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石巻市 計画最終年度 復興事業にめど 心のケアなど継続課題に

 石巻地方に大きな被害をもたらした東日本大震災から10年目に突入した令和2年。復興計画に区切りをつけ、持続可能なまちづくりへ助走をつけていくはずが、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行で状況が一変した。外出自粛や3密回避、営業自粛。新しい街づくりを考える前に新しい生活様式への対応が求められた。先行きの見通せない年末だが、松島基地への東京五輪聖火到着に沸き、女川原発2号機再稼働への大きな動きもあった1年を回顧。初回は石巻市の復興計画最終年度を振り返る。

 石巻市の亀山紘市長は2月の市議会定例会初日、震災から10年間の復興基本計画の最終年度に当たる令和2年度の施政方針を述べた。最優先の住まい再建が一段落したが、道路や橋、下水道などのインフラ整備や被災者の心のケア、コミュニティー再生といった課題が残っており、「復興事業の完遂へ向け、総力を結集して初志貫徹の思いで取り組む」と決意を示した。

 新型コロナの影響で開館や式典の時期は遅れるも、3月末までに小学校や総合支所など北上地区の拠点整備、雄勝観光物産交流施設、おしかホエールランドなどが完成。6月には市立病院南側に地域包括ケアの拠点となるささえあいセンターが開所し、石巻駅前整備の大部分が完了した。

 ところが、10月になると雲行きは怪しくなる。定例会見で亀山市長は、地盤沈下に伴う雨水排水ポンプ場整備完了が来年度にずれ込むことを明言した。昨秋の台風19号では仮設ポンプによる排水が追い付かず、広範囲で冠水。一番の課題としてきたが、想定した土質と実際は異なったことでの掘削工事への影響や、他の復興工事との調整に時間を要したという。復興交付金を活用して新設を計画した11カ所のうち、7カ所は来年度にずれ込む。

回顧付け写真

複数の工事が並行する旧北上川河口。排水ポンプ場や石巻かわみなと大橋建設は来年度も続く(10月)

 さらに12月には復興関連22事業が本年度に完了せず、予算を繰り越すことを発表。年度内の完了が難しいのが一目瞭然な工事現場もあったが、財政支援を受ける省庁と調整し、現実に即したスケジュールに見直した。

 予算を繰り越す復興事業が固まり、当面必要な人員数も予測可能になった。市は将来的な財政不足に対応するため、復興で膨らんだ職員を5年間で222人削減する定員適正化計画を策定。人件費のほか、少子高齢化による社会保障費、新しくできた施設の維持管理費が増えており、国の手厚い復興支援がなくなる今後の行財政運営が課題になっている。

 一部完成が来年度にずれ込むとはいえ、工事を伴う復興事業にめどがついた。一方で市が国に財政支援の継続を求めているのが、被災した人の心のケアや移転先での孤立を防ぐコミュニティーづくりだ。

 民間団体に委託して行う心の健康相談は現に、住まいの復興が進んだ平成29年度以降、増加に転じ、継続的な支援が求められている。加えて人の距離を保つ新型コロナ禍。集まりが持ちにくく、復興公営住宅などのコミュニティー形成に向けた活動を行う住民団体を支援する県の補助事業も、昨年度実績から大幅に申請が減っている。

 コミュニティー形成は、今後のまちづくりにとっても重要。市長公約であった行政と地域の協働のまちづくりである地域自治システムの構築や、学校運営に地域の声を生かすコミュニティ・スクールの展開に支障が出る。

 「完遂」にはもう少しかかりそうだが、亀山市長は15日、「復興の見通しがついたと判断し、後進に道を譲ることが大切と考えた」として、3期目の任期が満了する来年4月28日の退任を表明。市長も話している通り、任期中にできる限り完成に近づけ、次にバトンタッチしてほしい。【熊谷利勝】


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