男惚れするゲスな男たち㊵ vol.493


俺がこの歳まで積み上げた人生や読書感から来る、格好いい人間像について語ってみたい。

『殺し屋 1』の垣原を語る会。

参加メンバーは俺と如水。

垣原のアブノーマルさを神妙に語り、俺らは亀頭を硬く熱くしていくのが目的。

垣原を語るとき、己の変態性を露わにしていく瞬間に心をときめかす。

そんな心境こそ、垣原を語るに相応しい。

だが、普通の人間はひく。笑

でも、すんでのところで、垣原の自身のどM気質についてのストイックさに心奪われる人間も多い。

この男、人間として生きていくための価値観がまるで違う。

ストイックが人間の皮を被っているような男だ。

人間なんて自分が身を置くべき環境によって、まるっきり価値観も変わってくる。

一度でもガチッと決まった環境にどっぷり浸かると、そこから離れて違う自分を想像することが全く出来なくなる。

だから時に自分を客観的に見る姿勢は物凄く大切だと思う。
 
そして、自分を客観視できる程の言葉の選択肢を持つこと。

それも重要。

心のモヤモヤをちゃんと自分の言葉に置き換えて整理できない人間は、やがてそのモヤモヤに打ち負かされて、心を病んでいく。

複雑な仕事環境、複雑な人間関係。

我々は日々、複雑怪奇のど真ん中にいる。

だからこそ、自分自身をその怪奇なものに置き換えて、特に偶像の世界に置き換えて、思いっきりアブノーマルに浸りたい。

俺と如水の語る会は、互いに社会人としてあまりに常識人であるがゆえに向かっていく当然の帰結なのかもしれない。

あら、横道にそれ過ぎた。

ストイックから一転して真摯な男の仮面を被ってしまった💧

とにかく垣原である。

安生組長を拉致された責任で、その監視に当たっていた組員に落とし前をつけるシーン。

当然のことながら、指詰めになぞらえ、ち◯ち◯にピアスを施していく。

痛みというものは怖がるもんじゃねぇ、感じるもんだ。いわば、味わうっていうことだ。

そんな言葉を垣原は吐く。

おっさんが垣原の網にかかりに、行きつけのキャバクラに行った時、カレンに付いていた男に因縁をつけられる。

互いに啖呵を切って一触即発になった時、先手を切ったのはカレンに付いていた男。

垣原の両サイドの口角にあるリングをぶち切る。

これに対し垣原は、瞬間的にピックを手に取り、相手の男の口に横串を通し、男を力任せに蹴り倒して口角を自分と同じようにぶち切り返す。

「お前の暴力には愛情がねぇ〜。」と。

「早く病院に行かねえと俺みたいにくっつかなくなるぞ」と。

その後自分も口角を切られているのに、痛みに対して鈍感な垣原は、悠然と絆創膏の処置だけで普通に飲みを重ねていく。

この男の暴力が徐々に極限化していく様がまさにあっぱれだ。

一方イチは、場末のピンサロの女にご執心で、暴力を振るう男に絞られて苦境を味わう女に感情移入している。

女は身体中、痣だらけ。

夜毎、稼いだお金はその男に毟り取られ、いつもの如くそのなけなしの稼ぎに難癖をつけられ、結果暴力に向かっていく。

イチはその女が不憫で堪らなかったが、痣だらけの女の身体に常に下半身を強張らせていた。  

女はある時イチに助けを求めた。

イチの感情移入は頂点に達する。

女の自宅に行き、男と対面して泣きながら、圧倒的な速さで男の脳天からまっすぐに蹴落とす。

その結果、男は無惨にも縦に真っ二つになってしまった。

ちょうど時を同じくして女が帰宅してその惨劇がイチの手によるものと分かると、女はとち狂ってイチに怒髪をつく。

思い余ってイチは女をも惨殺し、火を放って二人の死因を闇に葬り去ろうとした。

この漫画、ストーリーが激越過ぎて、心の持ちようをどう整えるべきかが分からなくなる。

そのストーリーに横たわるドロドロ感を、イチという泣き虫の屠殺マシーンがスカッと一刀両断するのが、一面では言い知れない爽快感となっている。

そんな矛盾が面白い。(終)

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