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解体差し止め訴訟 全面対決 サン・ファン・バウティスタ号 原告「知事の裁量権逸脱」 県「判断は適正で妥当」

 木造の復元船「サン・ファン・バウティスタ号」=石巻市渡波=の解体工事差し止めを求めた住民訴訟の第1回口頭弁論が7日、仙台地裁(大寄麻代裁判長)で行われた。原告の市民団体側は「船の保存は技術的に可能なのに解体を決めたのは、知事の裁量権の範囲を逸脱して違法」などとして村井嘉浩県知事に対し、解体に必要な契約締結などの公金支出を差し止めるよう求めた。県側は「解体の判断は極めて適正で妥当」として請求棄却を求め、全面対決の構図となった。

 平成5年に建造されたサン・ファン号は、老朽化などを理由に29年に県が解体の方針を決めた。

 原告は市民有志で組織する「サンファン号保存を求める世界ネットワーク」(白井正樹会長)のメンバーら。初公判では、原告が提出した準備書面と県側の答弁書を確認。今後の公判進行の手続きについて双方が意見を述べた。

サンファン初公判

裁判に臨む原告団一行

 補足説明に立った原告代理人、松澤陽明弁護士は「保存可能な案を示しているのに、県が検討した結果で問題ないとしているのは木造船の寿命は、せいぜい20年くらいという固定観念にとらわれたもの。今一度検討し、計画を見直すべき」などと主張した。

 また、船を設計した横浜国大教授の寶田直之助氏(故人)が150年後までのメンテナンスの試算をして、船が長持ちすることを想定していたことなどを説明。さらに裁判所に対し、県慶長使節船ミュージアムに係留されているサン・ファン号の現場で、船の現状を示しながら証人尋問する機会を作るよう要望した。

 一方、県側は「維持管理に関する調査結果を受けて検討。費用面だけではなく、技術的な課題も考慮したうえで解体という結論に至った」「原告の検討は極めて不十分で失当なもの。県の判断は極めて適正で妥当」として請求棄却を求めた。次回以降、具体的な主張をしたいとした。

 最後に意見陳述で世界ネットのアンバサダーで、演出家の都甲マリ子さんが「サン・ファン号は宮城の宝」と強調。その上で建造費17億円のうち30%を超える5億7千万円が寄付によって賄われたことや多くの船大工の手で建造された経緯を説明した。

サンファン初公判 (2)

会見した都甲マリ子さん(左から2人目)

 都甲さんは①設計者の意見を仰がず、コンサルタント会社による調査で解体を前提としたロードマップを作った②寄付者に何の説明もなく解体を決めた③解体決定のプロセスが県民に周知されなかったなどと主張。「文化を伝える、歴史を伝えるということがどういうことなのかを理解していない」と県の姿勢に疑問を投げかけた。

 公判後の会見で松澤弁護士は「メンテナンスを怠った責任を問うのではなく、保存可能な方法があるのだから計画を見直していただきたいということ」と説明。解体反対の署名活動などを継続してきた都甲さんは「船を保存する価値、技術があることを県民に知ってほしい」と話した。次回は10月19日に弁論準備手続きが行われる。【本庄雅之】


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