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未来に残したい、「食と文化」語らう

こどもみらい研究所「ふるさとの食卓」 
集団移転先の二子地区 ずんだだんごで世代間交流

 郷土料理を通して世代間交流を図り、古里の良き伝統を継承するワークショップ「みらいに残す、ふるさとの食卓」が6日、石巻市河北地区の二子西町内会館で開かれた。地域の子どもとその保護者、団地の住民ら約40人が参加。ずんだだんごを作り、一緒に味わった。後半は東日本大震災前の地域を写した懐かしい写真を見ながら、後世に残したい文化や伝統を語り合った。

 石巻市を中心に全国でこども記者による情報発信を行う一般社団法人こどもみらい研究所の主催。「宮城県NPO等による心の復興支援事業補助金」の交付を受け、実施した。

 震災後の沿岸被災地は集団移転に伴うコミュニティーの希薄化や少子高齢化、過疎化が顕著。後世に残すべき生活文化を直接伝承する機会も減っている。

 こうした背景を踏まえ、未来に残したい地域の伝統として「食」に焦点を当てたワークショップを開催。調理を通してコツやレシピを年配者から子どもに伝え、世代間交流を育みながら「ふるさとの食卓」を残すのが狙い。本年度は石巻地方2市1町で計4回開く。初回は雄勝、北上、河北地区から移住した人が多く暮らす二子で行った。

 ずんだだんごに使う枝豆約10㌔は㈱石巻青果が提供したもの。参加者は豆を煮ることから始め、薄皮を取り、すり潰したり、団子を丸めたりと、協力して調理した。初めてすり鉢を使ったという子どもも多く、年配者はすりこぎ棒の使い方を丁寧に教えていた。

大人と子どもが協力してずんだだんごを作った

 試食では「豆の風味がしっかりしていておいしい」「甘くて最高」との声が聞かれた。大谷地小1年の秋山莉央奈ちゃんは「上手に豆をつぶせた。とてもおいしかったので、家でも作りたい」と満足気だった。

 その後、震災前の雄勝・北上・河北地区の写真を眺め、懐かしみながら「未来に残したい地域の伝統文化」を語らった。参加者の多くは70―80歳代。「彼岸はおはぎ、盆は団子を作って食べた」「雄勝では盆に提灯を飾る習わしがあったが、二子地区に移り住んでからはやっていない」などと盆や彼岸の話で盛り上がった。

 行事では「獅子舞や神楽も後世に残したい」という意見が出た一方、「子どもや働き盛りの若い世代がどんどん減っている。伝統を残してもそれがしっかり伝わるかどうかは分からない」と先に不安を覚える声もあった。
 二子西町内会の山下憲一会長は「子どもと交流でき、参加者は皆うれしそうだった。地域が誇る食や伝統文化は未来に残ってほしいし、伝承していくことが私たちの務め」と話していた。

震災前の写真を懐かしみ、未来に残す食や文化を話し合った

 同研究所の太田倫子代表理事は「震災で古里の風景は消えても皆さんの心の中に残っており、一緒に郷土料理を食べることでも伝わるもの。調理中の参加者の笑顔が印象的で、一つの大きな家族のように映った。この景色も未来に残したい」と語った。

 次回(第2回)は9月ごろ東松島市あおい地区、第3回は11月末に女川町、第4回は再び二子西地区で食を通じたワークショップを行う。【山口紘史】



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