見出し画像

「はだしのゲン」で伝える戦争

石巻市山下町・菊池英行さん 次世代へつなぐ責任

 核兵器や戦争の悲惨さ、平和の尊さを地域に伝え続ける「平和と文化を愛する会」(通称・はだしの会)。10日は「平和のつどい実行委員会」とし、原子爆弾が落とされた広島を、少年の視点を通して描いた劇場用アニメ「はだしのゲン」シリーズの2作品を上映した。

教え子たちが描いた被爆体験の紙芝居は、今も強いメッセージを伝える

 同実行委の代表は石巻市山下町の菊池英行さん(75)。これまで40年にわたって「平和のつどい」を開き、原爆や戦争の教訓を語り継いできた。「新しい世代へ向けて、戦争体験に触れる機会を作っていくことが重要。上映会の反響は大きく、やる意義があったと感じている」と話した。

 菊池さんは元高校教諭。女川高校に勤務していた昭和57年、石巻公民館で開かれた「石巻原爆展」との出会いが転機となった。翌年の第2回には、実行委として教え子たちとともに参加。その後、同校の文化祭でも原爆展を開き、石巻市に住んでいた被爆者の話を聞いて作った紙芝居や、平和公園の模型を作るなどして戦争を考える場を提供してきた。

 58年には菊池さんの発案で、県内では初めてとなる広島県への修学旅行を実施。「平和運動家で元中学校教諭の江口保さんとの出会いなど、奇跡のような縁がつながり広島への平和学習が実現した」と振り返った。

 ここから県内の高校では広島県への修学旅行が選択肢となり、年を重ねるごとに増えていったという。菊池さんら実行委は、映画化されたばかりの「はだしのゲン」の親子上映会を石巻公民館で開催し、その後の「はだしの会」結成へとつながった。

 「会として石巻地方に残るさまざまな戦争体験を掘り起こしてきた。市民や生徒だけではなく、私自身も学ぶことが多かった」と菊池さん。子どものころはほぼ戦争の話を聞く機会がなく、父の兄が戦死していること、親戚がガダルカナル島で玉砕したことを耳にした。だからこそ、戦争を知る世代が存命のうちにそのエピソードを残していく重要性や責任を痛感している。

「はだしのゲン」上映会は市外からも観客が訪れた

 40年ぶりとなった今夏の「はだしのゲン」上映会は、同会のメンバーが実行委を立ち上げ、みやぎ生協9条の会とともに開催。市内外から100人以上が観賞に訪れた。作品は漫画家の中沢啓治さんが自らの被ばく体験を基に描き、これまで何度も映像化された名作。戦争を知らない世代にその悲惨さを広く伝えている。

 来年は戦後80年。菊池さんは「会のメンバーは8人いるが、みんな高齢。私も同じで次世代への継承が課題の一つ」。すでに来年の「平和のつどい」開催に向けて歩みを進めており、これから内容を詰めていく。

 「ゲンの上映会は本当に多くの反響をいただくことができた。親子で観賞してくれる人たちも多く、子どもたちに戦争や原爆について伝える機会になった」と思いを込めた。
【渡邊裕紀】


最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。