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それぞれに命守る行動 石巻市総合防災訓練 自発的な避難の確認も

 東日本大震災の最大被災地である石巻市で1日、総合防災訓練が行われ、初のシェイクアウト訓練で市民にそれぞれの場所で地震から命を守る行動を呼びかけた。新型コロナウイルス感染症対策で一斉の津波避難訓練を見送るなど規模を縮小した訓練になったものの、一部の地域では避難所開設の訓練や自発的な避難訓練を実施し、「自助」「共助」の防災意識を高めた。【熊谷利勝】

総合防災訓練(万石浦小) (36)

万石浦小は登校日にして訓練を実施。高学年が低学年の手を引いて避難誘導した

 シェイクアウト訓練は、机の下に隠れるなど「まず低く」「頭を守り」「動かない」の3つの行動をぞれぞれの場所で一斉に実践する米国発祥の地震訓練。午前9時に防災無線を鳴らし、訓練の開始と各家庭での備蓄品や避難経路など「プラスワン訓練」を啓発した。

 万石浦小学校(太田文子校長・児童299人)は同日、登校日にして訓練や防災学習を行った。シェイクアウト訓練後、児童は防災ずきんをかぶって校庭に避難し、大津波警報が発表されたとして3階建て校舎の屋上に移動。高学年は低学年の手を引いて誘導した。今度は原発で重大事故が発生した想定で校舎内に退避し、教員らは手分けして窓をテープで目張りするなど対応を急いだ。引き続き、不審者対応の避難訓練や保護者への児童引き渡し訓練も行われた。

 5年生の千葉橙暉さんは「忘れていることもあったが、焦らずに行動できた。本番でも命を守れるようにしたい」と話した。太田校長は「子どもたちが真剣にやり切った。命を守るための行動が浸透し、優しい気持ちが危険の迫った時でも発揮できるよう成長してほしい」と願った。

 同校では昨年度まで、隣接の中学校や地域と連携した訓練を実施。コロナ禍による総合防災訓練の規模縮小で今年は小学校単独としたが、防災に関わる住民や近隣の高校の担当者が見学した。このうち塩富町の三浦清一さん(67)は「震災から10年も経てば危機感が薄れるので、こうした取り組みを続けることが全国からの支援への恩返しになる」と評価した。


コロナ禍は受付対応が鍵 石巻市 自主防主体に
感染対策踏まえ訓練

 石巻市で1日、新型コロナウイルスの感染防止策を踏まえた防災訓練があった。自主防災会主体で、市が6月に策定した避難所運営方針に基づき、1人当たりの区画を広く取るなど作業時間もにらみながらスムーズな設営を心掛けた。【外処健一】

防災訓練(向陽小) (52)

間仕切りを使って個別の空間を確保した

 市立向陽小学校、青葉中学校、渡波中学校の各体育館を使い、各自主防災会が避難所開設訓練を実施。向陽小では町内会の新栄会の役員や市職員ら約30人が参加し、間仕切りを使った避難所の設営や受付時の検温、区画への誘導、発熱者の隔離など手順を確認した。

 感染拡大に対応した避難所運営は、従来よりも増設して密集を避けるほか、1人当たりの区画を2メートル以上確保する必要がある。いずれも市民の協力は欠かせず、市は今回、コロナ禍での自主防の初動訓練を視察し、防災士と共に適時にアドバイスを行った。

 新栄会の渡辺末男会長(75)は「2メートル幅を取る区画作りに手間取るなど課題も見られたが、おおむね順調に進められた。今後は感染が疑われる人の誘導を含め、自主防の訓練の中で精度を高めていきたい」と話していた。

 視察した亀山紘市長は「訓練を重ねることで速やかな対応につながる。コロナ禍では受付の対応がとても重要となる」と強調。その上で「今回は3地区で行ったが、風水害を含めて広範囲で考える必要があり、他の自主防にも広めていくことが大切」と語った。


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