津波火災の震災遺構公開 石巻市・門脇小校舎 市内中心に343人来場
石巻市は3日、東日本大震災の震災遺構である門脇小学校の一般公開を始めた。最大被災地の記憶と教訓を伝える施設であり、被災地では唯一、津波火災の痕跡を残す。震災前に門脇町や南浜町などに住んでいた市民や県内外からも見学者が訪れ、初日は343人が学芸員の解説を聞きながら当時の状況に思いを巡らせた。
痕跡見学し教訓刻む
震災後、門脇小は津波と火災に遭った。津波から逃れるにはより高いところへ移る「垂直避難」が基本となるが、被災校舎はそれが必ずしも正しい避難ではないことを教訓として伝えている。
校舎隣の展示館では校旗、半鐘など門脇小の備品が公開されている。震災時に校舎内にいた児童と住民の避難ルートの地図、発災から閉校までのドキュメンタリー映像、過去の津波を地層から読み解く展示物もある。
屋内運動場では、実際に使われた応急仮設住宅を復元し、室内に立ち入ることができるほか、震災直後に門脇町に立てられた「がんばろう!石巻」の初代看板も展示。施設全体を巡ると所要時間は約1時間かかる。
この春から仕事で横浜市から石巻市に赴任した会社員の佐藤彩海さん(22)は「震災遺構を訪れるのは初めてで、小学校5年だった当時のことを思い出した。計画停電などが記憶にある。津波の跡が残った黒板が衝撃的で、被害の大きさを痛感した。校舎内に入れる展示だったら、さらに感じ方も違うのでは」と話していた。
同市門脇から来た佐藤薫さん(58)は「震災で自宅が全壊し、当時は蛇田方面に逃げていた。11年が過ぎ、展示を見て改めて震災の記憶や教訓を胸に刻んでいる。当時感じた人との助け合い、支えあいのありがたさを思い出した」と語った。
同施設のリチャード・ハルバーシュタット館長(56)は「校舎の火災跡や映像展示の評価が高く、震災を改めて考え、胸に刻む機会となっている。市内を中心に初日で300人以上の来場は上々と思う」と話していた。
開館は休館となる月曜(祝日の場合は翌日)と年末年始を除く午前9時―午後5時。震災の月命日にあたる毎月11日と防災にちなむ6月12日、9月1日、11月5日は月曜でも開館する。入館料は大人600円、高校生300円、小中学生200円で、団体料金や年間パスポートもある。【渡邊裕紀】
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