなので、写真を撮ろうと思ったのだけど、なぜか撮っていない。

駅を出て左側に少し歩くと、ちょっと古い感じのビルが建ち並ぶ割と大きめの街のようで、人々が駅に向かって歩いてくる。その駅前にある高い木には、鮮やかな濃いピンクの花が咲いていて、僕はカメラを向けていた。そのカメラのグリップは、僕の手にも余るほどの大きさで少し持ちにくかった。

カメラは銀塩一眼レフのようで、レンズは昔持っていたコシナ製フォクトレンダーのノクトン50mm/F1.5のブラックにそっくりなのに、なぜかオートフォーカスで、ファインダーを覗くとレンズが動いてピントが合った。

それで、結局のところ、目当ての「こっっつ」には行くことができないまま、目が覚めてしまったのだけど、ごく稀に夢で見た場所に再び行けることがあるので、今度こそ「こっっつ」駅の「リリィ」を覗いて、レトロな駅前を散策しながら写真を撮りたい。

時々、こういう知らない街に行く夢を見るのだけど、もしかしたら現実にどこかにあるのかもしれない。ただ、「こっつ」という駅はなかった。

そういえば、「こっっつ」駅の次で降りた時には娘の姿はなく、どうも車内においてきてしまったようだ。

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