男惚れする格好いい男たち㊲ vol.486
俺がこの歳まで積み上げた人生や読書感から来る、格好いい人間像について語ってみたい。
さて、物語はいよいよ佳境に入る。
飛鳥の本当の目的は何だったのか。
サタンは文字通り『堕天使』である。
もともと天使であったが、デーモンという醜い生命体を作り出したことで神から怒りを買い、デーモンを滅ぼせと命じられそれに反駁したことで、『堕天使』に成り果てた。
だがサタンは、敢然と神に闘いを挑む決意をする。
そして意外にもその闘いに勝利し、次なる闘いに備え、自ら氷の世界に閉じこもり、鋭気を養い、時を待つことにした。
その間に、地球上を人類が支配していく。
サタンは怒り狂った。
そして、我々デーモンを差し置き、我が地球を乗っ取った人間を滅ぼすことにした。
サタンは自らを人間と化し、人間の気持ちになって人間が何を恐れ、何に怯えるかをつぶさに調べようとする。
サタンはサタンの記憶を捨て人間になりすます。
その人間と化している間に、サタンこと飛鳥了は不動と出会うことになる。
飛鳥は、不動の善良さと誠実さと優しさに取り込まれた。
かつて美樹がそうだったように、飛鳥は不動を羨望し、偏愛し、そして愛情を深く感じるようになった。
飛鳥は人間を憎み滅ぼそうと思ったが、愛する不動だけはデーモンとして生き残らせたいと本能的に思う。
結果、自らの潜在意識の中で、人類を滅ぼす計画を進行させつつ、不動の存命を願い、デーモンとの合体の機会を作ってしまったのだ。
全ては無意識の中である。
そのため、多くのデーモンを失った。
サタンの中でそれだけが想定外であった。
だが、飛鳥のために、人間として死ぬことも、悪魔として死ぬことも出来なくなった不動明。
最強のデーモンであるアモンと合体したがために、簡単に死を選ぶことも出来なくなった不動明。
恐らくそれも、サタンの意志がはたらいての結果であろう。
全ては飛鳥の歪んだ愛情のために、今の不動明になった。
飛鳥と不動の闘いには、二人の愛憎の想いが縺れ合う。
地が舞い、天が動き、天地が鳴動し、多くの血しぶきが地球上を覆う。
闘いを終え、飛鳥は不動に謝罪する。
不動の亡骸に哀悼し、サタンは自分の辿った行動を恥じたのだ。
人間を滅ぼそうと思った瞬間、それはかつて己がデーモンを作った時、その醜さを呪い、神がそれを滅ぼそうとしたその瞬間と全く同じである。
飛鳥は不意に不動の顔に涙を落とした。
不動はその涙をどう感じただろうか。(完)
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